第29話 エリスの挑戦

村での桃色の生活を5日も楽しんだ俺たちは、王都に向けて戻ることにした。


本当はこのまま休みの間中、桃色生活を楽しみたいのが本音だったが、流石に人の命がかかっている。約束の日程を破る訳にはいかなかったのだ…



王都の寮に戻ってまずは、ましろを通してアクティーと連絡を取るも、今のところ特に大きな変化はないようだ。


俺は早速動くことにした。ビアンカには、「会えるかは分からないが、エリスさんとイアンさんに婚約の報告をしに行こう」と言っている。


婚約の報告も勿論大事だが、エリスとイアンに会い、アクティーのこと、ハリーのことを相談しようと思ったのだ。



実はアクティーの件があってから、俺はずっと悩んでいた…どう説明すれば、ハリーを暗殺するために、単に紹介してくれと俺に近づいたアクティーを俺のしもべにして、全ての情報をさらけ出すに至ったか…



怪しいと思ったから問い詰めた?


そんなことでプロが口を割るわけがない…ましてや、しもべにはならないだろ!


アクティーが、俺に最初から惚れてて情報を教えに来た?


研修でそんな素振り全くなかったのにおかしいだろ!仮に惚れててもその情報を俺に話すのはアクティーにとってマイナスだ…



(いよいよ俺の能力のことを話さないといけない時が来たのかもしれない。エリスさん、イアンさんは信用しているし、何よりビアンカにいつまでも黙ってる訳にはいかないしな…)



俺は、スキルの件があるので歩みが重い…出来れば留守であってくれとまで考えてしまう始末だ。。本当に我ながら往生際が悪い…まあ、こういうときは大抵。。


『今すぐに会うそうだ!着いてこい!!』


(だよね…あっさり会えちゃうもんだよね…)




『アラン、ビアンカ、よく来てくれた!2週間の休暇中と聞いていたので、村へ帰ってると思っていたぞ?』


エリスは、王族らしい格好のためにいつも以上に華やかに見える。



『村へ一度帰っていたんですが、先ほど戻りました。今日は、お二人にいくつかお話したいことがあって来ました!』


『ほう!改まってどうした?』


『まずは、言いやすい話から始めますね…


実は村に戻ってる間に、俺とビアンカは婚約しました!上司になるお二人には早めに報告をと思いまして、挨拶に来ました。』


『ほう!それはめでたいな!!婚儀はいつ頃の予定だ?』


『アラン、そういう決断がなかなか出来ないタイプだと思ってたが、やったじゃないか!おめでとう!!』


『ありがとうございます!


イアンさんよく俺のこと分かってますね?ずっと考えはしてたんですが、俺とビアンカの親からの後押しを貰ってやっとこさ決断に至れました!


婚儀は1年後を予定してます。その際には是非ご参列下さい!』



『あ~勿論参列させて貰おう!楽しみにしている♪良かったなビアンカ。』


エリスは心から喜んでくれてるようだ。



『はい。とても幸せです♪』

ビアンカが可愛い笑顔で言う。




『それで…話しにくい話もあるのだろう?どんな内容だ?』


『はい…その前に俺達4人以外の人払いをお願いします。』


『…!?そんなに重要な内容なのか…?警備の者は、皆部屋の外で警備に当たってくれ!』



『…よし!望み通り私たちだけになったぞ。どのような話だ?』


『人払いありがとうございます。まず事の始まりは、就職試験の日に、俺とハリー王子が友達になったことから始まります。』


『えー!?ハリー王子と友達?いつの間に?』

ビアンカが横で驚いている。いや、他の2人も同じようだ…



『俺は試験早く終わってただろ?ビアンカを待ってる間に、王宮を黙って抜け出してきたハリー王子が、王子とは知らないまま友達になったんだ。』


『どうやったら、そんな短時間でそんな出会いがあるのよ!?』

ビアンカのいかにも納得のいく突っ込みが入るが無視だ…


『先日の御披露目会で、ハリー王子が俺に一生懸命手を振っていたので、俺は手を振り返していた。


それを同期のアクティーという女の子が見ていたんです。そして、その夜そのアクティーが俺の部屋にやって来ました。


訪問の理由は俺にハリー王子を紹介してくれというものでした。



王族直属の部下になりたいからと言っていましたが、


本当の理由は…マリア王女に雇われ、ハリー王子を暗殺するためでした。』


『ぶっ!ちょっと待て!!それが、本当なら大変なことだぜ!?でも待て…何故そもそもそれが本当の目的と分かったんだ?』


『それはアクティーがひょんなことから、俺のしもべになったからです。それで、何もかもを自ら話してくれました。今は、そのままハリー王子を狙っている振りを続けておくように命じています。』


