第12話 絶技
ボスを倒した高揚感でボーッとしていると…
『ダーリーーン!!私を守ってくれるって約束してくれたのに、なんで先に死ぬにゃー!これから1人で私はどうやって生きていくにゃっ…』
突然若い女性の声が聞こえたことにより思考は戻される。
『誰だ?』
見渡すが誰もいない…
よく見るとウエアラットの上で小さなネズミが1匹こちらを睨んでいた。地球のネズミと変わらないサイズの真っ白なネズミである。
『人間!どうしてダーリンを殺すにゃ?私たち誰にも迷惑かけず、2人でひっそり暮らしてただけにゃ…』
『えっと…ウエアラットの上にいるネズミさんですか?』
『他に誰がいるにゃ?質問に答えないけど、答える気もないのかにゃ?』
(何でネズミが人間の言葉を喋ってるんだよ!しかもなぜにゃー?)
『ダーリンって今君が乗っているウエアラットのことだよね?何故倒したかと言われたらここがダンジョンのボス部屋で、そのウエアラットがボスだからだよ。
俺は何としても地上に戻りたいんだ。』
『地上に戻りたいだけなら、ダーリンを殺さなくても私に言えばいいだけにゃ!理由にもなってないにゃ!!』
『君は地上に戻る方法を知ってるのか!?俺に教えてくれないか!!』
『何でダーリンの敵にそんなことしないといけないにゃ!許せないにゃ!』
突如ネズミの様子が変わった…と思ったら俺は吹っ飛んでいた。
『な、何?』
動いたのが見えなかったのだ。しかも、何をされたかは分からなかったが、ダメージは半端なく食らっていた。これはやばすぎる…
俺の生存本能が警鐘を鳴らしている。
(これは、逃げるしかない!逃げ足のスキルの出番だ。)
俺は起き上がると必死に逃げ出した。これで敏捷2倍!…
「ズドンっ!」
『そう簡単に逃がさないにゃっ!ダーリンの敵、覚悟するにゃ。』
(逃げ足の俊敏でも足りない…なんて素早さなんだ!!あと何発か食らったらホントに死ぬ…
嫌だ!まだ死ねないんだ。
何のスキルか分からないけどこうなったらこのスキルに賭けるしかない!)
『絶技!』
…何も変化は起きない。
(くそ!何も起きないのか!素早すぎて見えないなら…
そうだ!)
『何をしても許さないにゃ!』
『口笛!』
俺はネズミをイメージしながら口笛を吹いた。
ネズミがこちらを見てピタッと止まった。
『流し目!』
(よし!俺にドキリとして動けないはず)
急いで俺はネズミを捕まえようとするが、直前で避けられてしまう。
『今私に何したにゃ?一瞬あんたなんかにドキッとしちゃったにゃ…私のダーリンへの想いを揺るがすなんてありえないにゃ!』
さらに怒りの顔で俺を睨んでいる…
(一瞬しか効果ないなら…これしかない)
『流し目!』
『流し目!』
『流し目!』
『流し目!』
『流し目!』
『流し目!』
俺はスキルを連打した。俺が掴むまで繰り返してやる!
『何にゃの…あいつが気になって動けないにゃ。。』
『ようやく捕まえる事ができた。とても柔らかくモフモフすべすべの毛並み。これは最高のモフモフじゃないか!
なんて言ってる場合ではない。逃げられないようにしっかり持たないと!!』
ネズミは困惑していた。この人間の男が流し目と言うだけで私のダーリンに対する想いを越えてドキッとさせられてしまう。
繰り返される流し目に身体の自由が奪われ、とうとう捕まろうとしている…何とか逃げようとするのだがどうしようもない。。
そして、とうとう憎っくき男の手が私に触れる…
(あっ!気持ち良すぎるにゃ…こんな感覚初めてにゃ。。)
男に触れられた瞬間に襲ってくるのは、全身に広がるあり得ないほどの快感の電流…
声すら出せないほどの身体の脱力…女としての悦びを全身から感じ恍惚としていると、さらに男が激しく力強く身体中を握ってくるではないか…
(そんなに激しくされちゃったら…)
私は快感の嵐にもう何も考えることはできなかった…
身体中の毛穴から自分でも何だか分からないものが溢れだし、失禁してイッテしまった…それでも押し寄せる快感の波に涙とヨダレと痙攣が止まらない。。
あまりの快感のせいで気絶することすら邪魔されてしまうのだ。
『うわっ!何かこいつ漏らしてないか?
逃げようとそんなことしてもそう簡単には逃がさないぞ!ここから地上へ戻る方法を教えてくれたらこれ以上何もする気はない…
おまえのダーリンを倒したことは仕方なかったとはいえ、すまなかった!でもおそらくはダーリンはそのうち復活するぞ!!』
『お。お願いにゃ…あっ♪…もう何も…ん~っ!あ~♪…しないから…離して…にゃ…あっ。あっ。。あっふぅん♪』
(なんだ?こいつ変な声だして…変な病気持ってないよな。。)
俺は、かなり警戒しながらネズミを離してやった…いつでも流し目を使える準備をしている。しかし、その心配は無用だった…
手を離すとネズミはグッタリして、身体中痙攣している。
動く余裕すらなさそうだ。これは一体…?
