12 天才と新型機 3

 

 新型2機の製作に携わっていく達也。

 カイル達は大破した魔装騎兵フレーム・ストライカーを直すと同時に、


「俺達の機体を改修?」

「はい、どうでしょう?」

「達也、変なのにはしないでくれよ?」

「いえ、そこはしません。皆さんのコプセントを元に特化させ、新しくさせて頂きます」

「なら、頼む」


 達也達は新型2機、機体改修の同時進行を行う。

 しかし、時は待ってはくれない。好機を見て、一番損傷の酷いレティの魔装騎兵フレーム・ストライカーは改修はするものの、奪取されたセレスロアで使った物を使い、直すぐらいしか出来なかった。

 それに比べ、カイルのアーヴェントとジークのレクサスは被害自体は酷くは無かったのだ。


 達也達は魔装騎兵フレーム・ストライカーの改修を2機に変更、エクスカリバーは関節部の交換と新しい部品に変えてフレームを付け替えるだけで終わる。

 新型の1つは達也とセラの2人で直接指示を行いながら設計していく。

 そんな中、様子を見に来たカイルとジーク。


「やぁ、達也」

「あ、どうも義兄さんにジーク先輩」

「ああ、それにしても達也、この魔装騎兵フレーム・ストライカーは本当に浮くのか?」

「さぁ?」


 達也のまさかの発言に2人は転びそうになる。


「分からないまま作っているのか!?」

「いえ、理論上は浮きますよ。ただ、それを実現となると……分かりません! だからこそ、出来るかやってみたいのです!!」


 突如熱くなる達也に気圧されるが、嘆息を付く2人。

 だが、形にはなっては来ていると分かる2人であった。

 インナーフレームが出来、そこに魔鉱繊維まこうせんいを装着していく。

 魔鉱繊維とはいわゆる筋肉であり、マナタンクから流れるマナに反応して起動し、その上にフレーム装甲を装着させる事で耐久は勿論、硬度も保たれる魔装騎兵フレーム・ストライカーに不可欠な部品である。


「因みに、この魔装騎兵フレーム・ストライカーの名前は決まっているのか?」

「はい、ジルフートと。まぁ、試作段階なので……正式に決まった時はまた」

「良い名前じゃないか」

「ありがとうございます、先輩」


 ここで何故、砦に来たのかと思い達也は口を開いた。


「ところで、何故砦に?」

「ああ、魔装騎兵フレーム・ストライカーがどうなったか見たくてね」

「そうですか! なるほど、でもまだ改修中ですよ?」

「それでも何か手伝えることがあるなら、と2人で来たんだ」


 カイルの発言を聞いた達也のロボ魂に火を着けた。


「なるほど!! 2人は我が愛機の為に汗水を流すと!! 良いですねぇ! 良いですねぇ!! さぁ! 早速行きましょう!!」


 1人で熱くなっていた所、首根っこを旦那に掴まれる。


「テメェはここに居なきゃ作業が進まねぇだろうがッ!!」

「あ、そうですね! すみません、俺はここに残らなきゃならないので、残念ですが……お2人で機体の方へ……」

「あ、あぁ……」

「そ、それじゃ……」


 少し引きつりながら言う2人はそのまま自分の魔装騎兵フレーム・ストライカーある元へ向かった。

 2人を見送ってから、旦那の方へ視線を向けてから近づき、


「旦那」

「何だ?」

「足の方はどうですか?」

「ああ、少し手こずってるが……小娘がいるから大丈夫だ」


 一方その頃、達也の設計したジルフートの足の製作に取り掛かっているセラ。


「ブースターを吹かし続けるだけじゃなく、魔装騎兵フレーム・ストライカーを浮かすってなると……どうしても、マナが直ぐに枯渇する……」


 一番の問題と直面していた。エクスカリバーの使っているブースターを修理した後、構造を調べた結果、ごく単純で点火部分は炎の魔法の刻まれたエンブレムがあり、マナを流す事で点火し、空気を吸引してそれを勢い良く点火した所へ流すことで飛ぶ事が可能となっていた。

 そこで爆発的な推進力が生まれる、がその反面マナの消費量がバカにならない。


「ブースターを減らす? いや、そんな事をしたらそもそも浮かない……」


 この問題をどうにか解消しなきゃいけない、そう思うセラ。

 マナタンクを増やせば確かに稼働時間は今よりは大幅に増える。

 だが、それでは重量が増して更に重くなる一方。


「出力の変更? いや、それだと更にマナ消費が促進するだけ……」


 考えがまとまらなくなり、実験用のブースターを切り、


「みんなーいったん休憩しましょうー?」

「「「はーい」」」


 セラの開発チームは大半が女性で、中には男性も混じっている。

 混じっている理由は二つ、


「あ、黒ずんでる」

「え? どこ?」

「もう、拭いてあげる……あ、ごめん。広がった」

「えぇー洗うの面倒なんだぞー」

「ごめーん」


 つき合っている者、


「あらん、セラちゃん困ってるの?」

「お姉さんに話してみなさい?」

「相談なら乗るわよ」


 心が女性の男性達だ。

 1つため息を付いてから、


「あぁ……達也に抱き着きたい……」


 セラは惚れ込んでから達也にくっつく事が多く、悲しい時や疲れた時は達也に抱き着いていた。

 怒った時はノートに開発の設計や、誰も居ない場所で大声をあげて発散した後に、達也に抱き着いていたのだ。

 当時達也は執事として働いていたが、セラを変えた事が嬉しく、誰にも優しい達也にオーフェンとエレノアは養子にすると決めた。


 そして結婚相手をオーフェンが探している時はエレノアが断固反対し、それを押し切りエレノアとセラの中では結婚相手は達也と決めているのだ。

 それを悟ったオーフェンは全ての結婚相手を探す事止めたのだった。

 因みにこの事を知らないのは達也だけである。


「達也に頭撫でられたい……」

「あら、ネガティブモードね」

「それなら、セラちゃん飛んでいけば良いじゃない」

「そうよ、ビュンって飛んでいけば早いわよ」


 エアスラストの事だろう、簡単に飛んではいるがセラは達也に後に付いて行きたくて、必死に練習して扱えるようになった物だ。


「はぁ……あれ簡単に飛べる訳じゃ――ッ!!」


 今、セラの頭の中は瞬時に浮かすことが可能な方法を見つけ、立ち上がる。


「……そうよ、ブースターにこだわる必要は無いのよ……! 浮いて高速であればいい……今まで使って来たじゃない……!」

 すると、セラは椅子の近くに置いてある白紙の紙を取り出して設計図を書いていく。

 そんな行動に整備士達が集まってくると、


「出来たッ!!!! これなら浮く! 必ず浮くッ!! 一応達也に相談してみよう!!」


  設計図を完成させてから、エアスラストで達也の元へ飛んで行った。

 直ぐに達也へ見せると、目を丸くしながら設計図をじっくりと見ている。


「セラ、これ最ッ高だ!!」


 満面の笑みと同時に頭を撫でられたセラは心から嬉しくなる。


 私、もっと頑張れるわ……!! 思い心に火が付く。


 戻った後、設計の変更を仲間に知らせてから再度設計を開始。


 そして、新型設計から4ヶ月が経った。

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