41 王位真偽戦争Ⅱ 4
達也達は1度デウンへ帰還し、レクスレートの修理とマナの補給及び、休息を取る。
しかし、デウンでは衝撃が走る。それもその筈だ、今まで黒曜騎士団が破損して帰還したことが無いのだ。
そんな中、レクスレートの修理の為、旦那の元へやって来たジークと達也。
「おいおい、こりゃあ……随分派手にやられたな」
「……面目ない」
「ふぅむ……達也。相手、強かったのか?」
「まぁ、強いと思いますよ?」
「それはお前が勝てない相手か?」
「それは……ちょっと……」
言いづらい達也を見て察した旦那は、
「そうか、なら――」
「――聞かせて欲しい、達也」
話を終わらせようとしたが、ジークが追及をする。
「君が奴と戦えばどうなっていた?」
「んー……どうでしょう。ジーク先輩の戦いを見たからこそ、相手の実力が把握できたので……もし、初めから戦っていたなら……フレームには傷が付く位でしょうか?」
「それは君が本気を出したら、相手にはならないという事かい?」
「多分ですが」
「そうか……はぁ……」
ジークはため息を1つしてから、天井を見上げ、
「私はもっと強くならないとダメなのだな……」
改めて決意をするジークであった。
「ちなみに旦那、レクスレートの修理にはどのくらい掛かるかな?」
「正直言って、今のままじゃ無理だ」
「私はこのデウンに待機かい?」
「……」
無言で旦那は達也の方を向く。
「達也ァ、団長権限を使ってくれねぇか?」
「ふむ、どんな内容ですか?」
「グレイプニールだ」
「なるほど……良いでしょう」
「達也!! 良いのか!?」
簡単に了承する達也にジークが声を上げた。
何故、ジークが声を上げたのか? それは達也が帰って来てからの話である。
―――――――――
エクスカリバーが完成後、急遽王都に呼ばれた達也とセラ。
何かと思い、王都へ向かうと衛兵達に囲まれながら王、クレスタの元へとやって来ていた。
そこには前国王、オルシェンと現王子レオリクスが参加していた。
「黒曜騎士団団長、新海達也」
「お久しゅうございます、クレスタ陛下」
「主を呼んだのは簡単である」
「何でしょう?」
「主を迎えに向かったあの大きな船は何だ?」
「ふ、ね? ……ああ! グレイプニールですね!」
クレスタは顔を半分隠すように片手を顔に当てる。
周りの衛兵達は唖然をして固まる。
オルシェンとレオは笑いを堪え、顔を横に反らす。
達也は何故、こんなに不穏な空気が流れているのか理解できていない。
「その、グレイプニールとやらはどれ程の戦力だ?」
「おお!! でしたら、今から資料をお持ち致しま――」
「――それは大丈夫だ」
「あ……そうですか……」
まさかの拒絶に思わず落ち込む達也。
それを横眼に見たセラは思う。
『あああああああああああああああああああッ!!!! かわぁいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!!!! 抱きしめたいッ!!』
そんな下らない事を思っていたのだった。
「それで、どれほどの戦力なのだ?」
「そうですね……まず、グレイプニールのご説明からさせて貰っても?」
「……短めに頼むぞ?」
「招致致しました。でしたら、戦術機動拠点グレイプニールと言う正式名称です。こちら、
「その他には?」
「はい、補給に修理、拠点防衛の為、私の製作したライフル・カノンを搭載しております。元々、超弩級魔獣との戦いに備えて製作したものでございます」
「……では、達也。ここらからが需要である」
「何でございましょう?」
一息ついてから真剣な表情に変わり、
「他の騎士団がグレイプニールを使用して、他国との戦争に勝つことは出来るか?」
「相手の規模にもなりますが、間違いなく言える事はまず補給路確保に、最前線でも拠点を構えられる位の性能はしております。安定して補給を確保できる様でしたら、相手の懐まで必ず到達は可能です」
「……達也よ、今後グレイプニールは最重要物として、私の許可なく使用する事を禁ずる」
この宣言、達也は必ず食いつく筈。そう思ったクレスタだが、
「構いません」
「……今何と?」
「いえ、ですから構いません」
「……何故だ?」
「いえ……陛下が禁止と仰ったので……」
「……お主の開発した物が禁止なのだぞ? 何故、反発せぬと聞いているのだ……」
「そういう事ですか、理由を述べても?」
「構わぬ」
いつもと変わらぬ表情と笑みを浮かべ、
「私はこの国が大好きです。何も分からなぬ自分を拾い、育ててくれた義理ですが、父に母。それに騎士として認めてくれた前国王に、騎士団長として務めさせてくれている団員に、それを了承して下っているクレスタ陛下。1番に国と民、騎士団を考えて下さっている方に禁止と言われれば、納得いたします」
達也の意見を聞いたクレスタは、自分が以下に浅はかな考えの元で達也に問答したか少し後悔した。
ここまでの忠義に、国や王の事を考えているとは思わなかったからだ。
兵器を作るだけ作り、この国を乗っ取るか新たな国を作るつもりだと疑っていたクレスタだが、達也の発言で全て払拭される。
「……新海達也、グレイプニールの件だが」
「何でございましょう?」
「基本的な使用は禁ずる」
「招致いた――」
「――ただし、超弩級魔獣の出現及び、他国との介入時の使用は申請後の使用は許可する」
「――ッ!! 誠に陛下の心の広さに感謝いたします」
深々と頭を下げた達也であった。
―――――――――
この日、グレイプニールの使用は陛下へ申請さえすれば使用する事が出来る状態へ切り替わった。
まず、申請するという事はそれほどの
ハーフェンに達也達が手こずっているという事を報告するようなものだ。
しかし、達也は、
「なら、陰影の人を派遣してもらおう」
「……そんなことできるのか?」
「ええ、多分可能かと。それに今申請すれば明後日にはグレイプニールが到着する予定ですので、申請しましょう」
陰影騎士団、諜報や偵察を主にする騎士団であり、簡単に姿を現す存在ではない。
達也も団長になってから陰影騎士団団長、テレサが団長だったのを知ったからだ。
因みに、テレサが陰影の者だと言うのはセラと達也しか知らない。
そして、陛下への報告も兼ねて陰影騎士団を呼ぶことに決めた達也であった。
「さぁて、陰影の人にも働いて貰おうかな!」
現状まだサームクェイド軍とジンガーム軍の方が優勢だが、その首元に飛んできている脅威と言う名のナイフが近づているとは思わなかった。
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