第3話 パーティー

俺は教皇ロメロへ深々と御礼を言って、


神殿を出た。



登録に時間が掛かったので人もかなり減ってるようだ…


ビアンカを探すとすぐ見つかった。



『お待たせ!』

俺が声を掛けると、振り替えるなり怒りの顔が覗かせる…


『遅いわよ!どこをほっつき歩いてたのよ!?


何が先に行くぞ!…よ!!アランを待たせないよう、急いでギルド登録済ませて出てきたのに…』



『本当にごめん!変わったジョブになってしまって、登録するギルドが存在しないから、どうしようって立ち往生してたんだ。。


それを教皇ロメロ様に助けてもらって今まで登録してもらってたんだよ…』


『なにそれ!変わったジョブって何よ!?


それより、教皇様に、直接登録ってどれだけ運がいいのよ!!王様にも直接意見出来るほどの権力者よ!


羨まし過ぎる!!



…何だか余計に腹が立ってきたわ!


この怒りを静めるには、この後王都で最近流行っているというスイーツをアランに奢って貰うしかないわ!行くわよ♪』



俺はなすがままにビアンカに引っ張られて行く…これは…


お小遣いの危機が訪れそうだが、覚悟するしかないか。。



ビアンカに連れられてやって来たお店は、男性だけではとても入りにくい如何にも乙女なお店だった。


『っんで!?何のジョブになったのよ?』

ビアンカが迫ってくる…


『..........................遊び人だよ…』



『えっ?何って言ったの?もっと大きな声で言ってよ!』



『だから遊び人だよ!』


『…?何そのジョブ。。


初めて聞いたんだけど…何が出来るの?』


『まだ分からないよ!スキルもまだ何も覚えてないし…教皇様も知らないジョブみたいだったよ。


俺の予想は、遊ぶような行為で敵と戦うとか?石を投げるとか?』


『何それ。。めっちゃ弱そうなんだけど…


何でそんな訳分からないジョブ選択したの?』



『選択肢が、それ1つしかなかったんだよ!仕方ないだろ…



あ~もう俺のことはいいんだよ!ビアンカはどうだったんだよ?』



ビアンカは勝ち誇った顔で、ピースしてくる…


『予定通りの戦士よ!王都の衛兵のスカウトもされたわ♪どうしようかしら…』


『未来明るくていいな~俺も強そうなジョブになりたかったよ。』



『まあ…頑張りなさいよ!これから村長になるための勉強をするんでしょう?


あ!そうだ!!これから村へ帰る途中で少しレベル上げながら帰らない?』


『いいね♪その話乗った!

ここの支払いで小遣いも無くなりそうだしな。。』



俺たちは王都の最新スイーツ…大学芋もどき?を楽しんだ後、王都を発った!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『じゃーパーティー登録するわよ!!』


『いいのか?

ビアンカならソロの方ががかなり美味しいはずなのに…』


『幼なじみでそんな小さなこと言わないの!

今回はジョブを試したいだけなんだから余計にだよ。』


『そうか?ありがとう。』




この世界では、強くなるには3つの方法がある。


1つ目は、地球と同じ筋トレやランニング等を繰り返し行い、少しずつ体を鍛えることでステータスを伸ばす。


2つ目は、剣や魔法等を学び技術を得ること。


3つ目は、成人の儀で得たジョブレベルを上げること。



勿論1番早いのは、3番目だ。


単純にジョブレベルを上げる方法は魔物や人間と戦うこと。


必ずしも殺さなくても、戦いの経験は経験値として累積され、一定数まで貯まるとレベルが上がるのだ。勿論殺し合いの方が得られる経験値は、遥かに多いのは言うまでもないだろう。



その他にも、ジョブに関係する様々な経験が経験値となり、そのジョブレベルを上げることになる。例えば、戦士なら剣を使うことや盾で防御することである。



つまりは、俺たちは今日成人の儀でジョブを得たことにより、経験値を得ることが出来るようになったのだ。


戦闘を行えば経験値を得て、レベルを上げられる…



RPG風にいうととうとう冒険の始まりである。楽しみでないはずがない♪



しかし、戦闘とはいつも1人で行うものとは限らない。大勢の敵と戦うことがあるだろう…集団で強敵と戦うこともあるだろう…そんな時に行うのがさっき話してた、【パーティー登録】である。最大5人まで組むことが出来る。



例えば今回のように2人パーティーで経験値を10持っている敵を倒すと、実際に戦った者も戦ってない者も5ずつ分配される。ビアンカのように、ここらの敵程度ソロでたくさん倒せる力があれば、パーティーをわざわざ組んで戦うより、ソロでガンガン倒す方が効率がいいことは言うまでもない。



パーティーは1度組むと、パーティーリーダーが解散するか、自分が抜けない限りそのまま維持され続けられる。しかし、戦闘による経験値はある程度距離が離れていると分配されなくなる。



金持ちには、お金で強者を雇って戦わせ、自分は経験値だけを吸う、所謂【パラサイト】と言われることをする者も少なくない。この距離の制限がなければ、もっとひどいことになっていることだろう。。




『うぉ~!俺の小遣い!!』

俺たちは、3時間ほど歩いたところにある森に潜った。


『止めてよ…恥ずかしい。。』

ビアンカは俺の変なテンションに呆れ気味である。



運も良く、すぐにエンカウントした。


『あっちに、ゴブリンの群れがいるぞ』

俺は叫んだ。


ビアンカは大剣を振り回しながら、ゴブリンの群れの中に飛び込んだ。防御を捨てた、その竜巻のような剣閃がゴブリンたちを切り刻んでゆく。


ゴブリンたちはその勢いを止めようと、周りからビアンカに向けて武器や石を投げつけようとしている。


『させない!』

俺は物を投げようとしている、ゴブリンの手首を2本のナイフで次々と切りつけてゆく。ダメージは大したことないだろう…しかし、勢いを止められなかった竜巻はその勢いをハリケーンに変えゴブリンたちに襲い掛かる。正に瞬殺である。


