第7話 遊び人って…ホンマもんの遊び人やん!

俺たちはイアンを手伝い肉を解体していく。


ついでにルピーも出来るだけ集めてはおく。正直魔法で吹き飛び過ぎてほとんど回収出来てないのは仕方ないことだろう…


15分ほど素材を集めた後、脇道の奥に入ると、既にエリスが焚き火を起こし、最初に回収してた4匹の肉で料理を始めていた。


この世界では包丁は見かけたことがない。もしかすると、王都の料理人等には存在するのかもしれないが、村では皆ナイフを上手に使って料理をするのだ。


エリスも同じようにナイフで肉を食べやすい大きさに切り分けていた。


『私も手伝います!』


ビアンカがエリスの手伝いに行った。あー見えてビアンカは料理は得意なのだ。可愛くて、料理も出来て、力持ちで強い…何て出来た彼女なんだろう!


相手が俺で本当にいいのか心配になってくる。



『俺も手伝いますよ!』

俺も料理の手伝いに行くとエリスが驚いた顔をして俺を見てくる。


『驚いた!アランは料理も嗜むのか!?将来料理の道を志してたのか?』


『いえ!料理は趣味の一環です。』


『ほう…若いおのこにしては珍しい趣味だな!?』


『変わってるとは村でも言われますね…』


なぜエリスがこんなに驚いているかというと、この世界では基本料理は女性がするのだ。


男性がするのはプロの料理人を目指すような人間ばかり。どんな寂れた村でも、1件は食堂があり、親元を離れた未婚の男たちは、たいていそこで食事をする。



俺はの日本の母親から「今時の男は料理ぐらい出来ないとモテないわよ!」と言われて育ったのでそれなりに料理は全般出来る。


とはいっても、モテたことはなかった気もするが…



こっちの世界に生まれ変わっても家でも料理の手伝いはいつもしていたので、どちらの世界の料理もそれなりにマスターしているのだ。


おそらくは料理人として生きることも出来ると自分では思っている。こちらの料理は基本荒い!調味料が少ないのもあるが、味付けも調理法も大雑把なため、手間暇を料理にかけることがないのだ。


以前、村で自分が食べたくなったラーメンを試行錯誤で作ったことがあるのだが、塩味でラーメンとしては俺の中ではいまいちだったにも関わらず、匂いに惹かれてやって来た村の者に振る舞ったら、


『何て不思議な食べ物だ!美味しい!』


と大絶賛。料理人になって店を出せと皆で言ってくる始末だった。きちんと、研究して自分の納得出来る料理を作れば店をする事も可能であろう。


なにせ、現代日本人の贅沢な味覚を持っているのだから。次期村長候補という肩書きがなければ本当に目指していたかもしれない…



『アランの料理は悔しいけど美味しいですよ!たまに食べたこともない、不思議な創作料理を作るんですが、村でも噂になるくらいの味です。』


『ほう!それは楽しみだ♪』


『こんなところでは、そんな凝った料理は無理ですよ。それなりです…』


俺たちは手分けして、料理を作った。ネズミの肉は村でもよく使われるのだが、日本の食材でいうと鶏肉に近い味だ。そのまま、軽く塩を振って焼くだけでも十分に美味い!


個人的には唐揚げが合いそうな肉だと思っている。この世界では揚げ物という概念はないようで、油自体も大量に用意するには高級になるためにまだ試したことはない。


俺は、スープを担当した。こういう野営でのスープは野菜を持ってきてればうす塩味で野菜スープ、なければ具なしの塩スープ程度が普通だ。



今回俺は村から秘密兵器を持ってきていた。【乾燥野菜】だ。切り分けた野菜を太陽の光で10時間ほど干しただけのものだ。


冷蔵庫のないこの世界では野菜などは常温で新鮮なうちに使い切るしかない。それを不便に思った俺はこの方法を試みたのだ。


1度乾燥させ、戻すという発想がこの世界にはなかったらしく、我が家では今では当たり前に使われている。軽くなるし、保存もきくので、こんな時には便利なので家の在庫を持ってきたのだ!


