17 天才と新型機 8


 貴族達はイクシフォスターの正体が女性という事は知っていて、達也が出てきた事で少し困惑していた。


「彼が団長? イクシフォスター殿が団長では?」

「そうだ、イクシフォスターが団長だったはずだ」


 貴族達が疑問を口にすると、


「先日連絡を受けたのだ、イクシフォスターは団長の座を降り、団長補佐になると。そして新たな団長が新海達也であり先日、名が決まった黒曜騎士団団長だ」


 オルシェン自らが説明すると、貴族達が納得し静まり返る。


「さて、問答はここまでだ。双方、その新機体の実力を見せよ!」


 オルシェンの掛け声と共に模擬戦での審判がガーゼンレイに乗り、審査をしていく。

 その結果、黒曜騎士団は4機に対し、国境騎士団は6機となった。

 達也達は集まり、作戦会議を始める。


「ふぅむ、4機に対して6機か」

「こちらはオリジナルだから、それに合わせたのだろう」


 ジークとカイルが話す中、


「どうすんだ、達也」

「まぁ、作戦はある」

「ほう?」

「どんなだい?」


 達也が作戦を説明すると、カイルとジークが顔を合わせて頷く。

 そして、模擬戦の時間になり魔装騎兵フレーム・ストライカーへ乗り込む。

 審判役のガーゼンレイが杖を持ち、中央へ立つ。

 そんな中、1人の男性が模擬戦が行われている演習場を遠巻きに見ていた。


「ほう! あれが新型か! 何だ、離れている内に面白い事になってるじゃないか!」

「レオリクス王子! ここは危険です!」


 現国王の孫、レオリクス・シージ・ハーフェンへ言うが、ニカッと歯を見せて笑う。


「何を言ってんだ、帰って来てみれば、こんな面白い物を見れるんだぜ? 見なきゃ損だろ!」


 涙目で止める配下だが、それを聞かず仁王立ちでその場に立ち続ける。


「双方、準備の程は良いな? では、始めッ!!」

魔撃が空へ放たれると同時にジルフートが突撃を行う。


 ジルフートに合わせてセレスティアが3機向かう。


「達也の予想通りだな!」


 ジルフートは長剣を構えて3機へ迫っていく。


「バル、ウィンディ! 対魔装騎兵フレーム・ストライカー陣形で行くぞ!!」

「「了解!」」


 逆三角形の陣を取り、ジルフートへ近づく3機へ、


「さて、行こうか! エクスカリバーッ!!」


 エクスカリバーのブースターを点火させ、一気に距離を詰める。


「なッ!?」

「は!?」

「なぁあああああああああ!!」

 

 貴族と工房長が思わず声を上げる。

 

 ―――――――――

 

 オルシェンは黙り込み、公爵は目を見開き今見ている物が本物かどうか、目を擦っている。


「陛下……!」

「あぁ、気づいているさ……デウス公爵。あれは、500年前に闇に葬られた魔装騎兵フレーム・ストライカーだ」


 フッと口角を上げてから、エクスカリバー見る。


「……エクスカリバーと言う魔装騎兵フレーム・ストライカー、何とも面白い物よの……」


 陛下は心底楽しくなり、思わず口角を上げながら言う。

 そんなオルシェンを見たデウス公爵は、深いため息を付きやや呆れながら、


「私には……何とも恐ろしい光景です……」


 今後この国の行く末が見えなくなっていくデウス公爵であった。


 ―――――――――


 飛んでくるエクスカリバーへ肩に装備した杖で魔撃を放つ。

 だが、エクスカリバーは横に急速回転してから避け、相手のセレスティアの頭を蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされた頭が切れ、演習を見ていた王子の近くへ飛んで行った。

 王子の少し前で頭が地面に突き刺さり、砂ぼこりば舞い上がる。


「ハッハッハッハッ!! まさか、魔装騎兵フレーム・ストライカーが魔撃以上の速度で飛ぶとはな!! おい、あの騎士団と団長の名は!」


 頭が飛んできた事で配下は腰を抜かして、その場に尻を付けていた。

 そんな配下に思わずため息を付いてから、再び演習場へ視線を戻す。


「まぁ、後で分かるだろう」


 ニカッと歯を見せながら笑う王子であった。

 そんな中、まさかの1機倒された国境騎士団。

 エクスカリバーは国境騎士団の背後辺りに着地するが、突如機体が軋む。


「え!? マジかよ! 現行の装甲フレームと魔鉱繊維だぞ!?」


 達也のエクスカリバーは現行の魔鉱繊維と装甲フレームを取り付けていたが、達也の操作に装甲フレームと魔鉱繊維が追い付いていなかった。

 ガーヴェンドに乗りながらそれに気づいたセラ。


 エクスカリバーは修理と多少の改修を行ったが、改修を行った部分はあくまで古くて使えない物を取り換え、骨組みのインナーフレームを現代の物にし、束型魔鉱繊維たばがたまこうせんいに変え、装甲フレームを新しくしただけ。

 だが、それでも新型とも引かない機体には仕上がっている。


「……現行の素材では達也の動きに魔装騎兵フレーム・ストライカーが持たないって事ね……」


 1人、ガーヴェンドの操縦席から呟くセラであった。

 一方エクスカリバーの節々から軋みを上げながら魔鉱繊維に流れている電気魔法が火花となり、飛び出る。


「こりゃあ……動けて後1回が限界だな……なら、みんながチャンスを作るまで待機だな」


 操縦席で呟きながら戦況を操縦席から見守る達也であった。

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