26 現代に蘇る遺跡機体 7


 2人は工房に着くと、来る前は誰もいなかった工房に、3人の男性がミスリルを溶かしていた。


「おう、お前さんが伝承者か」

「はい!」

「んじゃ、手にマナを集中させてみろ」


 達也は手にマナを集中させると、それを見た工房長は驚愕する。


「完全に覆っているし、その膜が薄い……毎日マナのコントロール特訓がさぞ、高度な事をしているだな、お前さん」

「良く分かりましたね!」

「こんなうっすい膜を張れるのに俺は時間が掛かった方だ。それをその歳でやってのけるんだからな。んじゃ、面倒な事は省くぞ、こっちに来な」

「はい!!」


 達也は椅子に座らせられ、目の前に台がありそこに溶けたミスリルが流れてきた。

 目を輝かせ溶けたミスリルを見ていると、


「早く掴まないと固まっちまうぞ?」

「あ、そうですね! マナを集中させて……」


 手にマナを集中させてから溶けたミスリルに触れる。


「熱く、ないッ!!」


 面白くなり、達也は自分のイメージした形、構造を理解した物を作っていく。

 完成させたのはインゴットでそれを見た工房長は目を見開き、達也を見てから、


「お前さん……何者だ?」

「え? 黒曜騎士団団長です」

「ハーッハッハッハッハ!! コイツぁ面白れぇ! 今度はクリスタルとミスリルを織り交ぜて織り交ぜた物でやるぞ!!」

「はい!!」


 ミスリルとクリスタルを織り交ぜたキメイルを製作をしようとしたが、流石の達也でも形成する事が出来なかった。

 そしてその日を終え、達也はエレクトに用意された家で休み。

 次の日、また工房に通いミスリルと魔獣の素材で織り交ぜて形成していく。

 達也は現行のフレームではエクスカリバーの動きに耐えられないが、このキメイルならば耐えられるとエレクトから知り、一日でも早く愛機であるエクスカリバーを修復させたかった。


