34 王位真偽戦争 7


「ただいま戻りました陛下」

「……おかえりなさい。それで、そっちの2人は何ですか?」

「はッ! この方は黒曜騎士団団長と団長補佐代理のお二方です」

「黒曜……騎士団……って……ッ!! あっち側じゃないですか!!」

「いえ、陛下。どうやら、あっち側でもなさそうです」

「な、何でですか……?」


 フフっと笑いながら、


「キナ臭いらしいです」


 ベルクラースが言うと、女王はぽかーんと口を開いてから、


「き、キナ臭いって……理由があれですけど……でも、あっちが偽物ですから、キナ臭いのは間違いないですよね」


 と話す、城で会ったティアリーズ・クレン・サームクェイドが目の前に居たのだ。


「陛下、挨拶を」

「そうですね。お二方、私はティアリーズ・クレン・サームクェイド。今城にいるのは偽物で、私が本物です」


 言うが、城で会った方よりも威厳は無く、まだどこか幼い気がする。

 しかし、達也は口角を上げて膝を床に着ける。


「お初にお目にかかります陛下、私は黒曜騎士団団長、新海達也です」

「お、おい達也!」

「ロイ、挨拶は?」

「に、偽物かもしれないだろッ!」

「本物ですッ!」


 立ち上がり、怒りながら言うティア。


「証拠は!!」

「う……な、無いですけど……私が本物ですッ!!」

「うわぁ……信用できねぇ……」

「私も、貴方の事信用できないです」

「はぁ!? 俺はしっかりとした団長補佐代理だ!」

「どうでしょうね? 私から見るとただ役職が付いたオマケって感じがしますけど?」

「うっせぇ! 偽物!」

「オマケ!」

「偽物ッ!!」

「オマケッ!!」


 その姿を見た達也は本能的にこっちが本物だと確信した。

 立ち上がり、ロイの肩を掴む。


「ロイ、本物だと思う」

「……何で……?」

 本当に驚いているロイに達也は笑い、

「勘。だけど、一番は……こっちの方が惹かれた」

「惹かれた?」

「ああ、カリスマだな。それにあっちは威厳があった、んだが……威厳がありすぎるんだよ」

「どういう事だ?」

「簡単に言うと、年相応では無い。あれは、元々人を従わせた事のある威厳だ。だけど、こっちは……陛下お聞きしても?」


 ロイに説明してから、ティアに振る。


「はい、どうぞ」

「多分、女王陛下としてはまだ、日が浅いのでは?」

「……1ヵ月です」

「ええ、ですから信用できます」

「いやいや、何で信用できる?」

 思わず突っ込むロイ。

「毒を盛られたのが3ヶ月前で、その間誰が指揮を取る?」

「……ベルクラースさん?」

「それも有りだが……アメリア大公妃が指揮をしていたのでは? ベルクラース殿」

「……君は本当に若者か?」

「ええ、若者ですよ? たーだ、ちょっとこの世界とは異なる存在では有りますけどね」


 その一言でベルクラース達は理解した。


「異世界人」

「正解です」

「納得はするが……それでも君はその若さでそこまで分かっているとは……」

「消去法ですから。ベルクラース殿は自分の騎士は従えるでしょう。しかし、それ以外は貴方の悪いところを聞いている。だからこそ、全体指揮を取れるのは信頼の厚い大公妃って考えただけですよ」

「……その通りです」


 口角を上げながら言う達也に頭を下げるベルクラース。

 それからロイを見つめてから、


「本物だよ、ロイ」

「……確かに、そういう事なら納得か」


 言うと、ベルクラースが頭をあげる。


「でしたら!!」

「ええ、黒曜騎士団は貴方方に協力いたします」


 その一言を聞いたベルクラースは両ひざを床に着け、


「ほんっとうに……本当に、感謝いたします……ッ!!」


 達也に感謝の言葉を送った。

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