第4話 初めてのキス
村に帰る頃には少し薄暗くなっていた。俺たちは急ぎ村長のところへ報告に行く。
『2人とも無事に戻ったか!帰りが遅かったようだが、どうせ寄り道でジョブのレベル上げでもしてたんだろう?』
ビアンカは村長が開口1番で自分等の行動を言い当てたことに驚いたようだ。
『どうして分かったんですか?流石は村長様です!』
と褒め称える。単純なやつだな~。
『毎年、ジョブを手にいれたばかりの若者は同じ行動をするもんだよ!』
父はニヤリと笑いかける。
『それで、2人とも何のジョブにしたのか教えて貰えるかな?』
(やっぱり来たか…言いたくないな~)
『私は予定通り戦士を選択しました。今3レベルまで上がりました。』
(あれ?まだ3なのか…遊び人ほんと上がりやすいんだな。。)
『ほう!もう3レベルとはずいぶんと帰りに頑張ったようだね?予定通りのジョブになれて本当に良かった!
っんで!?アランは何を選択したんだ?』
『はい。俺は選択肢が1つしかなかったため、ちょっと…かなり変わったジョブを選ぶしかありませんでした。。』
『変わったジョブ??勿体付けずに早く教えろよ!』
『遊び人を選択しました。』
『・・・・遊び人?聞いたことないが、それはどんなジョブなんだ?』
『アリスト教の教皇ロメロ様もご存知ないジョブのようでした。
ジョブの説明には、運が良くなり、他のジョブにない独自のスキルを覚えるとありました。全ジョブの中で1番ジョブレベルが上がりやすいとも記載されてました。』
『運が良くなるのはいいんじゃないか?しかし、変わったスキルか。。今覚えているスキルはあるのか?』
『……とても言いにくいのですが…逃げ足が早くなるというパッシブスキルです。』
『…っ!!っはははっはは。。うはははっ!確かにそれは変わったスキルだな!?うははっ!
面白そうじゃないか…明日から暫くビアンカと一緒にレベル上げでもして来たらいい♪また笑わせるようなスキルを覚えるのを期待してるぞ!?
ッププっ。。げほっげほ!み。水をくれ!笑い過ぎた♪』
『あなたっ!いくらなんでも笑いすぎよ。あまり馬鹿にしたらアランがかわいそうよ!』
流石にひどいと思ったのか母が口を挟んだ。
『パパっ!!にいにを苛めたらメーよ!』
まだ3歳の妹のメイまで援護射撃をしてくれる。
『ありがとう!メイ!母さん!
まだこのジョブのことはいまいち分かってないけど、俺は頑張ってみるよ!父さんの苛めなんかには負けないよ!!』
『いつの間にか俺は完全な悪役にされてるし…
まあ、あれだ。。成人の儀お疲れ様!
今日からは2人とも大人として扱わせて貰う。これまでと違って自分の未来は自分で決めないといけない!
明日から1週間はさっきも言ったが、ジョブのレベル上げでもしながら将来どうしたいのかを考えてくれ!』
『はい!』×2
こうして俺たちは、将来に向けて考える1週間という時間を貰ったのだ。ビアンカはどうするのだろう。スカウトを受けたって言ってたし、王都で衛兵になるのかもな。俺は…このまま村長になるための修行の日々かな。。?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌朝、俺たちはまだ真っ暗なほど朝早くから出発した。
今日中に目的地に到着したいので少し無理をした。せっかくだからたくさんレベル上げもしたいし、村のそばではほとんどモンスターはでないから少し遠出することにしたのだ。
目的地は、【初心者用ダンジョン「チューケイブ」】。
俺たちの村から徒歩で、15時間程の距離にあるダンジョンである。王都からも近く、弱いモンスターが大量に出現するということもあり、常に人の多い人気の狩場である。
チューとは実はネズミを表しており、ネズミの魔物しか出ないダンジョンなのだ。
そのほとんどが大ネズミと呼ばれる犬くらいの大きさのネズミであり、攻撃手段が噛みつきのみと、よっぽど油断しなければやられることはなく、倒したネズミの肉は皮を剥ぐだけで、そのまま焼いても美味しく食べれるから食料を持ち込まなくともダンジョンに1日中籠れるという、低レベル者にはいいこと尽くしなのだ。