『おまえ…どうしたんだ?』
『・・・』
返事をする余裕も無さそうだ。意識が朦朧としているようで、恍惚な表情をしている。演技にも見えない…
そこでようやく俺は思い出した。
(もしかして…絶技が今頃効いてきたのか?とりあえず内容を確認しよう。オータス。)
名前 アラン
種族 ヒューム
年齢 12歳
力 134(166-32)
体力 196(179+17)
俊敏 261(238+23)
器用 416(348+68)
知力 125(155-30)
魔力 0
ジョブ 遊び人lv25
ジョブスキル 逃げ足、口笛、流し目、体力成長、器用成長、チャーム、絶技
称号 転生者、神ファルスの加護を受けし者、魔物を狩りし者
(絶技説明)
絶技
このスキルを使うと、30分間、異性に触れるだけでも絶頂させることができるようになる。効果終了後、1時間は利用できない。
(このスキルのせいか…
異性には、とんでもないスキルだな…
これだけスキル揃ったらいつでもホストでもヒモでも出来そうだ。。
まっ!絶対にそんなもんにはならないが!!
…しかし、本物の遊び人がこのスキル持ったら悪用しまくるんじゃないのか?またとんでもないスキルを手に入れてしまった…)
ネズミを絶技発動中にこれ以上触るのはまずいので、しばらくボス部屋を見回すことにした。部屋に入ったときに感じた通り妙に生活感がある。
さっきのネズミの話から大体の予想はつくが、この部屋でこのネズミとウエアラットは恋人として一緒に暮らしてきたのだろう。
愛の巣ってやつか…
(そういえばあのネズミ…見た目そのままネズミなのに、何であんなに強いの?ボスなんてはるかに凌駕してたぞ…それになんで言葉をしゃべれるんだ?分からないことだらけだ。。
それにしてもビアンカ大丈夫かな?どうせ俺は行方不明とか、事故で落ちたことにでもされてるだろうし、心配を掛けてるだろうな…
早く戻らないと!それには…このネズミの協力が必要だ!なんとか説得してみせる。)
それから暫く経過したことで、ようやく自身を保てるようになったネズミは起き上がり、
『あんた何にゃの!?あんなに気持ちいいのはあり得ないにゃ…』
『あれは、俺のスキルのせいだよ!今はスキルを解いてるから触っても平気だよ。』
試しに触ろうとしたが、慌てて距離を取られる…余程警戒されてるようだ。。
『そこまで警戒しなくても…
それで君とはちゃんと話し合わないといけないと思うんだ!いろいろと知識や認識の差で勘違いが起きてる気がするんだ。』
『まずは、俺の知る限りのこのダンジョンのこと、ボス部屋のこと、ダンジョン核のことを説明させてもらう。そうすれば俺がボスであるダーリンと戦った理由は理解して貰えるはずだ。』
それから俺はダンジョンが人間の世界ではどんなものなのか、どうやって出来るのか、ボス部屋とは何なのかを必死に説明した。
『というわけで、この奥にあるダンジョン核の部屋を守るために配置するのが、ボスであるダーリンなんだ。
俺の知る限り、ボス部屋のボスは討伐から約2時間ほどで復活して、またボス部屋を守り始めるはずだ。
既に1時間近く経ってるからもうすぐダーリンは復活するはずだぞ!もう1度戦うのは正直嫌だから、俺は奥のダンジョン核の部屋に避難させてもらうけどな!』
ボスは絶体にボス部屋を出ないのだ。
『ほんとかにゃ!?良かったにゃ。ダーリンが死なないのなら事情も分かったし、許してあげるにゃ…
何も知らなかったけど、今の話にあったダンジョン核…私が昔、触ってダンジョンマスターってやつになってるみたいにゃ。。』
そう言ってネズミは昔話を始めた。
『私は、13兄弟の長女として生まれたにゃ!もちろん、生まれたときから超絶かわいい女の子だったにゃ!あれは私が産まれて3か月のときだったにゃ…
・・30分経過・・
…正直関係ない話ばかりで聞くのも苦痛だ!昔から女性の話は長いってのが相場か。。
・・1時間経過・・
…というわけにゃ♪こうやって私とダーリンのラブラブな生活が始まったにゃ♪』
(お、終わったのか?つ…疲れた。。戦いより精神力をすり減らされた気がする…)
要約するとこうだ。
このネズミは元々少し頭のいいネズミだったようだが、普通のどこにでもいるネズミだった。
「普通じゃないにゃ!とびきりプリティーにゃ!」
ある時、目の前で地上に繋がったダンジョンに潜り込み、運良くダンジョン核へ最初に触れてダンジョンマスターになった。
「運じゃないにゃ!波乱溢れる大冒険の果てに、努力と機転により突破したにゃ!」
そして、その時にダンジョンを自分好みに作り変えようとしたのだが、ボス部屋へ続く道を作り変えたところで飽きて、他は何もいじってない。それが運良くネズミサイズの自分用に作った道だったため、人間には通ることが出来なかった。
「運じゃないはずにゃ…きっとあのときの私にはこうなることが分かっていたはずにゃー!天才的な本能で作り変えたに違いないにゃー!」
そのたまたまのお陰で、500年という長い年月誰も来るはずのないこのボス部屋でダーリンとイチャイチャしてたと。
つまりは、このネズミは500歳の化け物ババアというわけだ。
「だれがババアにゃ!?いつまでも永遠の乙女にゃ!!」
以上!どうやったら、これくらいの話を説明するのに1時間もかけるんだ!?
「余計なお世話にゃ!500年時間がいくらでもあったから、問題なかったにゃ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます