第71話 閑話 エメラルドの伝説3

エメラルドは、この屋敷に越してきて5年、


可能な限り、午前中の雑魚モンスターを200匹前後の討伐と、毎夜のライルとの絶技ありのセックスをかかしてなかった。



そのことで、エメラルドの遊び人のレベルは既に52、2次ジョブですら28になっていた。


エメラルドの2次ジョブは「女王」。

異性を惹き付ける魅惑効果が高まり、異性を傷つけても、それを快感に変え、従順させる効果をもつスキルを覚える。



つまり、異性を攻撃して傷つければ、それだけでその異性を従えることが出来るのだ。




屋敷の一室に遺体を運び入れてもらった後、エメラルドは動き出した。


『フェロモン!』

『絶技!』


フェロモンの効果で、男たちは、目の前の美しいエメラルドを抱くことしか考えられなくなった。


そして、我先にとエメラルドに触れていく。


絶技の効果で、快感のあまり身動きすら取れなくなった男たちは快感に身悶え床に転がっていく。



武器を奪い、椅子を人数分用意し縛り付ける。あまりにきつく締め付けすぎて指の骨が何人か折れていた。


それすらも、女王のパッシブスキルである「ご褒美」の効果で、男たちは快感の世界に漂っていた。



さらに、「調教」のスキルを発動させ、そのうちの1人を木の棒で殴りつける。あまりの本気の殴り付けにより、歯が2本折れたようだが、男は喜び、快楽に酔っていた。



調教の効果は、スキルを発動から1時間、与えられる痛みが強いほど、女王に心酔し、逆らえぬようになるというものだ。



『もっと気持ちよくして下さい!お願いします。何でもしますから、もっと…』



『それでは、ゼストの皆に何があったのか全て話しなさい!!』



『分かりました…


…ゼストの連中は、依頼のクイーンアントを倒してくれました。


しかし、クイーンアントが現れたことで、辺境伯が我先に避難し、マルテミスの民を見捨てていた事実を重く思い、王国にそれを報告させてもらうとマルテミスに残っていた辺境伯の部下たちに言ってしまったのです。



辺境伯は、そのことを知り、お礼を言いたいと急ぎマルテミスに戻りゼストの連中と会いました。


そして、当然のことですが、そのまま食事会となります。その席で薬を盛り、体を痺れさせ、意識あるまま、拷問のように殺していました。


ゼストのリーダーは、惨めたらしく最後まで王都へ生きて戻ることを懇願していたのが印象に残っています。よっぽど帰りたい理由でもあったんでしょう…』



そこまで言ったところで、エメラルドは木の棒で男の顔を殴り付け、意識を失う。


『お前のような下郎が、あの人を語るな!!』



エメラルドは念のため、全員に同じように話をさせたが、おおよそ同じ内容だった。



男たちは皆、辺境伯のクズ兵士からエメラルドの忠実な下僕と成り変わったのだ。




翌朝、男たちを使い屋敷の庭に5人の墓を作り、丁重に弔った。

そして、5人の復讐を約束し、旅立った。



行き先は勿論マルテミスである。




1週間の移動で、ようやくマルテミスに到着すると、エメラルドは宿で王都で用意した着飾った衣装に着替え、下僕たちと共に辺境伯のところへ出向いた。


表向きは、ソルジャーアントにやられたゼストのメンバーを遺体とはいえ、救って頂き、無事弔えたことのお礼に来たと伝えた。


執事やその他の召し使いも、エメラルドの美しさに目を奪われ、辺境伯にそのことを急ぎ報告した。


辺境伯も、あの死体を見てのことだ。多少は警戒をしたが、美しい女が着飾って1人で来たということで、一気に警戒を緩めた。仮に敵討ちに来たにしろ、どうとでもできる。



『あなたがゼストのリーダーの婚約者だった者か…?話に聞いてた以上に美しい。


礼には及ばぬ。我が領地のために、モンスターと戦ってくれていた英雄たちだ!


