44 王位真偽戦争Ⅱ 7
普通の騎士であれば、覚悟を決め1機でも多く地獄へ道連れにしようと考える状況。
エンキドゥ20機に対し1機。大地を揺らし、土煙上げながらエクスカリバーへ進攻する。
しかし、この男……新海達也だけは違った。
「良い光景だぁッ!!!! これぞ、アニメでよく見る! 1機で無双する奴!!」
操縦席であり得ぬ事を口にする達也。
達也は恐れる所か、武者震いを起こしており、興奮を抑えるのに必死であった。
何より思う事は、
「こんだけの
パーツの事だった。確かにエクサリアの配備が多くなれば、戦力は増大する。
しかし、達也達の持ち合わせを使うと自分たちの整備もままならない。
なら、相手から奪えば良い。当初の目的である相手のパーツ流用作戦である。
達也は唇を舐めてから、レバーを強く握り、
「さぁ、パーティーの時間だ!」
魔撃を放ち、エンキドゥの投影結晶を破壊する。
破壊されると、エンキドゥは前が見えずに地面に躓いて倒れる。
1機の投影を破壊後、2機3機と次々に破壊していく。
エクスカリバーと距離を詰めるのに投影結晶を破壊されたエンキドゥの数は10機。
残り10機である。投影結晶が壊された所で動けない訳では無いが、操縦席のハッチを開けたまま戦う事になる。
もし、エンキドゥ同士がぶつかり合った瞬間、操縦士は外に放り投げられる事となる。
すなわち死を意味しているので、投影結晶を破壊されたエンキドゥはその場で静止。
その中で、いち早くエクスカリバーの元へ到達したエンキドゥは大型メイスを振り上げた。
振り下ろす前にエクスカリバーのブレードで両腕を切り落とされる。
「流石、キメイルを使った剣だな! それにこのウイングブースターも良い! 近接強いパック、ソードパック……!! 最ッ高だッ!!」
エクスカリバーの背中、人間でいう所の肩甲骨辺りに羽型のブースターが装備されていて、2本のキメイルで作った剣の装備。
遠距離も出来る様にライフルを装備しているが、このライフルは低出力である。
何故、低出力なのか? それは羽型ブースターの出力エネルギーが高く、通常のエクスカリバーの持つライフル・カノンを装備すると羽型ブースターが使えないからだ。
だから、低出力のライフルを装備している。
もし、他の騎士団員が低出力ライフルを扱えば、間違いなく頭部を狙えず、胴体を撃つことで
今現状で射撃能力の高いレティですら、このライフルを扱えない。
低出力とは普段使っている魔撃よりも更に低い物で、何より風に影響されやすい。
このライフルで相手の頭部のみを狙う技術は達也しかいないのだ。
両腕を切り落とした後は頭部でライフルを放ち、投影結晶を破壊。
その後、流れ込んで来たエンキドゥ9機。
大型ハンマーを振り上げてから、勢いよくエクスカリバーへ放つ。
達也はレバーを引いてから、ペダルを踏んでブーストを蒸かす。
エクスカリバーは一回転し左足を上げながらエンキドゥへ突っ込む。
斜めに振り下ろされた大型ハンマーへ、足を振り下ろしエクスカリバーへの軌道を逸らす。
軌道が外れ地面を大きく叩き、少し大きめのクレーターが出来るのと同時に、周囲に小さく地面にヒビが入る。
軌道を逸らした後、エクスカリバーは体を半回転させると同時に、剣を逆手に持ち替え、両脇から剣先を出して吸い込まれる様にエンキドゥの両肩の関節部へ突き刺した。
両肩を突き刺され、中の魔鉱繊維が千切れる。
千切れた瞬間、今まで重圧な装甲の重量に耐えて来た魔鉱繊維だが、その重みに耐えられず軋みを上げ、両肩から魔鉱繊維を引きちぎりながら地面へ落ちた。
両肩が地面に落ちた瞬間、エクスカリバーはエンキドゥの横を抜け、低い態勢から突っ込んでから機体を横に回転させて、両膝を切り払う。
膝を切られたエンキドゥは後ろへ倒れる中、流れる様に回転後右手に持つ剣を振り上げ、エンキドゥの左肩から切り落とす。
宙を舞うエンキドゥの左腕が地面に落ち、音を立てると同時に砂ぼこりが上がるとエクスカリバーは歩いて7機のエンキドゥ達へ近づく。
エクスカリバーが1歩、また1歩と近づく度にジンガーム軍とサームクェイド軍の騎士達へ恐怖が込み上げてくる。
すると、エクスカリバーが立ち止まる。
