25 現代に蘇る遺跡機体 6
達也は虹色に煌めく髪をした女の子と共に工房を覗いていた。
見たことも無い物に達也は、遭難している身だと言う事を忘れ、工房で作られた物に食いついていた。
「おぉおおおおおおおッ!!!! 何だこれ!?」
見慣れぬ形の鉄の塊を見て叫ぶ。
「それはキメイル」
「キメ、イル?」
「……」
達也を見て驚愕する女の子。
「知らないの?」
「いや? 俺の国には無い物だな……」
すると女の子はフレームで使われる魔鉱石を取り出す。
「それは知ってる」
女の子はもう片方の手で何かの鉱石を持ち、達也に見せた。
「これは?」
「……いや、知らない……ミスリル?」
「違う」
「じゃあ、これは何?」
「キメイル」
「そのキメイルって何?」
「……本当に知らないんだ」
驚愕する女の子に戸惑う達也。工房の扉が開けられ、2人扉の方を向く。
「おお、人間の旅人さんや。初めましてこの村の村長、エレクトじゃ」
「初めまして、私は黒曜騎士団団長、新海達也です」
「うむ、事情はエクスカリバーから聞いておる」
やはり、この人達は他の人達とは違う、と達也は確信する。
読み取る力があると言う事が分かった達也は、この森から無事に出れるか、そこが問題であった。
「ふむ、ハーフェンの王は元気かね?」
「え? あ、はい。今は王を息子に譲りまして、隠居していますが」
「ホーッホッホッホッホ! そうか! 王を降りたか! 時が経つのも早いのぉ!」
何故か嬉しそうに笑うエレクトに戸惑う達也。
そんな達也を見たエレクトは、
「エクスカリバー、闇に葬られた
1人で呟くエレクトに何が何だか分からず困惑する達也。
エレクトは達也に近づき、
「エクスカリバーは、現行のフレームでは耐えられない。何故だか分かるかの?」
「……いえ」
「そうか……なら、答えよう。エクスカリバーは魔獣とミスリルで作られているからだ」
「……」
その言葉を聞いた達也は俯き、体を震わせる。
それを見たエレクトは驚愕しすぎて身震いを起こしていると思う。
「その事をもっと詳しくッ!!」
だが、達也は目を輝かせエレクトへ近づく。その勢いに気圧されたエレクトは一歩後ろに下がる。
だが、達也の輝いている瞳を見たエレクトは笑う。
「ホーッホッホッホッホ! 面白い男じゃ!! どこから話そうか?」
「1から10までで!!」
「良かろう。じゃが、ここではあれだ、茶も出せん。ワシの家に来ると良い」
「はいッ!」
元気よく返事をすると、その場で立ち止まっている女の子へ振り返る達也。
「行かないの?」
「……失礼だから」
「そう? 行って一緒に話を聞こう!」
言って女の子手を取ってエレクトの後へ着いていく。
エレクトは振り返ると、チラッと女の子を見てから、
「来るといい」
「……ありがとうございます」
頭を下げエレクトに言うと、それを見たエレクトは微笑んでからエレクトの家に向かうのであった。
家に着くと、お茶の準備をしてから達也と女の子に茶を出す。
「さて、その子から教えて貰っただろうが、今では製法すら失われているキメイル。これは、先ほど言った魔獣とミスリルで作られている」
「そもそも、何故製法が失われたのですか!? あと! 魔獣とミスリルで作られているとは!?」
「うむ、製法が失われているの簡単だ。習得できる者が少ないからだ、教えても習得できる物が少ないのが事実。そして魔獣とミスリルで作られていると言うのは簡単でな。ミスリルと魔獣の甲殻、稀に魔獣の体内に生成されるクリスタルのどちらかを織り交ぜている」
「ほほう! でも普通に織り交ぜるとどうなるのですか!?」
「液状のまま、もしくは黑炭だ。そしてキメイルの製法は困難でな」
「何故でしょうか?」
「先ほど言った通り、習得出来る物が少ないからだ」
「習得すれば作れるのですか?」
「可能だ。だが、キメイルを作るのも一苦労じゃがな」