私たちの命を賭けてでも救い出さねばと、勇み向かったのだが、ソルジャーアントの群れを蹴散らした時には、既に遅し、あのような遺体と化してしまっていたのだ。


今は亡き我が領地の英雄の婚約者どのだ。今夜は是非屋敷に泊まられて、歓迎と感謝の食事会を開かせて頂こう。』



案の定乗ってきた。


エメラルドは自分の美しさを強調し、武器も持たずに会いに行けば、普通はなかなか会えぬ、辺境伯でも簡単に会うことが出来ると踏んだのだ。


会食まで用意するのは、もしかしたら会食の最中に、眠り薬でも盛って、エメラルドを手籠めにでもするつもりなのだろう。



『お心遣い感謝致します。では、お言葉に甘えさせて頂き、今夜はこちらでお世話になりますわ。よろしくお願い致します。』



エメラルドのこの会談の一番の目的は辺境伯の部下たちを見ておくことだった。エメラルドのスキルの効果は異性には、絶対的な力があるのだが、同性には意味のないものばかり…


女性の幹部や兵士をチェックしたかったのだ。幸いにも辺境伯は、女性の兵士は雇っていないようで、女性は女中くらいだった。



エメラルドは、部屋に案内されると、早速動き出した。

案内して来た女中を不意を突き気絶させ、屋敷を移動する。


予定通り王都で下僕にした男たちと合流し武器を貰う。武器は鍛冶で使うような金槌である。歩き、兵士を見つけると、下僕に押さえつけさせ、調教のスキルを使って、金槌で鼻を殴り付けた。


鼻の潰れた者はその快楽から、直ぐにエメラルドの下僕となり、エメラルドに続く。それを次々と繰り返していく。中にはそのまま、死んでしまうものもいたがそんなことはどうでもいい。


1時間もそんなことをしていれば、屋敷の人間は様子がおかしいことに気付かない訳がない。しかし、下僕となった人間はこの屋敷の兵士そのものなのだ。


襲ってる方へ多くの兵士が集まってくると、鼻を押さえ、

『やられた!不審な男がいきなり何かで殴ってきて、あっちに逃げた!!』


といい誤魔化し、少人数なら、逆に捕まえて主であるエメラルドに差し出す。こうして、調教のスキルの効果の切れる1時間の間に屋敷にいる兵士のうち50人ほどは下僕としてしまった。



そして、次にエメラルドが取った行動は、調教のスキルの回復に3時間も待つのではなく、攻めだった。



最初の下僕も合わせ、約55人の下僕に、「何があろうと振り返るな!通り過ぎた敵は無視して、前の敵に集中しろ!」と命令し後ろを歩く。そして、見つけた兵を殺しながら目的の場所まで突き進む。


目的の場所とは玄関側の広間である。階段、踊り場、2階からも非常に見通しがきく場所の壁を背にしてエメラルドが立ち、その前を下僕たちを武器を振るえる程度に距離を取らせ並べる。


不審者騒動も解決する前に、突然50人以上の人間がそんな目立つところに現れたらどうなるか…


『お前ら!そんな女の味方して、ただで済むと思ってるのか?もうすぐ屋敷中の兵がここへ集まってくる。


矢に貫かれたくなければ、今のうちに投降しろ!』


とリーダーらしき男の怒号が飛ぶ。


『そろそろ弓矢の準備ができかねないので、作戦開始します。命令通り決して、振り返らないように!!


フェロモン!』


その場にいる者たちは、どうしても視界に入ってくる美しいドレス姿のエメラルドを認識せざるを得なかった。


フェロモンのスキルが発動し、エメラルドを認識した男どもは、武器を構えてる敵がいることも意識することができなくなり、自分等が今何をしてるのかすら忘れて、ただエメラルドの体を求め、野獣のように向かっていった。