 何より、達也の教わっている技術で応急で作っているフレームでは無く。

 本格的な物を作れるようになる為、達也は学んだ。

 本来の性能を引き出せないでいるエクスカリバーが今、本来の性能で復活しようとしている。


 達也が村に来てから工房に通い続け、1ヵ月が経った。

 達也は驚異的な吸収力と情熱で、キメイルの製法を全て学びきったのだ。

 そんな達也にエレクト達はエクスカリバー予め回収しており、更に応急ではあるが稼働できる所まで直していた。

 この日、達也はエレクトに呼ばれていた。


「おはようございます、エレクトさん」

「うむ、達也君。朗報だ」

「はい?」

「どうやら、君のお仲間がこの近くにきているそうだ」

「……!! なるほど!」


 達也はエレクトに頭を下げ、この1ヵ月寝床と食事、あらゆる面でお世話になった人へ感謝の気持ちを込める。


「本当にありがとうございました」

「ホーッホッホッホ。良いんじゃ、君はこの村に新しい風を運んでくれた。ワシ等はそれだけで君に感謝せなばならん位だ」

「そんな、私は――」

「――良いんじゃ、達也君。この1ヵ月、とても楽しかった……また、いずれ生きていればまみえるだろう。さぁ! 行くと良い!」

「はい!」


 それから村の門の手前に待機しているエクスカリバーに向かう為、村の中央を抜けて行くと村人たちから別れの言葉が送られた。


「またな! 達也!」

「元気でね、達也ちゃん!」

「バイバーイ!」

「また、工房に顔出せよ!」


 手を振り、別れをしていくとエクスカリバーの陰からシエルが姿を現した。


「シエル、ありがとうな」

「ううん、気にしないで。むしろ私の方が感謝してる、この名前……大切にする」

「おう! んじゃ、またな!」


 達也はエアスラスタで操縦席に乗り込み、エクスカリバーを起動させる。


「達也ッ!!」


 エクスカリバーの映像からシエルが映り、無表情だったシエルが、


「またね……!」


 優しく微笑んだ。それを見た達也は笑い、


「ああ! またな!」


 シエルと村人たちに別れを告げた。

 それから森を歩き、近くに来ているであろう黒曜騎士団達を探すが、一向に見つかる気配はない。

 どこに居るのか、と思うと突如横から大型魔獣に襲われる。


「タ、タンマな! まだ、戦えないからさ!」


 操縦席で言うが魔獣には伝わらず、魔獣はエクスカリバーの腕に噛みついた瞬間、悲鳴を上げるように鳴いた。

 そのままエクスカリバーから離れると、何が起きたのかと思い噛まれた腕を見ると、


「傷が無い……てか、アイツの牙折れてるし……流石、ミスリルに魔獣の素材を使ってるだけあるな!」


 だが、それだけでは決定打にならず困っていると、魔獣に魔撃が放たれた。

 魔撃が放たれた方を見ると、達也は聞きなれた音と共にその姿を現した。


「……グレイプニール……完成させたのか」


 戦術機動拠点グレイプニール、整備、補給が出来この地域で超弩級魔獣と長期戦になっても直ぐに対応出来る様に作られたホバー型、地上艦。


『もしかして、達也!?』


 聞きなれた声の主、セラに呼ばれるとエクスカリバーは手を上げ、


「ああ、久しぶり。セラ」


 セラに挨拶を送るとグレイプニールからヴァルキスが現れた。


「達也ッ!!」


 ヴァルキスに支えられながらグレイプニールの格納庫に収容後、操縦席のハッチを開けられる。

 団長の姿を見た団員達は涙を流すものと歓喜で騒ぐ者達で囲まれ、お祭り騒ぎとなった。

 格納庫に着いたセラは達也の姿を見て、思わず涙を流しながら達也に抱き着いた。


「あぁあああああッ!!!!」


 達也の胸で泣くセラを抱きしめてから、優しく頭を撫で、


「ただいま……」


  微笑みながらの耳元で囁いた。

 その後、グレイプニールで森を抜けカイル達の待つ王都へ帰還した。


「達也! 本当に生きているのだな……!」

「達也、良かったよ!」

「本当ね……!」

「義兄さん、ジーク先輩にレティ先輩、ご心配おかけしました」


 3人に囲まれている間、セラはずっと達也を抱きしめたままである。

 そんな姿を見たカイル達は変わらぬ光景に思わず笑う。

 やっと戻ってきた日常。しかし、オルシェンは気になっていた事が一つ。


「達也、其方の働き……この国ハーフェンの最高戦力者として認める。だが、あの魔獣の森で約1ヵ月、どう生き延びた? とてもじゃないが、其方が生身でも猛者と言う事は知っておるが、大型魔獣など多くの魔獣がいる中、1ヵ月も生きていられるとは信じがたいのだ」

「その話は、申し訳ございません後日でも宜しいでしょうか?」


 オルシェンの前だと言うのにセラは人目も気にせず、ずっと達也に抱き着いたままである。

 それを見たオルシェンは鼻で笑ってから、


「では、後日としよう。ゆっくり休むと良い、英雄に部屋の用意をしてやれ」


 騎士の一人に言うと、返事をしてから部屋の手配を済ませる。

 既に日は落ち、部屋に着いてからやっと開放された。


「……ごめんね」

「何が?」

「私が、原因なんだよ?」

「えっと、何で?」


 達也からすれば何故セラのせいなのか全く理解が出来ない。

 反面、セラは自分のせいだと思って達也の返答が良く分かっていない。


「私が、ブースターにリミッターを掛けたから……」

「あー! それか! いや、セラ俺はそれで助けられたんだ」

「ううん、違うよ……リミッターが掛かってなかったら避けれた……」

「違うよ、セラ。リミッターが掛かって無かったら、機体が壊れてその場で止まってた。機体が壊れてたら……あの、ボワー・トリドンの爆発に耐えられなかったんだ」

「……本当?」


 涙目で達也に上目使いをしながら聞くセラ。


「あぁ、本当だ。だから、ありがとうセラ」

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