9 転移後編 8
王都ハーフェンでは義父オーキンスと達也が謁見の間にてオルシェンと対面していた。
「よくぞ、参った新海達也よ」
膝を着き、頭を下げながら、
「はい、こちらもお会い出来て光栄でございます、陛下」
陛下は予め達也の事を調べて置いた。達也がこの世界の者では無く、召喚された存在だと。
この世界の作法など知らないかと思っていたが、この世界の者と変わらぬ事が分かり、多少の安心感を得た。
「うむ、率直に言おう、今回のストーンドラゴン討伐の褒賞を与えよう。其方の欲しい物を口にしてみせよ」
……これはあれか? 試されていると考えるべきだな……なら率直に、
「この国の天才技術者、セイラム・イクシフォスターにいる騎士団があれば、そこに入団させては貰えませんか?」
その名を出した瞬間辺りが騒がしくなる。
「貴様ッ!! 我が国の最大の技術者に会って何をするつもりだ!!」
デウスはまさかの発言に怒りを露わにした。
「申し訳ありません……! デウス公爵、言い聞かせて置きますゆえ、何卒何卒……!」
オーキンスは達也の裾を掴み「頼む、これ以上は何も言わないでくれ……!」と思う。
だが、オーキンスの思いは通じず、達也の目は輝きに満ちていた。
「良い、デウス公爵。何故、その騎士団に入団したい? その理由を聞かせよ」
「はい、自分の夢を叶えられる場所だと知ったからです!」
目を輝かせながら言う達也に、オルシェンは自分に似たところがあると感じ、
「……フハハハ! ハーッハッハッハ!!」
大笑いしてから達也を視線を向け、
「良かろう! その願い聞き届けた!」
「有難き幸せッ!」
膝を曲げ、頭を下げる達也であった。
その後、達也達が帰りその結果を義母さんに報告する事になった。
「あら! それは良いことですね!」
「私は寿命が縮まったがな……」
心底疲れたオーフェンは顔を手で覆い、やつれている。
その反面エレノアは心の底から達也へ祝福していた。
だが、カイルとセラだけは口を開けて驚愕している。
「本当に志願したのか? 達也……?」
「はい」
「はぁ……」
カイルが何故か片手を頭に着けて嘆息を一つ付いた。
何故、嘆息を付いたのか分からない達也であった。
「達也、何で志願したの?」
「セイラム・イクシフォスターに会いたいからだ」
「会って何をするの?」
「共に最高の
「ふーん」
何故か冷たいセラに違和感を覚える達也。
「セラ、俺なんかした?」
「ううん、違うの気にしないで」
いつものセラなら兵器と
もしかしたら、体調が悪いのかもしれないと思った。
「それで達也? いつその騎士団に入団するの?」
「それが明日らしいです」
「あらまぁ! 明日頑張って来てね!」
「はい、行ってきます!」
そしてその日を終える事となった。
―――――――――
王都アーヴァン、陛下と公爵と隠密を得意とする騎士団が集まっていた。
集まったのは他でも無い、今回の新型奪取事件と超弩級魔獣の出現。
余りにもタイミングが良すぎるため、調べた結果……。
「やはり、誰かの仕業と言う事かデウス公爵」
「はい、陛下……陰影騎士団の調査によると、ストーンドラゴンの子供を攫い、親をここまで呼び寄せたという事で、それだけでなく禁忌とされている魔獣へ与えると興奮、空腹状態へ陥らせるドラッグ・カラミティの痕跡も」
「……一応聞くがこの国の者か?」
「いえ、この国でしたら陰影騎士団が気づきます故……他国の仕業かと」
「うーむ……近々、何か良くない事が起こりそうだ」
「はい……そう思われます。時に陛下」
「どうした?」
気になっていた事があり、デウスはオルシェンに問う。
「なぜ、新海達也を我が国の最高技術者の元へ?」
「フッ……分からぬか?」
ニカッと笑いながら逆に聞かれたデウスは頭を下げる。
「心情を察し出来ず、私目には陛下が何を考えているか見当もつきません」
「そうか、デウス公爵よ。我が国は今新しい風が吹きかけている」
「……はぁ」
「天才技術者セイラム・イクシフォスターと、あの暗黒時代に12機のみ作られ、その1機、呪われた
「……率直に申し上げますと、早くも寿命が縮みそうです」
「ハッハッハッハ! ワシはどんな時代がやってくるか楽しみだ。さて、デウス公爵引き続き賊の足取りを頼む」
「ハッ……!」
そして扉の前に配置されていた陰影騎士団が姿を消した。
―――――――――
この日達也は国で天才技術者セイラム・イクシフォスターのいる砦に向かっていた。
クリスタから少しした所に実は砦があり、山頂の陰に砦があり近づかなければ気づける筈がない場所に存在していた。
まさかの学生をしながら、騎士団へ入団するとは思わなかった達也。
早く天才技術者セイラム・イクシフォスターへ会いたいものだッ!! と心の中で思う。
馬車に揺られて1時間、やっと着いた砦すると砦の前に紺色ショートの凛々しい女性が待機している。
こちらを見ると、ゆっくり近づいてきた。
「初めまして、貴方が新海達也様ですね。私はテレサ・クーラです、テレサとお呼びください」
「はい! よろしくお願いしますテレサさん」
「入団おめでとうございます。さっそくセイラム・イクシフォスターが貴方に会いたがっています」
「お願いします!」
頭を下げてお願いをして、砦に入り付いて行くと魔装騎兵《フレーム・ストライカー以上の木製の門が一つあり、ここで整備する物だと確信した達也は、
「すみません、ここには
「そうですね」
「見てもよろしいですか!?」
「大変、申し訳ございません。今はセイラム・イクシフォスターとの対面からでよろしいですか?」
「いえ! むしろすみません……先にセイラム・イクシフォスターさんに会いましょう!」
そして階段を上がり、扉の前に立って3回ノックをしてから、
「テレサです、新海達也様をお連れしました」
「どうぞ」
扉の向こうから許可が出され、興奮を抑えながら話せるかどうか心配になってくる達也。
深呼吸を一度行ってから、
「新海達也です! 失礼します!」
扉を開け天才技術者セイラム・イクシフォスターと対面した。
「……」
「どうしたんですか?」
「……」
正直どう反応すれば良いのか分からない、ここまで驚いたのは召喚以来であるからだ。
何も言えずただ驚愕する達也は思っていた。
「もう、達也ったら……そうだね。オッホン、初めまして新海達也君、私はセイラム・イクシフォスターだ」
「いや、セラじゃん」
そう部屋に居たのはセイラム・イクシフォスターでは無く、セラであった。
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