鍋に水を入れ、人参と大根と玉ねぎの乾燥野菜を入れる。それを火にかけお湯にするその間にネズミの肉をキレイにしたナイフですり潰し塩を少し混ぜてミンチを作る。


湯が沸いたら、ミンチを入れ軽く塩で味を整えたら野菜の甘味たっぷりのミンチスープの出来上がりである。



ビアンカとエリスは肉に塩を振りかけ単純に焼いていた。このネズミの肉の1番ポピュラーな料理である。単純ゆえに美味い♪



調味料が塩ばかりに感じるかもしれないが、これも仕方ないのだ。この世界の調味料事情がひどいのだ。塩ですらそれなりにする。贅沢にはなかなか使えないものだ。


他にも胡椒や砂糖は存在する。。が、高級過ぎて一般人にはそうそう手が出ない。他に存在する調味料はワイン、柑橘果物、お酢、そしてもう1つこの世界特有の調味料である【ナモン】と呼ばれるものだ。


これは、森などに自然に群生しているナモンという植物の実を潰したもので、昔からよく使われている。ナモンを日本のもので表現すると、うすいニンニクである。俺も結構好きでよく使う。



『驚いた!本当に美味いな♪あの短時間でこれだけのスープを作るとは大したものだ。』


『あーホントにうまいぜ!アラン料理人になったらどうだ?王都で店を構えて貰えれば俺はしょっちゅう通うぜ!』


『エリスさんもイアンさんも誉めすぎですよ!それに、エリスさんやビアンカの作ったこの肉もものすごく美味しいですよ!』


『そうか?それなら良かった。普段あまり料理はしないので、あまり自信はないのだ。これだけ2人が料理を出来るとなると夜からは任せてしまってもよいかもしれないな。


その分私たちは夜営の準備と夜の見張りを多めに担当しよう。どうだ?』


『俺は構いませんが、それだとエリスさんたちの負担が多くなりませんか?』


『私も料理をするのは構わないのですが、夜の見張りは見張りでちゃんとしますよ?』


『いや!料理を押し付けるのだ。それくらいの負担は私たちも負わなければ平等とはいえんだろう。では、すまないが料理は任せたぞ!』


『分かりました。出来るだけ美味しいものを用意しようと思います♪』


『あ~楽しみだ。宜しく頼む!』


こうして、俺とビアンカはパーティーの料理担当になった。



食事が終わると、エリスの指示が飛ぶ


『30分ほどで出発する。各自準備とステータスの確認をしておくように。特に新しいスキルを覚えた者は内容を把握しておくように!』



(そうだった!結局確認してなかったな…オータス)


名前 アラン

種族 ヒューム

年齢 12歳

力 76(94-18)

体力 100(91+9)

俊敏 151(138+13)

器用 240(200+40)

知力 84(104-20)

魔力 0


ジョブ 遊び人lv11

ジョブスキル 逃げ足、口笛、流し目

称号 転生者、神ファルスの加護を受けし者、魔物を狩りし者



(流し目説明)

流し目

このスキルを使えば異性をドキッとさせる。



(…これはほぼ確定か。。俺がビアンカと初めてキスしたときのレベルアップでなんとなく予想はしていたが…


遊び人ってのは、女遊びをする遊び人って意味のようだな。。だから、異性とキスしたことで経験値が入ったのだろう…


ファルスって神様…転生までさせて俺にこの世界で何をさせたいんだ?俺は女性を蔑ろにしたりする気はないぞ。むしろビアンカ1人でも俺なんかと付き合ってもらって感謝してるのに…



よし!決めた!!ジョブなんかに流されず、俺はビアンカを大事にする!それでいいはずだ。)



このたった数週間後、この決心をあっさり許してくれるほどジョブの呪いは小さいものではなかったことを知ることになるとは思いもしてなかった。。



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