13 天才と新型機 4
ガーヴェンドは回収され履帯の調整を行う。
もう1機の新機体だが、こっちの方が達也達は手こずっていた。
セラの機転の御陰でブースター浮くよりも遥かに燃費が良くはなった。
だが、問題は
この超重量を浮かす事が出来なかった。
問題解決の為、砦の広場に招集して意見の意見を出し合う事にした。
「と言っても、達也。私達は意見も何も」
「分からないからね」
「そうね、意見の出しようがないわ」
早速まともな意見が飛び出た瞬間である。
確かにカイル、ジークにレティは構造的な部分はからっきしである。
そこに何故達也は呼んだのか、答えは単純であった。
「そこは分かっています」
「じゃあ何で先輩たちを呼んだんだ?」
「ロイ、これは騎士団の問題だから、他をのけ者に出来ないんだ、いや……しちゃダメだ」
「達也……」
達也の言葉にその場に居た全員が考え方を改める。
1人図面と睨めっこしながら考えている達也の姿を皆が支えようと思う。
「小僧、ブースターじゃダメなのか?」
「いえ、ブースターですとマナの燃費が……」
「なら、達也。ブースターとその……新しい浮くやつ何て言うんだ?」
話の骨が折れるが、ロイの言っている事は正しい。呼ぶにしても名前が無ければ呼び辛いのだ。
「セラが付けてくれ」
「んー……エアブロウ何てどう?」
「エアスラストをもじった感じか、良いと思う。よし、エアブロウに決定だ!」
浮遊装置エアブロウという名称が決まった所で、
「さっきの話だけど、エアブロウとブースターの平衡は?」
「考えたけど、それだと出力が足りなくてね……」
全員が悩みここに話し合いながら進めていく中、ジークが「ふぅむ」と唸る。
「どうした、ジーク」
「そもそも、達也のエクスカリバーは何故飛べる?」
「それはブースターが付いているからだろう?」
「いや、そうじゃない。そもそもブースターの消費かつ乗りこなせる者がいないから廃れる訳だ」
「そうね」
ジークの話にカイル、レティが同意する。
「だが、エクスカリバーはブースターの消費は実際どうなっている? 私には、どう見ても直ぐに枯渇すると思うが、実際はそうではない」
徐々に絡まった紐が解かれていく様に、ジークは話を続ける。
その話に皆が耳を傾け始めた。
「と、なると私の今立てた仮説だと……エクスカリバーのマナタンクが大きい訳では無く、心臓部のマナリアクターの性能が高い、と思ったんだ、どうだろう?」
言い切ると同時に全員から称賛の声がジークへ送られる。
「そうだよ!」
「ジークの言う通りだ!」
「何で気が付かなかったんだ!!」
すると、整備士達は倉庫へ走り去る。
達也と、セラがジークへ近づく。
「ジーク先輩、ありがとうございます」
「おいおい、止してくれ。私はそんな大した事はしてない」
「いえ、ジーク先輩がいたからこそ辿り着いたんです」
「そ、そうかね……? だッ……だが、それは君が私達をのけ者にしなかったからだ」
「――ッ! はい!」
「行きたまえ、君の居るべき所はあそこだろう?」
ジークは倉庫へ指を差し、
「ありがとうございます!」
達也を向かわせた。それに続いてセラがジークへ、
「ありがとう」
称賛の言葉を送り達也の後を追いかけた。
そんなジークへカイルが肩に手を置く、
「珍しいな」
「……あんな事言われたら、放っておけないだろう」
あんな事とは、達也の言ったのけ者の事だろう、とカイルは思う。
「ああ……これなら、任せても良いかもな」
「そうね」
「確かに」
3人は達也の背を見送りながら秘めた思いを胸に一旦しまった。
その後、エクスカリバーを調べると分かったことがある。
エクスカリバーのマナリアクターの出力が今現状、セレスロアの出力を遥かに上回っており、何か隠されているのでは無いかと思った整備士、セラ達は少し落ち込む。
「結局振り出しって事かよ、クソ」
「そうね……」
振り出しと考えると、多少心に来るが気持ちを切り替えてから達也を呼ぼうとする。
「達也ー」
達也を呼ぶが一切反応をしない達也にショックを受けるセラ。
足取りは鈍くなり、涙が出そうになるが、それでも近くで呼ぼうと思い近くへ寄る。
「達――」
「――そもそも、マナリアクターに起動するための演算式魔術回路、そこは分かる……だが、エクスカリバーのリアクター自体は大きくも無く、他と比べても大差は無い……なら、どうすれば出力が上がる? いっそリアクターから作るか? いや、そんな時間は無いし、リアクターの改造? あれはミスリル加工な筈、固すぎて加工すらできないんだよな……」
「達……也?」
「リアクターの性能が違い過ぎる……あの一つであそこまでの出力が出ると分かれば、それだけでも特はしたが……ん? 待て……1つであの出力?」
ブツブツと独り言が終わると同時にセラの方へ向く達也。
「うおッ!? ってセラか! 良かった!!」
「え? え? え?」
肩を掴まれ、真剣な眼差しで見つめられ、
「これなら問題が解消される筈だッ!!」
達也の言葉に再度整備士達が集まった。
その中、旦那が達也が名案があると聞きつけ現れる。
「良い案が浮かんだそうだな」
「ええ、1じゃ無理なんです」
「は?」
突如意味の分からない話をし始める達也に周りはポカンと口を開く。
「だから、2つにすれば間違いなく出力は上がります。それに他の部分も余力が出来ますから、これなら行けるでしょう!」
「いや、だから何がだよッ!!」
「リアクターです」
「は?」
「リアクターを2基にすれば良いんですッ!!」
「「「はぁあああああああああああ!?!?」」」
まさかの発言に周りが叫ぶ。だが、旦那とセラだけは叫ばず、考えをまとめていた。
「いやいや! そんなの無理だろ!」
「そうだ! 力が有り余りすぎて魔鉱繊維が千切れるって!」
「機体が持たないぞ!!」
「……いや、上手くいくかもしれん」
反対の声の中、旦那が言うと整備士達が目を丸くした。
「ええ、多分可能……な筈」
整備士達がセラの発言に顔を合わす。
いまいち理解が出来ていない整備士達に達也が一歩前に出る。
「そもそもの問題は出力が足りなくてマナの消費が激しい且つ、浮く、と言う事が出来ないのが問題です。けど、これはリアクター1つで行った場合」
達也の言葉に整備士達がハッと気が付く。
「リアクター2つなら、浮くための出力確保に消費マナは多少は緩和されるでしょうけど、これはまだどの程度消費するのか分からないので、まずはマナリアクターを2基積んでから考えて見ませんか?」
達也の発言に整備士達は声を上げ、直ぐにリアクターの取り付けにかかる。
しかし、リアクターを1基しか積む予定の無かったジルフートにもう1基積むとなると、構造設計から見直しをしなければ無かった。
ここで旦那とセラが、どうせならもう1基の新型にも取り付けると言い出す。
確かにガーヴェンドは陸上を高速で走るうえ、キャリーに乗せた
その為、リアクターを2基積む事でその問題が緩和されると考えたのだ。
整備士達は深いため息を1つついてから新型機へ向かう。
嘆いても仕方ないのだ、決まってしまったことだから、と諦める。
時間は待ってはくれないので取り掛かり、胴体の寸法を変更後、直ぐに加工を開始した。
加工をしながらリアクターから全身へ魔素を送る為のケーブルを増設していく。
試行錯誤の日々が続き2ヶ月、残り3ヶ月。
そしてこの日、初のジルフートの稼働テストが行われた。
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