第21話 魔法の適正

『魔法の適正を知りたいのですね!?では準備しますのでそちらで少々お待ち下さい。』


ーー待つこと10分ーー



『準備が出来ました。こちらへどうぞ!』


受付の奥にある一室に連れていかれる。



『では、その水晶に魔力を流してみて下さい。』


『…あの。。魔力を流すってどうやればいいのでしょうか?』



『魔力はお持ちなんですよね?』


『はい!あります。でも魔力の使い方が分からないのです。』


『魔力を一番簡単に知る方法は、魔力を使える人間に魔力を流して貰うことです。私が今からアランさんの身体に魔力を流しますので、目をつぶってそれを感じて下さい。』


受付のお姉さんは、俺の右手を握り魔力を流し込んでくれる。


『何か電気のようなものが身体の中を巡っているのが感じます。』


『それに似たものが身体にあるのは感じること出来る?それがアランさんの魔力です。それが感じれたら、それを動かすイメージを持って下さい。動かせたらそれを意識して手に集めてみて下さい!』


(な、なるほど、これが魔力か…紫の血管みたいだな。全身に存在している。動け…


お、おぉー動いた♪後は、手にこれを集める。意外に簡単だ!)



『手に魔力を集めれました!』


『じゃーその魔力を集めた手で、水晶に触れて、その魔力を水晶まで移動させたらオッケーよ。』


そう言って受付のお姉さんは、手を離す…



(よし!やるぞ!!とうとう、適正が分かる♪)


俺は水晶に手を置き、魔力を移動させる。すると、水晶が紫色に光輝き出す。


『成功です。もうすぐ結果が表示されますのでもう少し待ってね。』



魔法適正

該当なし



『えっ?』


『残念ですが、あらゆる魔法の適正がないようですね…諦めて他の技能を磨いた方がよろしいですね!』


『そんな!何かの間違いでは?もう一度調べさせて貰えませんか?』



『何度調べようと結果は変わりません!残念ですが、魔法の才能がなかったと思って諦めて下さい…』



(魔法の才能がなかった…魔法の才能がなかった…

諦めて下さい…諦めて下さい…諦めて下さい……)


俺の頭の中には受付のお姉さんの言葉が連呼していた…呆然としている俺を無理やり外に追い出し、仕事に戻るお姉さん…



俺はまだ立ち直れずに、受付お姉さんが引っ張り出した場所で呆然と立ち尽くしていた…


『おい坊主!いつまでもそんなとこに立ち尽くされても邪魔だ!用が済んだならさっさと帰れ!!』


ギルトマスターのジークハルトが見かねて、帰るように促す。



(ジークハルトさん…ジークハルトさん…ジークハルトさん…


そうか!ジークハルトさんだ!!)



『ジークハルトさん!お願いがあります。俺にさっきの魔法剣を教えて下さい!!』

俺は頭を下げる。


『なに!?断る!!』


『そんなこと言わずお願いします!』

もう一度深く頭を下げる。



『ふざけるな!装置に魔力を流すことすらまともに出来ない小わっぱが、何の努力もせずいきなり人を頼るな!!』


『っ!…そうですね!考えたら物凄い失礼なお願いしていました。すいませんでした!!』


『お、おう…』


『出来れば先程の訓練場を暫くお借り出来ないでしょうか?自分で訓練してみたいのです。』


『それは構わんぞ!冒険者登録してる人間には、ギルドで利用する時以外は自由に解放している。勝手に使え!!』


『ありがとうございます。早速お借りします!』


俺はすぐに地下の訓練場に向かった。


(まずは、さっきの魔力の感覚を確認だ!…うん。分かる。魔力の移動は…出来ないことはない。。まずは、これを身体のどこでも速くも遅くも自由自在に動かせるようになることからだ!)



『おい!もうギルドを閉める時間だ!さっさとギルドから出ろ!!』

ジークハルトの声で我に返る俺…


『はっ!もうそんな時間なんですか?すいません!すぐ出ます。明日も、また利用させて下さい!失礼しました。』

頭を深く下げ俺はギルドを後にする…



ジークハルトはアランの存在を気味悪く感じていた。冒険者とは真の実力主義!強くなることに貪欲な人間が多い。


そのため、強者であるジークハルトには強さの秘密を盗もうとあらゆる輩が寄ってくる。そんな者は、同情を誘ったり、お金にものを言わせて簡単に強さを求めてくる。


アランも同じ類いの存在だと思ったが、一度諭しただけで、素直に自分を見つめ直し謝罪してきた。中にはアランのように真っ直ぐなタイプの人間も冒険者を目指すこともある。


しかし、そういうやつはほとんどが世の不条理を感じるとすぐ腐れる…そして大抵がそのまま潰れる。。


しかし、あいつは魔法の適正がなかった事実を目の当たりにして、現実を認められずに腐れていた。それなのに、俺を見た瞬間、ついさっき一度見せた技を思い出し、活路を見出だし復活した。


素直過ぎる奴だ。その癖、俺のあの剣速の魔力の剣を受けても腰を抜かすどころか、対応しようとしてやがった!瞬き1つせずにその動きを見ていた。


あれは、死線を何度か越えないと出来ない度胸だ…もう1つ。成人の儀からまだ1週間…どんなレベル上げをしたら27レベルまで上げられる?


(何なんだあの男は…)


ジークハルトからすれば、道端に落ちてる小石程度の存在であるはずのアランが、久しぶりに現れた自分の理解を外れる存在として興味を持たずにはいられなかったのだ。。




俺は、昼前に取っていた宿に戻り、食事だけ取り、部屋で再び魔力の操作の訓練を再開する。この魔力の操作、慣れると簡単なもので、今では身体の中で人形のような形を作り、踊らせたり、演劇をさせたりまでできるようになった。


しかし、魔力を身体の外に出そうとすると途端に霧散して消えてしまう。そしてその度に、魔力を消費するらしく、疲労感に襲われる。


では物に魔力を送ればいいのか?と、水晶に魔力を送った時のように、剣に魔力を送ったら、そのまま剣の柄の部分から霧散して消えてしまった。


おそらくは、この外に出した魔力を違う形に変えるのが詠唱であり、その結果が魔法である。つまりは、それを詠唱なしで自由に形を変えることが出来れば無詠唱魔法と呼ばれるものになるはずだ。


ジークハルトも詠唱などしていなかった!


つまりは、無詠唱で魔法を使用する感覚で、剣に魔力を帯びさせれば良いのだと思う。


魔力には、限界があり、回復するのにも時間が掛かる。つまりは、体外で魔力の調整をする訓練は回数が限られる。


1回、1回、少しの無駄すら許されない。極限の集中力で、その感覚を会得するしかない。それ以外の時間はひたすらイメージトレーニングだ!



俺は魔法の存在を知ってからずっと夢であった魔法を使う夢が完全に潰えたため、同じように魔力を使う魔法剣に全ての希望と夢を託したのであった。



難しいだとか、ジークハルトが化け物だから使えるとか、言い訳を考える余裕もなく、可能性がある!ならそれに向けて何をする?ということだけに極限に集中していたのだった!


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