【ジョブレベルが上がりました】

【スキル 逃げ足を取得しました】


(お!レベル上がった!!スキルも嬉しいんだけど…逃げ足かよ!多分逃げ足が早くなるだけのスキルだろうな。なんとも遊び人らしいわ…)


『楽勝だな!しかし、いくらなんでも攻撃的過ぎるだろ?反撃食らって怪我したらどうするんだよ!』


『アランが、そんなことさせないでしょ?だから攻撃に集中したのよ。信頼の証なんだから文句言わないの!』



『そんなこと言われたら何も言えなくなるだろ!ずるいぞ!』


『レベルが上がったわね!やった!!』


『俺も上がったよ!スキルも1つ覚えたよ。』


『いいわね!どんなスキル?』


『名前で大体予想はついてるけど一応確認してから伝えるよ…』


(オータス)


名前 アラン

種族 ヒューム

年齢 12歳

力 70(86-16)

体力 84(77+7)

俊敏 134(122+12)

器用 208(174+34)

知力 78(96-18)

魔力 0


ジョブ 遊び人lv3

ジョブスキル 逃げ足

称号 転生者、神ファルスの加護を受けし者、魔物を狩りし者



(逃げ足説明)


逃げ足

パッシブスキル。何かから逃げるときのみ俊敏2倍。1日に10分以上使用すると、超過時間に応じて翌日は筋肉の痛みで体が動かしにくくなる。



(予想通りの内容だけど、予想以上の効果だな…俊敏2倍って!逃げるときだけは火事場の馬鹿力が出せるけど、後から筋肉痛が出るから気を付けてってことね…一応役立ちそうなスキルだ。


レベルももう3レベルか…全ジョブの中で1番上がりやすいって説明あってたしな。)


(ハイド)



『予想通り逃げ足が早くなるだけのスキルだったよ…


しかもパッシブスキルだったよ。最初に覚えるのがこれって、どんだけ逃げる前提の職業なんだろ…』



パッシブスキルとは常時発動型スキルともいい、意識して使わなくとも、自動的に常に使われるスキルのことだ。



ビアンカがあからさまにかわいそうなものを見る顔になって

『格好悪いスキルね。そんなジョブを引くなんて、アランってそんな臆病な性格してたかしら。。』


『そんな目で見るなよ!せっかくレベルも上がったのに悲しくなるだろ!』


『そんなこと言われても情けないもんは情けないんだから仕方ないわ!


そんなことより、ルピーを拾ったら次に行きましょう。レベルを少しでも上げて逃亡しなくてもいいように鍛えてあげないとね!?笑』


明らかに馬鹿にした表情でからかってくる…



(悔しいが…今は何も言い返せる要素がないわ。ほんと次に行った方が良さげだ。)


ルピーを拾ってまわると中に1つだけ10ルピーが混じっていた。

『お~ラッキー10ルピーがあったぞ!


すぐに敵と遭遇出来たし、何だか今日は運がいいな♪この調子でもう少し稼ぎたいな!』


『アランは経験値より小銭の方が嬉しそうね?村ではそんなお金なんて使うことないのに…どうしてこんなにがめつくなったのかしら。。はぁ』



それからもこの日の狩は順調で次々にモンスターを倒した。暗くなる前に村に戻るため、街道へ戻る頃にはかなり稼いでいた。



『今日はほんといい感じだったわね♪かなり稼げたわ。私も最初のスキルを覚えること出来たし!』


『おめでとう!お金も2つも10ルピーがあったから、合計48ルピーだ♪24ルピーずつ分けよう。』


『相変わらず計算早いわね!』



この世界は、日本のように教育が発達していないため文字を書いたり、計算を素早く行える者は少ない。


俺は村長の息子ということもあって文字を読み書きは習ったし、計算は日本の教育によって完璧だ。この世界の算数は足し算、引き算、かけ算、わり算の4つのみ。


完璧で当然なのだ。



ではどうやってステータスや成人の儀の文字を認識しているかというと…なぜか皆読めるし認識できるのだ。これも神の力だと言われている。



『それは違うぞ!俺が早いんでなく…ビアンカが遅すぎるんだ!』


からかって言い、そのまま村の方へ逃げ出す。


『言ったわねー!?待ちなさい!』


暫くビアンカと俺のおいかけっこは続いたが…いつもとは違い、俺が圧倒的な速度でビアンカを圧倒する。


『どんだけ本気で逃げるのよ!?ハアハア…』


『軽く逃げたつもりだったんだが…逃げ足のスキルの効果だろうな?』


最後には、いじけた振りして、ゆっくり近づくビアンカに先ほど覚えた戦士のスキル【体当たり】を突然くらい、大きく吹き飛ばされたとだけ語っておこう。




最後に狩りの結果を


名前 アラン

種族 ヒューム

年齢 12歳

力 72(88-16)

体力 89(81+8)

俊敏 140(128+12)

器用 220(184+36)

知力 80(98-18)

魔力 0


ジョブ 遊び人lv7

ジョブスキル 逃げ足

称号 転生者、神ファルスの加護を受けし者、魔物を狩りし者


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る