19 天才と新型機 10
まさかの出来事にその場に居た、貴族と国境騎士団が驚きを隠せなかった。
「あの短時間で!?」
思わずエクスカリバーの方へ視線を向けた瞬間、その隙を見逃さなかったジルフート。
一気に近づき、長剣でセレスティアへ横薙ぎを放つ。
「しまッ!」
盾で防いだが体勢が崩れていた為、吹き飛ぶと同時に盾を構えていた腕が壊れる。
「そこまでッ!!」
オルシェンが模擬戦を止め、立ち上がる。
「よく奮闘してくれた騎士達よ。其方たちの事、今日の事は生涯忘れる事はないだろう!」
模擬戦が終わり、騎士達は
「しかし、達也の機体はボロボロだな」
「アハハハ……ちょっと動かしただけでこうなっちゃいました。でも、まぁみんなの御陰ですから」
「1機しか倒せなかった……」
落ち込むロイに対して、カイルとジークは苦笑いする。
「君らは倒したんだろう? 私達なんて1機も倒していないぞ?」
「ジーク、これは私達の技量が無かったと考えるべきだ」
「まぁ、それもあるだうね」
「――すまない、黒曜騎士団」
集まって話している所に国境騎士団達が達也達へ近づく。、
その中の団長が一歩前に出る。
「話している所すまない、どうしても言いたい事があってな」
すると、手を差し出す団長。
「良い騎士達だ」
ポカンとしてから達也はジークとカイルを見ると2人に頷かれ、
「ありがとうございます」
手を取り握手を交わす。それが終わると、
「達也ー」
セラに呼ばれ、達也は団長を見て一礼してから言う。
「失礼しまします」
その姿を見た国境騎士団団長は笑う。
深いため息を一つ着いてからカイルは一歩前に出る。
「すみません、ウチの団長が」
「ハハハ! 良いさ! それに君はあの蒼い
「はい!」
「良い腕だ、もう少し長引けばどうなっていたか」
「いえ、そんな事は……! 自分の未熟さが目立つ戦いでした」
再び笑う団長に戸惑うカイル。団長はカイルの肩に手を置き、
「謙遜なのも悪くないが、先輩騎士からの言葉は素直に受け取るべきだ」
微笑みながら言う団長にハッと気づき、
「はいッ!」
はっきりと答えた。そんな称賛を送り合う中、達也はセラに呼ばれエクスカリバーの前に立っていた。
だがエクスカリバーの近くへ着いた瞬間腕に抱き着かれる。
「で、どうしたの?」
「ごめんね、現行の装備なのに……壊れちゃった……」
「いや、むしろそれは俺が謝るべきでは?」
だって、壊しての俺だし、と思いつつセラを見る達也。
しかし、首を左右に振ってから、
「私は整備士。乗り手が苦も無く
責任を追い過ぎていると達也は思うが、それに対しての掛ける言葉が思い浮かべず、頬を軽く掻いてから、
「そう考えてくれてありがとな。エクスカリバーが特別過ぎるだけだ、だからコイツに耐えられるフレームを一緒に探せば良いさ、な?」
セラはその言葉を聞いて涙を目に溜めてから、達也を抱きしめる。
「あり……がとう……」
微笑んでからセラの頭を撫でる。
「セライラ・ベロウズゥウウウウウウウウウウウウウウッ!!!!」
空気をぶち壊す叫びが達也とセラの耳に入った瞬間、
「チッ」
達也の胸で泣いていたセラから舌打ちが一つ聞こえ、視線を落とす。
「あの、クソジジィ空気読めよ……!」
涙目ではあるが目つきが鋭くなり、ここまで怒っているセラを見たのは初めてだった。
思わず口が開き、驚愕したが、
「……初めて見た」
「え?」
「セラがそこまで怒ってる所」
「あ! あー……アハハハハ! そんな事な――」
「――セライラ・ベロウズ! あの箱の
「空気読んで下さる? クソジ――ジルベルト工房長」
「貴様! 今何と言おうとした!!」
「気のせいですよ。それで何でしょうか?」
心底嫌そうな表情を浮かべながら聞くセラに憤りを感じながらも、
「あの新型の事だ!!」
「それなら私がお答えしましょう!!」
セラに質問すると、達也が目を輝かせながら言う。
工房長は鼻で笑ってからセラの方へ向く。
「何を隠している! 早く教えんか!!」
「……はぁ……だって、達也」
面倒くさそうに答えるセラに工房長は達也の方へ振り返る。
それから達也をじっくり観察してから、
「フン、こんな
「言っておきますが、今回から新型製作は団長が直接指揮をしてますので」
「……は?」
セラの言っている意味が理解できず、聞き返す工房長。
深いため息を一つしてからセラは工房長を見て、
「今回の新型は団長の発案で、直接指揮をして貰いながら製作を行いましたから。ついでに、私はもう新型は作りません。出し切って思い浮かびませんので」
「な、なんだとぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
すると、工房長は達也に近づき、
「教えろぉおおおおおおおおおお!!!!」
切り替え早いな、と思うセラ。その言葉を聞いた達也の目が輝く。
「良いですともッ!!」
「何だあの箱の
「はい!! ガーヴェンドの事ですね! あれは輸送専用で速さに長けており、マナリアクターを2基積んでいます!! 浮いているのはジルフートとと言います! 詳細は後程工房へお送りいたします!! ワイヤーはサンダーウィップと言いまして! 電気魔法が通りやすい様に魔鉱繊維を使っております!! あと、壊れた
「なるほど!! 確かにあの重量を動かすならマナリアクター2基なら動くだろう!! それにサンダーウィップか!! あと、エクスカリバーと言うのか!!」
「ええ! それにしても良くセレスロアの燃費の悪い部分を調整しましたね!!」
「いやそれは簡単でな! 少しだけ束型魔鉱繊維の量を減らし、その分サイズを小さくし、マナタンクを増設したのだ!!」
「なるほど!! 確かにそれなら燃費問題に減らした分の束型魔鉱繊維の出力不足が解消されますね!!」
達也と工房長はお互いに熱く語り合うのを見たセラはだんだんイライラし、
「はい、終わりー! 行くよ、達也!」
「え!? まだ、話足り――」
「――い く よ ッ!!」
「では、工房長!! いすれ!、 じっっっっっっっくり語り合いましょうッ!!!!」
セラに腕を引かれながら工房長へ手を振る達也であった。
そんな中、工房長はフンと鼻で笑ってから、
「
しかし達也と話し、自身の作ったセレスティアを見上げる。
「いつ以来だろうか……こんなにも気持ちが楽しくなるのは」
忘れていた
その後、模擬戦から4ヶ月が経ち、工房はセレスティアを更に改良、コストダウンさせ、セレーティアを完成。
量産態勢を確立し、国中に配備を開始した。
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