42 王位真偽戦争Ⅱ 5


 ハーフェンに申請を送った達也。

 それを目にしたクレスタは、陰影騎士団いんえいきしだんに指示を出しておく。


「……どうやら、きな臭さが当たった様だな」


 窓からサームクェイドの方面を皆がら呟く。

 

 ―――――――――


 サームクェイドではデウンの隣の街、エルトーサで激闘が繰り広げられていた。

 エルトーサは西門、東門があり防衛として外壁が立てられている。

 エクスカリバーに搭乗する達也は単騎で西門。

 ロイ、カイル、レティにベルクラースとムルジナで東門。


 東門ではヴァルキスがジルフレアを連れ、後続としてエクトールを配備。

 しかし反サームクェイドには新しい兵器が導入されている。

 急造で仕上げたエクトールの改良型、エクサリアである。

 中身を束型魔鉱繊維たばがたまこうせんいに差し替え、魔撃を肩に装備させた魔装騎兵フレーム・ストライカーである。


 だが、配備としてはまだ数が少なく、隊長クラスの物にしか与えられていない。

 それでも、敵のエンキドゥとまともに戦える様にまで仕上がっている。

 エクサリアに搭乗する騎士達は叫ぶ。


「これなら勝てるッ!!」


 士気が上がり、エンキドゥを押していくエクサリア。

 隊長不在の紅蓮中隊は紺碧こんぺき中隊、カイルの指揮下にいた。


「相手の侵攻は紺碧中隊で請け負う! 紅蓮中隊はそれを押し返してくれ!!」

「「「了解ッ!!」」」

「紺碧中隊! 我らは守りに長けている者達だッ!!!! 1機たりともここを通すなッ!!」

「「「了解ッ!!」」」


 カイルの指示で紅蓮中隊が切り込み、敵が流れ込まない様に紺碧中隊が抑える。

 1機のエンキドゥがカイルの魔装騎兵フレーム・ストライカーへハンマーを振り下ろす。

 しかし、エンキドゥのハンマーは、サブアームを改良したシールドアームに取りに寄って防がれた

 出力に特化しているエンキドゥの攻撃を正面から防いだが、カイルの魔装騎兵フレーム・ストライカーはその場から下がる事は無い。


「こ、のぉおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」


 エンキドゥがハンマーを押し付けるが下がる気配はない。

 ハンマーをもう一度振り、今度こそ大打撃を与えようとした。

 だが、虚しくもシールドアームに寄って防がれ、もう片方のシールドアームで突き返される。


「舐められた物だ。このアルクヴェイドの盾!! 簡単に貫けると思わない事だッ!!」

「クソがああああアアアアアアアッ!!!!」


 エンキドゥはヤケになり、ハンマーを振りかざしながら近づいてくる。

 ハンマーをシールドアームで受け止めてから、長剣でエンキドゥを切り裂いた。

 切り裂かれたエンキドゥから剝れたフレームが落ち地面をえぐり、そのまま倒れる。

 土煙が上がり、アルクヴェイドの目が光る。


 アルクヴェイドは剣をエンキドゥへ向け、


「我が盾はこの様な事では折れぬ!! その意思は紺碧中隊にもあるッ!! 敵を恐れるな、我らは最強の盾だッ!!!!」

「「「オォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」」」


 カイルの言葉に紺碧中隊は士気を上げ、雄たけびを上げた。

 そしてエンキドゥを押し返す。


「紅蓮中隊ッ!! 突撃ッ!!!!」

「「「ウォオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」」」


 押し返したエンキドゥへ紅蓮中隊が突撃を行う。

 カイル達に向かって来たエンキドゥ達は総崩れし、次々に撃破されて行った。

 だが、次のエンキドゥの中隊がカイル達に押し寄せる。

 押し寄せて来たエンキドゥの頭部がはじけ飛ぶ。


「良い腕だ、レティ!」


 通信をレティへ送るカイル。

 スコープを覗いたまま、


「次の奴らの頭飛ばすだけ飛ばすから、残ったやつらはお願いね」


 そう言ってトリガーを引き、圧縮された魔撃を放ち、エンキドゥの頭部を吹き飛ばした。

 レティは自身の魔装騎兵フレーム・ストライカーへ、心の中で称賛を送る。


「良い魔装騎兵フレーム・ストライカーよ、達也! ローゲン改め、ローディグス!!」


 スナイパーカノンで圧縮された魔撃をエンキドゥの頭部へ放ち、次々に倒していく。

 ローディグスは支援としての役割を与えられ、その際援護として狙撃を達也は採用した。

 最初はスナイパーカノンの操作性に苦を強いられていたが、今となっては的の小さい物を簡単に射貫く程。


紫紺しこん中隊! 魔撃で後方支援!! 紅蓮中隊と紺碧中隊を援護するよッ!!」

「「「了解!!」」」


 ロイ、カイル、レティの3人を筆頭にジンガーム軍とサームクェイド軍を押し返していた。

 しかし、ある程度の戦力をエルトーサに残している為、中々戦線を上げる事が難しい現状。

 だが、ジンガーム軍とサームクェイド軍は後に、相手をするなら東門の方が良かったと語る事になる。

 理由は簡単であった。東門は戦力を集中していた反サームクェイド。

 その反面、西門ではたった1機の魔装騎兵フレーム・ストライカーのみ。


 この時、ジンガーム軍とサームクェイド軍は西門は捨てたと考え、東門に戦力を集中していたのだ。


 これが、ジンガーム軍とサームクェイド軍の大きな間違いへと繋がる。


 そんな事、誰が想像しただろうか。普通はあり得ないのだ、普通は。


 だが、西門にはハーフェン最強の騎士、新海達也がいた。


「さて、作戦通りなら……東門へ戦力を分けるだろうな」


 



 

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