休憩も最小限にして、移動に費やしたが、それでもダンジョンのそばの宿場町に着く頃には既に辺りはかなり暗くなってきていた。
勿論、今夜はこの宿場町で宿を取る予定なのだが…1つ誤算があった。。昨日成人の儀を終えた者たちがダンジョンに押し寄せたようで、いつも以上に人が溢れていた。考えることは皆同じらしい…
この状況で、この時間から今夜の宿を探すことが如何に難しいかは想像に難くないだろう。
元々4泊はダンジョンの中で夜営するつもりだったので、絶対に宿でないといけないわけではないのだが、今日と最終日は15時間のほぼ休憩なしの移動とかなりの強硬スケジュールだったため、その前後2回だけは疲れを取るためにゆっくり宿を取りたかったのだ。
恐らく無理だとは思うのだが、遊び人になってからのエンカウント率の良さ、敵の落とすルピーの多さなど、地味な運の良さを感じるので、この日ももしかしたら…と何件か宿を回ってみることにした。
『ごめんね!今満室だね…見ての通り、昨日からどこの宿もいっぱいみたいだよ!』
(流石に物理的に埋まってるのを運でどうにかならないわな…諦めて今夜は野宿かな。。)
諦めて移動しようとしたところに同年代の男が1人俺たちの話してた女将に声を掛ける。
『女将、すまないがこれから急にダンジョンに潜ることになったんだ。いつ戻るか判らないから明後日まで部屋を取ってたんだが、キャンセル頼む。』
『あらあら…本当に急だね!?
明日の分の代金は戻せるけど、この時間からのキャンセルじゃ今日の分は戻せないよ!それでもいいかい?』
『それは勿論大丈夫だ!こちらの都合だしな…
急に今からダンジョンに潜るパーティーに入れてもらえることになったからね!その分稼いでくるよ。』
嘘のように目の前で空き部屋が出来たようだ。
『っで!あんたたち部屋が空いたけど泊まってくかい?素泊まりで1泊1人30ルピー、先払いだよ!食事は必要ならそこの食堂で好きに食べてっておくれ!朝も5時からやってるよ!』
『はい!泊まります!!』×2
『あら♪声まで揃っちゃって仲いいわね~♪
あんたら運が良かったわね!元々1人部屋だからちょっと狭いけど、仲のいいカップルなら問題ないでしょ?狭い代わりにお湯2つはサービスしてあげる!本当は1つ3ルピーだからかなりお得よ!?』
(あ!気づいてなかった…1人がキャンセルしたんだから、1人部屋が1部屋しか空いてないよな。。となると…
俺とビアンカで狭い部屋で相部屋!?いくらなんでも不味くないか?)
『あっ!俺らそんな関…』
俺が本当のことを言おうとしてたら、ビアンカが肘で俺の脇腹を突っつく。
『ありがとうございます。じゃーお言葉に甘えてお湯は頂きます。2人で60ルピーですね。』
と2人分の代金を払い出す。
俺は何も言えず…流されるがまま部屋まで移動する。。
『いつまで呆けてるのよ…?本当のことを言ったらせっかく宿に泊まれそうだったのが無くなるかもだったでしょ?』
『そりゃそうだけど…本当にいいのか?』
『何?…神妙な顔で…本当に私に何かするつもり?
私はアランを信じてるから同じ部屋でもいいかなと思ったのに…
アランはジョブで遊び人になったら、私生活まで遊び人になるつもりなの?
結婚もする前に手を出したら許さないんだからね!』
『結婚する前にって…そんなことしないさ!
俺はビアンカのこと大事に思ってるから。。』
ビアンカがいつの間にか距離を詰め、俺の唇に柔らかいものが触れた…
とても柔らかく、そして熱い…鼻と鼻が触れ合う距離で初めて感じる温もりと、いつもよりも濃厚なビアンカの甘い香りに脳が痺れてくる。。
『あっ…』
ふと訪れる現実の空虚感に思わず寂しげな声が漏れる…
『今はここまでよ…頑張って立派な村長になって、私を幸せにしてよね?』
『それって…』
『これ以上は自分で考えてよ!私だって恥ずかしいのよ!バカっ!』
とビアンカはベッドに潜り込んだ。
俺はただただ呆けていると…
【ジョブレベルが上がりました】
【スキル 口笛を取得しました】
(え?今何か経験値を得る要素あったか?
