王位真偽戦争編
28 王位真偽戦争 1
西の国サームクェイドから山を挟んで更に西の国、王都ジンガーム。
この日、ジンガームは自国の騎士達を集めていた。
「同士達よ!! 我らの国は何故こんなにも過酷かッ!! それは簡単である!! 我々を恐れ西の国がこの地に抑え込んだからであるッ!!」
ジンガームの王、ガドヴィクス・ナゼ・ジンガームが演説を行っている。
「我らは散々苦汁を飲んだッ!! そもそも我が国はこの西大陸を制覇した覇者だッ!! なら、もう良かろう……!! 今こそ西国、サームクェイドと我が国を1つにする時だッ!!!! 騎士達よ!! 立ち上がれ!! 今こそ怒りの鉄槌をサームクェイドに下す時だッ!!!!」
「「「「オオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」」」」。
この戦争が後世に残る、
―――――――――
王都サームクェイド、隣国のハーフェンとは友好関係のある国である。
現在サームクェイドでは、隣国のハーフェンで起きた、新機体奪取の件で話があった。
そもそも新型機はこの国を通ったらしい。しかし、ハーフェンは一切サームクェイドを疑う事なく、別国だと黙認していた。
恩義を感じるサームクェイドの現国王、アッセェン・ヴェル・サームクェイド。
しかし、サームクェイドを通った事実を突き詰めるべく、会議を行うが答えは出ず。
この会議では4将騎士呼ばれるサームクェイドを守護する騎士達が参加していた。
「その様な事ではダメだと、私は言っているのです」
4将騎士、ベルクラースが強気に話す。
「そもそも、ハーフェンからの新機体の問題、身内が悪さしていると見えますが?」
同じく、4将騎士のオゥルオ。
「何じゃ! 私がやったと言うのか!」
「……国境を警備している物が、それを申すか」
4将騎士のムジルナとセッコク。
緊迫した空気にアッセェンはこれでは妙案も出ないと判断し、
「……良い、皆もの一旦空気を入れ替えよう」
アッセェンの一言に頭を下げ、部屋を出ていく。
ため息を1つ付き、中庭に足を運ぶ。
「どうしたものか……」
「お父様!」
娘のティアリーズ・クレン・サームクェイドがアッセェンを抱きしめる。
そんな愛娘を見てから思わず、綻ぶアッセェン。
「どうしたんだ? ティア」
「お父様を見つけたので走ってきました!」
「おお、そうか! 嬉しいなー!」
心底嬉しいアッセェン。そこに2人の女性が姿を現す。
大公妃のアメリア・エリン・サームクェイドとアイリス・イリム・サームクェイドが頭を下げる。
アッセェンはアメリアだけ呼び出すようにアイコンタクトを取り、その場から去る。
「どうなさいましたか、陛下」
「……国の雲行きが怪しい」
「……謀反ですか?」
「分からぬ、ただ……嫌な予感がするのだ」
「どうなさいましょう?」
「……万が一の事が有る。ティアを連れ、先にこの国から逃げ、東のデウンに向かって欲しい」
「招致いたしました」
頭を下げ、アッセェンを見送り、それを影で見ていたある人物。
その後、陛下は王室へ戻り、今後の事を考える。
「……そろそろティアに話すべきか……」
まだ早いかもしれないが、アッセェンは王にしか伝えられていない秘密の扉を開けようと、壁に近づく。
壁に手を付けると、魔法陣が光りだし反応して一部の床が少しだけ上がる。
アッセェンは王を継いでからずっと悩んでいた事、それはこの地下にある物。
少し上がった床を上げると、地下へ続く階段を下りて行く。
階段を降りていき、一つの扉の前で止まり、扉に手を当てると扉がゆっくりと開いた。
中に入ると、その地下空間が一気に照らされる。
そこには肩まで水の様な液体に浸かった
「500年前……暗黒時代と呼ばれ、戦争を終結させたとも言われる伝説の
そして奥の扉を開け、そこにあるのはクラレントとは違い、全体を水の様な物に浸からせた鎧の様な
「リベール・アウター・メイル……私の判断は間違っていない」
アッセェンは水の様な液体を抜いて、破壊しようとしていた。
だが、アッセェンの胸元が突如熱くなる。
何かと思い、胸元に手を当てると、突起物と共にネチャリとした感触を感じ、自分の手を見ると、
「……血……ゴッフ……」
意識した瞬間、鋭い痛みが体を襲う。
自身で立つことが出来ず、そのまま床に倒れる。
背後からの一撃、アッセェンは犯人をその目で確認した。
「だ、誰だ……き、さま……は……」
仮面を被り、姿を確認できずにいると、
「冥土の土産です、正体を明かしておきましょう」
素顔を隠す仮面を外し、ローブを取る。
その正体に思わず、驚愕し言葉を失う。
「お疲れ様です陛下。やっと、この日が来ましたね」
「……ぜ……」
言葉すら発せぬアッセェンを見下す。
裏切者は膝を曲げ、アッセェンの近くに寄る。
「この国は強い。分かりますか? その暗黒時代の兵器があるのです、それは最も人を殺し……本当に戦争を終結させたと言われた伝説の
「……」
意識が朦朧とする中、裏切者をどうにかせねばと思うが、もはや体を動かす事自体を許してはくれない。
「安心して下さい、娘様も後から追わせます。では、今までありがとうございました」
心臓へ刃が突き立てられ、アッセェンは息絶えた。
そして裏切者の配下が現れ、
「丁重に弔いなさい。少なからず、ここまで私を認めた御方です」
「承知致しました。姫の方は如何なさいますか?」
「劇薬を使いなさい」
「承知いたしました」
アッセェンの亡骸を抱え何処かへ消える。
サームクェイドを既に手中にほぼ収めたと言っても過言ではないこの状況に、思わず口元が緩む。
「覇道を歩む時が来た……!!」
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