ホーッホッホッホッホと笑いながらお茶を飲むエレクト。
女の子もお茶を飲むと、エレクトが茶菓子を出しそれを食べる。
「何が一苦労するんですか?」
「形成じゃよ。ただ、イメージするなら誰でも出来る。ただ、キメイルを作ったとしようこのキメイルの中の構造はどうなっている?」
「分かりません」
「こう見えて、空白になっておる。だが、空白だとしても、どれほどの幅の空白が分かっていなければ形成が出来ない。そして、それにする為に自ら手作業で行わなければならない」
「え!? 融解したミスリルを触らなければならないのですか!?」
そんな事すれば間違いなく溶けてなくなる。
ホーッホッホッホッホと笑うエレクト。
「安心すると良い。習得すればマナが其方の手を守ってくれる。さて、そろそろ達也君」
「はい!」
「君にこの製法を伝授させる」
「お願いします!!」
ワクワクしながら見つめているとエレクトが達也の額に指を当てる。
そして目を閉じると、指先から熱が伝わってくるのが分かり、
「ハッ!」
掛け声と共に何かが頭の中に入り込んでくるのが分かる。
エレクトは額から指を離し、達也を見て微笑む。
「おめでとう、やはり君は伝承者であったか」
ずっと気になっていたワード、伝承者とは何なのか。と思う達也は口を開く。
「伝承者って何です?」
「この技術を後世に伝えられる者だ。前に予言があってのう、闇に葬られし12の騎士を操り、慈愛に満ちた国で異界の者現れし時、この村へ訪れるであろう、とな」
「……それが私ですか?」
「私はそう思ったからそうしたまでじゃ」
ホーッホッホッホッホと笑うエレクトに達也は「何てアバウトな……」と思った。
ここで達也は思い出す。使える資格があるなら、使わなければ! と。
「エレクトさん、早速キメイルを作りたいのですが!」
「気が早いのぅーまぁ、良いか。嬢ちゃん、工房に連れて行ってやりなさい、工房長ももういるじゃろう」
「分かりました」
カップを置いて立とうとする女の子に達也は、
「エレクトさん、何でお嬢ちゃんなんですか? 名前で呼ばないのですか?」
「そうか、名前か……お嬢ちゃんは名前は言えるか?」
当たり前の事を聞くエレクトに何故そんな事をと思うが、女の子は首を左右に振る。
分からない、と答えたのだ。まさかの出来事に目を見開き驚愕する達也。
「うむ、そうか。と、言う事なんじゃ団長さん」
「……そんなのダメだ。お礼を言わなきゃいけないのに名前が分からないなんて……そうだ! 俺が名前を仮で付けるよ!」
エレクトと女の子は目を見開き驚愕する。
「エレクトさん、それでも良いですか!?」
「……あ、ああ……だが、それが上手く行くかは分からないぞ?」
「?? まぁ、悪い名前にしなきゃ大丈夫って事ですよね?」
何も難しい事では無いし、ダッサイ名前で無ければ良いだけだ、と思う達也。
女の子をもう一度見るとやはり、特徴的な虹色に輝く髪。
「……虹、レインボーだとダメだ……外国だと呼び方が違うから、一回調べたんだよなぁ……なんだっけ?」
2人は達也を真剣な表情で見つめていると、思い出す。
「思い出した! フランス語が結構良かったんだ! ラルカンシエルだ! そうだな、シエル……! シエル何てどうだ!?」
女の子に聞くと、女の子から心地よい風が吹く。
「うん、悪くない」
「おいおい、悪くないって……まぁ、良いっか。シエル、あの時助けてくれてありがとう」
「ううん、気にしないで。名前ありがとう」
「良いさ、んじゃ! 工房へ行こう!」
「うん」
そう言ってエレクトの家を出る達也とシエル。
まさかの出来事に未だ信じられないエレクトは椅子に座る。
座ってから天井を見上げ、
「……ホーッホッホッホ……これほど嬉しすぎる日が来るとは……!」
涙を流し、歓喜するエレクト。
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