結果を予想するのは、容易いだろう。武器も構えず、ただ闇雲に向かってくるだけの集団なぞ、武器を持って待ち構えてる者たちにとって格好の獲物以外の何者でもない。


武器を振るおうと、傷つこうと、避けもせず、死ぬまでただ斬られ続ける兵士たち。


増援で来たものも、弓矢を持ってきたものも、それを構える前にその武器を捨て、自ら斬られに地獄に飛び込むだけだ。



スキルの効果の切れる1時間が経過する頃には、下僕は1人も減ることなく、屋敷の兵士は100人以上が死体となり、ほぼ全滅していた。



それだけの騒ぎが起きているのに、辺境伯はここには現れなかった。


おそらく、最初にこんな目立つところへ、立て籠りしたあたりの情報を聞き、鼻で笑って報告を待っているのだろう。



エメラルドは、下僕を引き連れて辺境伯の部屋へ向かった。下僕にノックさせると案の定、


『女はちゃんと生かして捕まえたか?』


『ご心配頂き光栄ですわ。ちゃんと生きて、あんたを殺しに来たわよ!!』


そういい、下僕たちに捉えさせる。



『んなっ!?お前ら、俺を裏切ったのか?いくらで雇われた?その女の倍やる!だから、俺を助けろ!!』



『残念ね?この子達は私から1ルピーも貰ってなんてないわ。…お金なんてなくても、私はあんたから全てを奪いに来たのよ。


まずは、ゼストのみんなの持ち物を全て返しなさい!どこにあるか吐きなさい!!』



『誰が教えるか!ぐがっ!ぅぁ…何だこの快感は!?』


辺境伯の言葉の途中で、エメラルドが金槌で腹を殴ったのだ。


『気持ちいいでしょ!?私のスキルなの…

もっと強いスキルを使えば、あんたをこの子達と同じ私の下僕に変えられるんだけど、正直下僕にもしたくない存在なのよ!』



『死ぬほどの気持ちよさの前に、どこまで耐えられるかしら?絶技!』


エメラルドは辺境伯の手を握った。絶技の効果で、強い痙攣をしている。しばらくして、手を離すと、そのままグッタリと気絶する。


エメラルドは金槌を持ち、先程まで握っていた辺境伯の手を叩きつける。骨が砕けたのだろう。大きく腫れ上がっている。


『ぐぎゃーー!!気持ち良すぎる!最高です。もっと…もっとお願いします。』


『あんたが私にお願いできる立場なわけないでしょ?私の簡単な言いつけすらこなすことも出来ないクズは…そのまま待てよ!』


『言わせて下さい。お宝は全てこの部屋の隠し空間にあるマジックバッグの中にあります。ゼストの持ち物も、その中にあります。


入り口を開けるには、私の着けてるネックレスをこの部屋で上に掲げ、「シークレットスペース」と唱えて下さい。』


エメラルドは辺境伯からネックレスを奪うと、言われた通りに唱えた。すると、部屋の中心に空間魔法によって作られた1メートル四方の空間が現れる。


その中にはマジックバッグが3つ置かれていた。3つの中身を見たところ、様々な宝石やアクセサリー、武器など、数えきれないほどたくさん収納されていた。



探すこと5分…ようやくみんなの形見の品を見つけることができた。


『ライル…やっと、やっと見つけたわ!!』


エメラルドがここまで必死に探していたのは、ライルとお揃いで買った婚約指輪だった。価値は、他のアクセサリーや武器に比べるとただも同然だが、エメラルドには、どの宝よりも大切なものだったのだ。



『辺境伯…最後まで名前すら知らなし、もはや興味もないわ。もう、あんたは用済み。最後にご褒美をあげるわ!』


そう言い、エメラルドは辺境伯のあそこを思いっきり踏みつけた。潰れたあそこからは血が流れてきてる。


『んぎぇぇえー!!気持ちいい!

もっと踏んで下さい。』



『さすがにこれでも喜ぶのは気持ち悪いわね…もういいわ。死になさい!』


エメラルドは金槌を両手で持ち上げ、思いっきり脳天を叩き割った。頭蓋骨を破り脳まで到達している。



『その金槌は、このお宝たちの代金よ。』


エメラルドは、3つのマジックバッグを手に取り、部屋を出ていこうとした。



『お待ちください主よ…我々はあなた様に命を捧げました。我々も主の行くところに連れていって下さい。たとえ、そこが地獄の底だろうと、我々は最後まであなた様に尽くします。』


『勝手にすればいいわ!


ついてきたいならついてくればいい…ただ私の行き先は、地獄なんて生優しい場所じゃないわよ…


私はこの世の全ての権力の頂点になる!!掴んだ幸せを2度と誰にも邪魔出来ないところまで登り詰めるわ!!!』



そこにいた全ての人間はエメラルドについていった。



エメラルドには、もう幸せなど何もなかった。その幸せを全て奪ったのは、奇しくもエメラルドが転生の際に願った権力そのものだった。



ここに、エメラルドの伝説が始まったのだ!




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