『待て…待て…待て!どうやったら、その状況から、暗殺者がアランのしもべになるんだ?』


イアンが意味が分からないと唸っている…ビアンカも隣でそうだそうだと頭を縦に振っている。



『イアンのいう通りだ…アランのことは信頼しているつもりだが、その話の流れはいくらなんでも簡単には信じられないものだぞ?』


『はい!俺自身もなぜこうなったかは不思議でしょうがないのですが、きっかけとなったのは、俺のジョブのスキルが原因です。』


『スキルか…どのようなスキルなのだ?』


『はい…正直スキルについては話したくない内容ではあるのですが、事が事なので話します。。


スキルの名前は絶技と言います。』


『ひゃっ!あん…』

服の中からましろが飛び落ちる…


『ダーリン、不意討ちに気持ちよくするのは反則にゃ…逃げるのが後一瞬遅れてたらまた最初の時みたいに気絶することすら許されず、気持ちよすぎて死んじゃうところにゃ!』


『あれっ?スキルの名前を言ったから発動しちゃたのか?ましろ、ごめんな…』


『会話の内容でギリギリ予想出来たから、大丈夫にゃ!』



『これはどういうこと?』

ビアンカが3人を代表して聞いてきた。



『このスキルの効果は、触れた異性を気持ちよくさせるというものなんです。


ましろとの出会いは、このスキルをダンジョンのボスを倒して覚えたばかりのときだったんですが、問答無用に襲われて、殺されると思って必死にこのスキルを使い、そして、その力に屈して、ましろは俺のペットになりました。



アクティーが俺の部屋に来たあの夜は、ましろと久しぶりに再会して、またこのスキルを使ってくれとましろに頼まれたんです。


それでスキルを発動している状態の俺の部屋にアクティーがやって来ました。俺にハリー王子のことを頼もうと俺に触れてきたことによってこのスキルの効果が発動してしまい…


その後何故か俺のしもべになると言い出しました。』



『そんなスキルが存在するのか!?話を聞いても俄に信じられないな…』

エリスは、やはり信じることは出来ないようだ…



『アラン…そんなスキルがあったから、あんなにアランとのエッチは気持ち良かったのね…初めてだったのに気持ちよくなったから不思議だったけど…』

ビアンカが皆の前で言ってはいけないようなことを言ってしまっている…


『いあ!ビアンカ…あれは、スキルなんて使ってないからな!それよりも今は皆の前だから!』

ビアンカは自分の言った内容に気付いて真っ赤になっている。



『アラン!今はそのスキルが発動しているので間違いないか?』


『ましろの反応を見る限り発動しているので間違いないと思います。まだ暫くは効果が続きます。』


『では、私はアランに触れてみようと思う。暗殺について何か動くにしろ、そのスキルが本当にプロの暗殺者を屈服させるほどのものなのかを知らねば、事が大きすぎて動けぬ。』



『エリスさん…出来れば止めた方がいいとは思いますが…』


『試しに、先に俺が触ってみるぜ!』

イアンが触れてくる…


『何ともないぜ?本当に発動しているのか?』


『同性には効かないんだと思います。試したことなかったですが、スキルの発動もこれで3回目なので、よく分からないことも多いんですよね…』


『では、やはり私が触るしか確認が取れないようだな…』

と俺の腕に手を触れる…


『っ!?……………ン…あっ…』

足に力が入らないのか倒れそうになるエリスを咄嗟に俺は支えてしまう。


『ぅぁっ!!うくっ♪ぁ.あ…あっ♪あ~❤️』


エリスは蕩けた表情で腰が砕けたようにぐったりとし、ビクンっ!ビクンっ!と跳ね始める…



『アラン!嬢さんから離れろ!!』

イアンが慌てて俺からエリスを受けとる。


『なるほど…あの嬢さんが、覚悟して触れて、10秒程でこんな風になっちまうなんて、よっぽどだな。。』

イアンが驚愕の表情を浮かべている…



エリスの意識はあるようだが、今もハアハアと呼吸が安定しないようだ。表情も未だに虚ろだ…



『アラン…このスキルはなかなかに危険過ぎるものだぞ!自ら体験して分かったが、正直私は今まで色恋など一度も興味を持ったこともなければ、殿方とのそういうことも興味がなかった…


しかし、あの気持ちよさを体験してしまった今は、アランを見るだけでドキドキしてしまう…


さらに体がアランを求めて苦しいのだ。。今すぐにでも抱かれたいとさえ考えてしまっている…


今のを長時間触れられたのなら、心も体も支配されても何ら不思議ではないかもしれん!』



『そんなにかよ…』

イアンは再び驚いている。


『だがこれで、暗殺の件は疑いようがなくなったな…ハリー王子の陣営と一度話す機会を作らねばならないようだな。』



エリスから、ハリー陣営とコンタクトをとって、会談の日程が決まり次第連絡するということで、今日は解散となった…



その夜寝所で一人になったエリスは…


『ダメだ…


こんなに時間が経過したのに、体の火照りが完全に消えない。。


アランのことが気になってしまう…


まさか、私はアランのことを?いや…きっとスキルの名残りだ。。』



エリス自身気付いてなかった。


ダンジョンで、父のことを相談した夜からチャームの影響もありアランのことを少なからず想っていることを…



絶技を切っ掛けに心よりも先に体がその気持ちを後押ししていることを…


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