天才と新型機編

10 天才と新型機 1


 意味が分からず混乱する達也。


「え? セイラム・イクシフォスター?」

「うん」

「この事は義父さんや義母さんは?」

「お母様は知っています」

「わぁお……」


 まさかの事実に驚き、その言葉しか出てこない。

 そんな達也の反応が面白かったのか、笑い始めるセラ。


「アハハハハハ! ホント達也ったらホント面白い!」

「いやぁ……これは悪質だなぁ……」

「騙された? 男だと思った?」

「……男だと思ったよ」

「いえーい、やったね!」


 はしゃぐセラに思わず近くにあるソファーに座る。

 座ると、セラが予め用意されていたのだろう紅茶を注いでテーブルに出してくれた。


「あ、ありがとう」

「ううん、気にしないで。あー笑った笑った」


 ご満悦なセラに少しだけ夢を壊された達也であった。

 だが、よく考えると確かにセラがセイラム・イクシフォスターだと言われても違和感が無い事があった。

 まず、新型の事について当日の機体名の飾られた場所に行かないと分からないのに、セラが普通に答えていた。

 そして遺跡機体の在り処に、整備、システムを立ち上げ……そう考えると違和感が無い。


「で、セラ」

「ん? あーその前に、みんなーもういいよー」


 みんな? 何のことだ? と思い、振り返ると扉が開かれ、


「達也」

「どうも、達也君」

「やぁ達也君」

「うす、達也」


 カイル、ジーク、レティにロイという知った顔が部屋に入ってきた。

 もう何が何だか分からず、思わず硬直した。


「まぁ、こうなるよな」


 苦笑いのロイにフフフと笑うカイルが近づき、


「順を追って話そう」


 カイル、ジーク、レティ、ロイはセラの持つ騎士団に2年前から入団していたらしい。

 何故、達也に話さなかったのか、陛下から国家機密とされていたからだ。

 事はセラの試作で作った物が魔装騎兵フレーム・ストライカー運用できるとカイルが気づき、学園から陛下に連絡をして成果を見て、新型と認定されたことから。

 そしてテストパイロットでカイル、ジーク、レティの3人が選ばれ、そのまま騎士団へ入団。陛下が新たな騎士団を設立を考えていた所、丁度良い為作られた。


 ロイの入団はたまたま、セラのノート拾い中身を見て、天才技術者セイラム・イクシフォスターとバレた。

 ロイがセラに面白い騎士団そうだからと言う理由で入団の希望を出した。

 しかし騎士団であるが故、面白半分で入るべきでは無いと一度断った。

 だが、ロイは資金で困っているとノートに書いてあったを思い出し、父親の侯爵に相談した所許可が下りて、それだけの決意を見せ入団。

 いずれは達也も入団させる予定だったが、予定が早まっただけらしい。


「……なるほどな」

「悪い達也」

「まぁ、理解したから良いよ。それでこの騎士団の名前は?」

 達也が聞くと全員が苦笑いで誰も答えようとしなかった。


 まさか、と思うが、そんな事は無いと思い込んでから、


「……まさか決まってないとか?」

「「「……」」」


 それぞれが目を反らすなり、バラバラの行動を示した。

 思いため息が達也から出る。


「い、いやね、仮設立なの! だから、陛下からも正式な名前は後程与えるってなってるから、さ!」

「……それなら仕方ないか」

「うん。でねでね、達也」

「ん?」


 目を輝かせながら近寄ってくるセラ。

 何かと思うが、そんな姿のセラは一つしかない。と思い、達也はノートを取り出す。


「これだろ?」

「それもそうだけど……達也はセイラム・イクシフォスターと共に作りたいって言ってたからさ……」

 顔を赤らめながら言うセラに咳払いを達也がする。

「そんな奴は居ない。とりあえず、教えるよ」

「やったーッ!! 実は陛下から新たな新型を見せてみせよって言われてるからさー」

「「「え??」」」


 テヘヘと軽く言うセラにそんな話を聞いてない4人は驚愕した。

 4人を見てから首を傾げるセラ。


「あれ、言わなかったっけ?」

「言ってない!」

「あー……ごめんなさい」


 軽く言うセラに思わず呆れる4人。

 すると、ロイが扉に近づく、


「旦那呼んでくるよ」

「あぁ、頼むロイ……はぁ……」


 旦那とは何だろうと思っていると、


「んだとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!」


 外から物凄い大きな声が響き渡り、こちらへ走ってくる音が聞こえる。

 そして、


「おい!! 小娘ッ!! ロイの話は本当か!!」

「あー……うん」


 テヘヘと頭を掻きながら軽く言う小柄の男性。

 よく見るとドワーフで見た目で判断すると30代の男性がセラに近づき、頭を拳で挟みぐりぐりと力を加えた。


「いたああああああああああああああい!! ごめんなさい! ごめんなさい!!」


 フンッと一つ言ってから達也をギロリと睨むように見た。


「ほぅ、お前さんがあの遺跡機体の操縦士か」

「あ、ああ」

「会えて光栄だ、あの呪われた魔装騎兵フレーム・ストライカーを乗りこなす奴に会えるなんてな。俺はガルシア・メーヴェだ。主に魔装騎兵フレーム・ストライカーの整備、開発に携わっている。周りからは旦那と呼ばれている」

「俺は新海達也、えーッと……」

「旦那で構わねぇよ、ちなみにこう見えてまだ10代だ」

「え?」

「え? じゃねぇよ!! まだ18だ!!」

「えぇ……」

「コイツぶん殴って良いか……!!」

「まぁまぁ旦那、新メンバーだからそれにみんな驚くって旦那の歳は」

「ケッ! しゃーねぇな! まぁ、これからよろしくな」


 旦那と握手を交わし、


「さぁて、小娘! いつまでだ!」


 セラの方を向いてから聞くと、


「期間は9ヶ月、その時に性能披露も兼ねて、この国で最も大きい魔装騎兵フレーム・ストライカー製造工場との模擬試合があります!」


 その名前が出てくると、それぞれが思いを述べる。


「これは良い相手だ」

「不足は無いね」

「やってやろーじゃないの!」

「やる気が出るぜ!」


 それを見た旦那はフッとはなで笑う。


「でぇ? 小娘、新型はどんなのにするんだ?」

「うん、その件だけどゴメン。兵器しか思いつかなくて……」

「おいおい、そいつはどうすんだ!?」

「問題ないかな」


 何故か自信に満ちているセラに全員が気になると、セラが達也の肩を掴む。


「達也のアイディアを使うから!」

「はぁあああああ!?」

「良いのか?」


 それでは手柄としては俺の物になってしまう。

 それで本当に良いのか? と思うと、


「達也のノートをさっきチラっと見たけど、この世界で実現するには私の設計思想が必要不可欠だから」

「なるほど、原本は俺でそれを仕立て直してくれる訳か」

「うん、これなら対等だよね」


 満面の笑みで言うセラにこれは勝てないなと思う達也。


 そして方針が決まった所でアイディアを溜めに溜めた物を開放する時が来た。

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