「どうしたんですか? 来ないんですか? なら……こっちから行きますよ……ッ!!」
ブースターを起動させると、空気を吸い込みコンマ0秒後、点火。
爆発的な推進力を得たエクスカリバーが一気にエンキドゥの距離を詰める。
両腕を振り上げ、エンキドゥの両肩を切り落とし、空中で反回転してからエンキドゥを土台にしてドルフィンキックを行う。
ドルフィンキック後、機体を空中で回転させながら、別のエンキドゥへ飛んで頭部と左肩を切り払い、空へ舞い上がる。
「う、撃てぇええええええええええッ!!!!」
空に浮くエクスカリバーにエンキドゥ達は魔撃を放つ。
しかし、エクスカリバーには当たる事は無い。
ある程度撃った後、
「じゃ、今度はこっちの番だ」
達也の一言言った後、エクスカリバーはエンキドゥ達へ一気に急降下する。
魔撃を放ち続ける5機のエンキドゥ達。
エクスカリバーは左右に揺れながら急接近しながら、剣を構えている。
当てる事の出来ない、まともに相手すら出来ないそんな奴にどう戦えば良いのか、エンキドゥの騎士達は絶望を抱きつつ、魔撃を放っていた。
何より、エクスカリバーが高速で接近してきているのが目視している分、騎士達へ恐怖が刻まれて行く。
そしてその恐怖が徐々に徐々にと沸々と湧き上がり、騎士達の手に震えが起き出し、目を見開き、呼吸が荒々しくなっていく。
自分の所に来るな、自分の所に来るなと念じながら魔撃を放つ。
だが、それは叶わぬ願いである。
1人の騎士に狙いを定めたエクスカリバーは接近する。
剣を構えたエクスカリバーが1機のエンキドゥに近づいた瞬間、
「ひぁやああぁああああああああああああああッ!!!!」
恐怖が騎士の体を飲み込み、エンキドゥの騎士は発狂し、思わず操縦桿から手を離し、防衛本能で手で自身を守ろうとした。
衝撃と共に突き刺された感覚を感じたが、体の震えが止まらず動くことが出来なかった。
突如動かなくなったエンキドゥに達也は剣を引き抜いてから、別のエンキドゥへ飛ぶ。
エクスカリバーは剣をエンキドゥの腹部へ突き刺す。
因みにエンキドゥの操縦席は胸部、鹵獲したエンキドゥを調べていた達也はあえて腹部を狙って突き刺した。
突き刺してから、エクスカリバーはブースターを点火させてエンキドゥと共に移動する。
余りの勢いにエンキドゥの騎士は気絶しており、エンキドゥの陰に隠れて突っ込んできているエクスカリバーに魔撃を放つことが出来ない。
ある程度近づいた所で剣を引き抜いて、両手に持つ剣を使い、腹部を切り裂いて走り抜ける。
近づいてくるエクスカリバーに大型メイスを振り下ろすが、右腕の関節を切られ、斬られた腕が宙を舞う中、回し蹴りをエンキドゥへ放ち、騎士は気絶。
自身を奮い立たせ、エクスカリバーへハンマーを振り上げるエンキドゥへ、剣を逆手に瞬時に持ち替えてから投げる。
エンキドゥの重圧な装甲など、関係無くキメイル製の剣はエンキドゥの腹部へ突き刺さった。
どれほどの切れ味を持っているのか、直ぐに分かった騎士達。
関節部ならまだ納得が行くが、重圧な装甲部分の腹部に突き刺さっている。
その後、エクスカリバーは突き刺さった剣を掴んでから、右に向かって切り裂いた。
エンキドゥはそのまま後ろに倒れると同時に残り1機となったエンキドゥ。
目の前の敵に恐怖を植え付けられ、涙が出る。
大型ハンマーを手放した後、両手を上にあげるエンキドゥ。
「……助けて下さい」
その一言を聞いた達也は剣を収め、西門へブースターを点火させて向かった。
そして、東の都市エルトーサの奪還に成功した反サームクェイド。
撤退を余儀なくされたこの出来事、特に西門での出来事。
西門の事は、ジンガーム軍とサームクェイド軍内で『西門の悪夢』と呼ばれる。
西門にて白き
生存者22名、負傷者22名、死者0名……精神障害者22名。
西門の悪夢と呼ばれる元凶、ジンガーム軍とサームクェイド軍では――
――白き死神。
先に説明してあるが、ジンガーム軍とサームクェイド軍と後世において、この異名は語り継がれる事となった。
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