うーん…考えても全く分からん!口笛って確か…敵を呼び寄せるスキルだったよな。。意外に使えるんだよな~!
ってそんなことどうでもいいわ!
ビアンカの言動って…俺と結婚してもいいってことだよな!?むしろ、しろってことだよな?
今までそんなこと考えたこともなかったな。。
ビアンカも男女を意識させるようなこと1度もなかったのに…かわいい幼なじみとは思ってたけど。。
ビアンカと結婚か~嫌じゃないけど…むしろ嬉しいけど、どうしていいかさっぱりだ。。
これでも前の世界と合わせるとそれなりの年齢のはずなのに恋愛経験値0から全然成長できてる気がしないわ~。。
いや、さっきのは経験か!!生まれて初めてキスしちゃったよ♪
女の子の唇ってあんなに柔らかいんだな…
ビアンカの温もりに溶けていくかと思っちゃったよ。。気持ち良かったな~
またしたいな~!もう1度させてくれないかな…
…ってただの欲望に変わってきてる!?
何も考えがまとまらない…とりあえず現実逃避しよう。。オータス)
名前 アラン
種族 ヒューム
年齢 12歳
力 73(89-16)
体力 91(83+8)
俊敏 143(130+13)
器用 223(187+36)
知力 80(100-20)
魔力 0
ジョブ 遊び人lv8
ジョブスキル 逃げ足、口笛
称号 転生者、神ファルスの加護を受けし者、魔物を狩りし者
(口笛説明)
口笛
このスキルを使えば、指定した異性の注目を集めることができる。口笛の音が届かないと効果はない。
(え?何この意味分からないスキル効果…
口笛の音が届く範囲の誰かに俺のことを気づかせるスキルってことだろうけど…役に立つかは別としてそこまではいい…なぜ、異性限定なんだ?
…あまり考えたくないが…今思い浮かんだ仮説だとさっきレベルがあがったのも、このスキルのことも説明がつくんだよな。。
でも認めたくない…とりあえず明日からのレベル上げで新しいスキルを覚えたら答えは出るだろうし、今日は何もかも先送りにしとこう!)
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それから俺たちは、食事をするため宿の食堂へ向かった。さっきのことを引きずって緊張しちゃって会話ができない。。
『アラン!いつまで呆けてるのよ…いい加減普通に戻ってよ!
私もどうしていいか分からなくなっちゃうじゃない…』
『そんなこと言われたって…あんなことあったら意識するなって方が難しいよ!
今までそんな素振り全くなかったじゃないか…
幼なじみとして仲良くしてるだけで、男として見られてるなんて思ったことなかったし。。』
『何よそれ。。さっきまで私のことも女としてみたことなかったってこと?アランにとって私はただの幼なじみでしかなかったってこと?』
『いや…俺にとってビアンカは昔から可愛くて性格も良くて…異性としては高嶺の花過ぎたんだ!
俺にとって幼なじみとして仲良くしてもらえるだけでもありがたいと思ってたから、あえて関係を壊さないようずっと異性としてはみないように心掛けていたんだ…』
『何で私の気持ちも、私との関係のことも勝手にアランが決めて自己完結してるのよ?
アランは私が他の男の人とキスしたり、結婚したりしても幼なじみとして喜ぶだけなの?』
(ビアンカが他の男とキス…嫌だ!あの唇は俺のものだ)
『それは嫌だ!…
そうか俺はビアンカが女性として好きなんだと思う。
今ビアンカが他の男とキスすると考えたら、今まで感じたことない怒りが沸いてきた…
恋愛そのものが経験ないから分からないけど、これが嫉妬ってやつなんだと思う。。』
『好きなんだと思うって…
ハッキリしないとこが如何にもアランらしいわね。。でも、嬉しいわ♪
私もそんなハッキリしないアランでも好きよ!今まで以上に大事にしてね!?』
こうして俺たちは付き合いだした。告白すら既に尻に敷かれていた気がするのは…
きっと気のせいに決まってる…
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