32 王位真偽戦争 5

 その後すぐに、扉が勢いよく開かれる。


「いよぉう! 達也!」

「……王子、流石にノックを……」

「おぉ! すまんな、次からそうする」


 姿を現したのはハーフェン国王子、レオが現れた。

 この遠征にはレオ自身も同行しており、護衛も兼ねている。

 レオ自身は単独でティアと会談していたのだ。

 因みにレオの護衛は、テレサである。

 全員集合した所で部屋に結界を張り、盗み聞きされぬよう魔法を施す。


「さて、これで聞かれずに済むね」

「なら、達也今後どうする予定何だ?」

「考えとしてはサームクェイドに力を貸す予定かな、義兄さん」

「そうか、なら明日にでも返事を――」

「――でも、きな臭いんだ」


 その一言で全員が黙り込む。その中で達也はレオにアイコンタクトを送る。


「俺自身、ティアと会ってきたが同盟の話は一旦流した。……そもそも父親が最も信頼における騎士、ベルクラースに殺され、更に毒も盛られたとなると……あそこまで強くなるはすだ」


 レオもバカでは無い。王子としての教養はしっかり受けてはいる。だが、オルシェンの闘争本能が強く引き継がれているだけなのだ。


「王子もそう思うのでしたら、どうしてですか?」


 ロイが口を開くと、レオは顎に手を付ける。


「……威厳が強すぎる」

「はい?」

「あーそれは俺も思いました若」

「達也もそう感じたか」

「ええ、威厳がありすぎると言うのでしょうかね? こう言っては失礼ですけど、父親を殺され毒を盛られた人間って、心が折れる寸前、もしくは復讐に燃えている筈なんだよね」


 達也の一言でセラ以外の全員がレオと達也のきな臭さが把握する。


「若、陛下はこの事を知っていてキナ臭いと言ったのですか?」

「いんや、爺ちゃんの勘だろうな。だが、これは勘通りきな臭いな」

「えっと……ごめん。どこがキナ臭いんだ? 女王陛下の件は分かった。なら、復讐に燃えているんだと俺は思う。けど、それのどこがきな臭いんだ?」


 ロイの発言に深くため息を付くセラ。


「アンタほッッッとバカね」

「ハァッ!? いきなり何だよ!」

「女王陛下の言葉聞いてた?」


 その発言にロイは首を傾げると、カイル達が口を開く。


「ロイ、女王陛下は俺達に協力の要請を出したよな?」

「そ、そうだな」

「協力の要請は出したが、内容が全くないんだ」

「え? だって、偽物のせいで国が大変な事になっているって」

「ロイ、気づかないのかい?」


 ジークが口を挟む。


「え? どういう?」

「何で偽物が現れたのか、それを話されていないのよ」


 きな臭さの原因を言うレティ。


「そう言う事か……!」

「と、言う事だロイ。それにもう一つある」

「それは?」

魔装騎兵フレーム・ストライカーだ」


 達也の発言にセラ以外がため息をついた。


「いや、だから達也……今、魔装騎兵フレーム・ストライカーは関係が無いだろう?」


 何故、魔装騎兵フレーム・ストライカーの話を出したのか分からないカイルは口にする。


「義兄さん、これかなり関係あるんです」

「え?」


 どこに? と思いながら達也へ聞き返す。

 すると、セラがカイルに言う。


「兄さん、新型の開発ってかなり話題になるのは知っている筈よね?」

「あぁ……だが、何が?」

「隣国である私達が新型機製作されたと聞いて、耳にしない訳がないの。ましてや、この内戦中に」

「そういう事か! だから、達也は女王陛下に聞いたのか!!」

「まぁ、それもあったんですけど……一番は詳しく新型機に着いて知りたかっただけです」


 満面の笑みで言う達也に再び頭を抱えるカイルであった。

  その後、達也達は街の様子を見に出かけていた。

 内戦中だと言うのに、街は活気づいていたのだ。

 

「……今の状況が分かっているのか?」


 呟くロイにセラが口を開く、


「……馬鹿ね、ロイ」

「お前、ここでもバカにす――」

「――こんな時だからこそ、街の中でも活気づけているのよ」


 その言葉の重みを知り、ロイは黙り込む。


「悪い」

「それよりも……達也ー! デート、デートしましょうーッ!!」


 達也の腕に抱き抱きつきながら言うセラに思わず、笑うロイ

 だが、達也は頬を軽く掻きながら、


「あー……ごめん、また今度ね」


 謝ってからロイにしか分からない合図を送る。

 それを察してから、


「すまんなセラ、達也は俺との用事があるんだ」

「は? 何でアンタなの?」

「すまんな、んじゃ行こうぜ達也」

「という事なんだ、ごめんセラ」


 達也とロイは駆け出してセラから離れた。

 ある程度離れた所で達也が口を開いた。


「すまんな、セラまで巻き込むつもりは無かった」

「良いさ、てか……上手いこと追っているな」

「ああ……さっき気づいた」

「強いか?」

「少なからず、弱くは無いと思う」


 2人で話しながら、背後につけている存在に気付かれぬように、追い込んでいく。

 そして達也と別れたロイ。達也の方を追う背後の存在。

 ある程度引き付けてから、達也が振り返る。


「さて、ここまででいいだろう? 出てきたらどうだ?」


 すると姿を現したのは全身をローブに身を包んだ存在であった。


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