第68話 ヘレンとの別れ、そしてラトルへ
俺たちは、ヘレンとましろのところに戻ると、太陽が間もなく沈むので、急いで街道に向けて出発しようと話してたのだが、
エリーが今夜はエリクサラマンダーたちに、俺たちを守らせるので、夜営の番も必要ないから、水呑場もある近くの洞穴でゆっくりと休めばいいと言ってくれた。
ヘレンはまだ多少の抵抗はあるようだが、渋々受け入れた。
エリーに案内されたのは、本当に近くの生き物の水呑場となってるのだろう広い洞穴だった。
『今日は本当に大変でしたね!?何度も死を覚悟しましたよ…ヘレンさんも疲れたでしょう?』
『はい、本当に疲れました。こうして生きてるのが不思議なくらいに…
アランさん本当にありがとうございました!
そして…
本当にすいませんでした!!
私の不注意でアランさんやましろちゃんを危険な目に遇わせる結果になってしまったんです。あの時私が指示通り動いてたら、アランさんはあんな怪我を負うこともなく、今頃何でもなく街道で夜営をしてたことでしょう。
パーティーでは、一人の勝手な行動がパーティー全員の命を危険に晒すことがあると、母さんに言われて育ったのに…不用意に行動してしまいました。
勇者のジョブを持っていても、役に立つどころか、邪魔ばかりしてしまいました。
あまりに迷惑を掛けすぎていて、アランさんにどうやって償っていけばいいか分かりません…
母さんの病気を治した後なら、アランさんが望めば何だってします。
死ねと言うなら、喜んで死にます。
奴隷になれというなら、喜んでアランさんのものになります。
どんな願いをされても、私の残りの生涯をアランさんに全て捧げます。
私には、今日1日でアランさんに、それだけの恩と償いが出来ました。』
『ちょっと待ってください!!疲れたって話からどこまで話が飛んでいくんですか?
…俺がヘレンさんに死んで欲しいなんて思うわけないじゃないですか!?
奴隷にしたいなんて考えもしないですよ!!
俺は、ヘレンさんとアルマさんが幸せになって欲しいと思ったから、ここへ来たんですよ。その俺が、その幸せを壊すような願いをすることはないです。
アルマさんの病気はエリーの尻尾ならおそらく直ぐに完治するでしょう。
アルマさんの病気の心配が無くなったら、ヘレンさんはどうしたいのか、それはヘレンさん自身で考えて下さい!
もしそれでは俺に悪いと思うのなら、もし俺がいつか困ってたら、助けて下さい。』
『分かりました。この身を盾にしてでも必ず助けます!』
『どうして、そう物騒な形で助けたがるんですか?』
こんな会話をして、俺たちは疲れからか直ぐに寝入ってしまった。
翌朝、ぐっすり寝て疲れが取れた俺たちは、街道まで歩き、改めて別れの挨拶をするのだった。
『アランさん、本当にありがとうございました。昨日も言いましたが、今回のことは、生涯をかけて償い、感謝させて頂きます。
それで、まず始めにこのマジックバッグを貰ってもらえませんか?アランさんは、昨日「付与師」となりました。この街道の素材は、付与師にとって貴重な素材も多いはずです。
これからも、様々な素材を買い集めたり、採取したり、討伐して集めたりされる筈です。その時に、マジックバッグがないと、不便な筈です。』
『マジックバッグ!?それは勿論喉から手が出るくらい欲しいものですけど、そんな高級な物を貰えませんよ!
それは、ヘレンさんの努力の結果のような代物じゃないですか!?』
『その努力の目的は、母さんの病気を治すことです。そのための、エリクサラマンダーの尻尾を手に入れることです。それを手にすることが出来たのです。
しかも、効果の遥かに高い、エリーさんの稀少種の特別な尻尾を…
これをお金に換算したら、そのマジックバッグがいくつも手に入るくらいのものなんですよ?まず世に出回ることのない貴重な素材ですからね…
それに、実は私はもう1つ容量の小さめのマジックバッグも持ってるんです。
これは、母さんが冒険者してた頃に使っていた物なんですけど、今の私にはこれだけあれば何とかなります。エリーさんの尻尾を街に持ち帰るだけですから。
私に必要な物は昨夜のうちに、全て母のマジックバッグに移しましたので、このマジックバッグはアランさんが使って下さい。』
そういうと、俺にマジックバッグを渡してくる。そして、自身で持つもう1つのマジックバッグからミスリルの剣を取り出し、
『そして、それを役立てて付与師として経験を積まれて下さい!そして、予約したように、この剣に必ず付与をお願いします!!
母の病気が治ったら、必ず付与をお願いするために、アランさんの元に伺います。
その時には、是非付与お願いします。』
『分かりました。マジックバッグ確かに頂きます。
頑張って付与の練習しておきます。その時に必ずヘレンさんに喜んで貰えるよう頑張りますね!!
そして、早くアルマさんが治ることを願ってます。ヘレンさんも、お元気で…また必ず会いましょう!』
俺は握手を求め、手を伸ばす。ヘレンさんは両方の手で俺の手を握ってきた。
『はい!必ず!!』
ヘレンさんは、満面の笑顔で笑ってくれた。
こうして、ヘレンとまた会うことを誓い合い、別れるのだった。
俺はましろを胸に入れ、エリーの上に乗り、
『エリー、改めてよろしくね!
ラトルの村まで、向かおう!!』
そこから、ラトルの村へ到着するまで、モンスターに襲われることは1度もなかった。
おそらく、エリーの移動速度の速さに襲う暇も無かったのかもしれないし、エリクサラマンダーの稀少種に手を出そうという物好きもいなかったのだろう。
結果、エリーを仲間にしたことで、ヘレンの街を出て3日目の夕方にはラトルの村へ到着した。
遠くに見え始めた懐かしい故郷を嬉しく思い、早く行きたい気持ちを押さえきれずにいたのだが、
このままの速度で村に近づけば大変な騒ぎになると思い、
『エリー!間もなく村だ!!
速度をゆっくり歩く速度に変えてくれ!』
と指示を出すのだった。
久しぶりの故郷、そして、逃げた王族とは誰がいるのか…
そして、何より愛しのビアンカが今ラトルにいるのか…
俺は、近づいているラトルを見ながら、王都で別れた皆の姿を強く思うのだった…
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