33 王位真偽戦争 6


「さて、ここまででいいだろう? 出てきたらどうだ?」


 すると姿を現したのは全身をローブに身を包んだ存在。

 マントの下で何かを漁ろうとする素振りを見せた瞬間、


「動くな、それ以上何かすれば……撃つ」


 背後から現れたロイが達也とセラお手製の銃型の杖を構える。


「……君は黒曜騎士団補佐代理のロイ・ダキアヌだね」

「ご存知だとは、ちょっとは光栄だな」

「そして、君がハーフェンの最強の騎士、新海達也か」

「そうですね。まぁ、今は貴方が何故俺達をつけていたのか、それが知りたい」

「……こうも何だ、顔だけでも出させてくれないか?」

「構わない」


 達也はロイにアイコンタクトを送り、警戒させる。

 顔の部分だけローブを取ると、男性が現れた。

 手を上げ、真剣な表情で達也を見る。


「私は4騎士の1人、いや……元、4騎士のベルクラース」


 その発言に達也とロイは驚愕し、互いに目を合わせた。

 噂程度にしか聞いていない達也達。

 4騎士のベルクラースがアッセェン王を殺し、現女王のティアリーズに毒を盛り、サームクェイドの秘宝を奪おうとした。

 だが、それが叶わず、偽の女王を仕立て上げ、更に大公妃とその娘を誘拐し、戦争をさせる様に強要させ、この国を手中に収めようとした逆賊、と聞いていた。


「……貴方が本当にベルクラースなら大公妃の安否確認をしたい」

「元気です、とても……むしろ私がここに赴いたのも、アメリア様の指示です」

「……貴方が嘘を付いてる可能性もある」

「ええ、でしょうね」

「……貴方が娘を人質に取り、大公妃にさせた。と言う事も考えられます」

「……」

「そして、このタイミングで俺達の前に現れたのは間違いなく、協力の申請でしょう?」

「……ごもっともです。無理を承知でお願いしたい……どうか、我らに協力をしては貰えないだろうか?」


 頭を下げるベルクラースに達也とロイは目を合わせる。


「……その答えは直ぐには出せないのは承知でしょう、ベルクラース殿」

「……ええ」


 顔を上げ、返事をするベルクラース。


「この問題は、国との問題です。俺がここで下手に動けば、今度は自国へ矛先が向けられることになります」

「……お若いのに、そこまでの事を考えているとは」

「これでも最強の騎士団団長ですから、考えてはいるんです」

「では、どうしたら信用できましょうか? 私では無く、この国を信用するのでしょうか?」

「それも考え中でしてね。どうも、あの女王はキナ臭い……と言う部分はあります」

「……あれを見たのですね」

「あれ?」


 ベルクラースの発言に首を傾げる達也。

 すると、ベルクラースは頷き、


「現女王です。あれを見たのであれば、話が早い。……ですので、どうか信じては貰えないだろうか?」


 ロイと目を合わせてから、達也だけ銃型の杖を下し、ロイだけ構えさせておく。


「一応、話だけ聞かせて貰います。しかし、何かロクでも無い事をすれ、その場で実力行使後、衛兵に突き出します」

「構いません」

「……分かりました。案内を」

「はい」


 達也はベルクラースを先頭に立たせ、その後ろをついてく。

 付いていくと、ボロボロの酒場に到着し扉を開ける。

 白いひげに白髪のお爺さんがカウンターにうつ伏せていた。

 ベルクラースはお爺さんに近づき、


「戻りました」

「……遅い」

「すみません、話をしていました」


 チラッと達也達を見てから目を見開くお爺さん。

 それからベルクラースの胸倉をつかむ。


「お、お前ッ!! そいつ等はハーフェンの者じゃないか!!」

「ええ」

「分かっているのか!! そやつらは主にあっち側だッ!!」

「ええ、ですからあの方に会いに来ました」

「……そうか」


 再度、達也達を一目見てから、


「……好きにせい」

「ありがとうございます」


 ベルクラースはカウンター裏へ入る為に、扉を開ける。


「どうぞ、お入りください」


 扉を開けてから言う。ロイは達也に近づき耳打ちをした。


「……監視されている」

「……分かってる」

「……行くのか? 罠かもしれないぞ?」

「……何だろうな? この空気、何故か信じられるんだ」


 そう言って歩き出す達也。そんな達也にため息を1つ付いてから、後に続いた。

 付いて行くと木製の扉が1つ、その扉の前で3回ノックをする。

 すると、都に着けられた小さい扉が開く。

 その後、閉められると扉が開かれ、


「ベルクラース、こやつらは?」

「ハーフェンの者だ」

「……そうか。お主らは今の女王をどう思う?」


 扉の奥から現れた老騎士に言われ、達也達は顔を合わせてから達也が口を開く。


「きな臭い」

「フッ……ハッハッハッハ!! 信じよう! 入りたまえ」


 緊迫していた空気が突如、ガラリと変わった。

 達也達は案内されるがままに付いて行くと、目の前にもう一つ扉が現れた。

 ベルクラースは問らの前に立ち、3回ノックをすると、扉が開かれると女性が現れる。


「おかえりなさいませ、ベルクラース様」

「ああ」


 ベルクラースに一礼してから、達也達を見てから一礼し。


「どうぞ、お入りください」


 達也達は女性に案内されると、1人の女性が座っていた。

 その女性を見た達也達は驚愕して黙り込んだ。

 ベルクラースと付いてきた老騎士が膝を床に着ける。


「ただいま戻りましたティア女王陛下」

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