4 転移後編 3


「ほう? ソイツはいい話じゃないか」


 全身黒いローブで包まれ、顔にマスクをしている集団が新型機の話を聞いてその牙を向こうとしていた。


「どうしますか、ボス」

「どうも何も、奪うだけだ。奪って、母国へ持ち帰る。そうすれば私達の権力も強くなる」

「では」

「あぁ、動くぞお前ら」

「「「「了解」」」


 完全に牙を向かれた悪意にこの学園、都市を含めた人々は気づく事は無かった。


 ―――――――――


 それから達也達と別れたカイル達は自分達の魔装騎兵フレーム・ストライカーに乗り込み、近辺偵察を行っていた。

 上級生である3人は既に全ての課程を終わらせ、後は卒業するのみとなっていた。

 その為、カイル達の様に上級生でも近辺偵察をする生徒も多い。


「それにしても達也は相変わらずだな」

「そうね」

「我が義弟おとうとながら困ったものだが、それがむしろ良い」

「お優しいね、貴公子殿ー」

「茶化すのは止めろ、ジーク」

「あーいさ」


 ここで何かの異変に気付いたカイルは魔装騎兵フレーム・ストライカーを止まらせた。

 それに続いて後続も止まる。


「どうした? カイル」

「……可笑しい」

「ええ……確かに少し変な感じがする」

「ん?」


 カイルとレティは分かったが、未だ状況を飲み込めないジーク。

 だが、直ぐに気づく。


「……なんだ、この緊張感……いやむしろ、静かすぎる」

「ああ、そのお通りだ」


 言った瞬間だろうか、大勢の鳥達が突如羽ばたきだし、森の奥から魔獣達も大勢現れた。

 その光景に一瞬だけ驚愕したが、カイルはすぐに頭を回転させ、


「全機後退! 都市へ救援要請だ! この数を相手すのは無謀すぎる!」

「「了解!」」


 すぐに撤退を選択して走り出す。地面を揺らし、機体の足を動かして都市へ向かう。

 この時のカイルの判断は正しかった。迎え撃とうとすれば、無数の5m程の大きさの中級魔獣が束になってカイル達を襲うことになった居たからだ。


 それを背後に映る景色を見てカイルは背筋が凍った。

 そしてある程度引いた所で、カイルが救難信号の魔法を装備してある杖から発動させる。

 都市は救難信号を確認して都市に居る騎士達へ伝える。


『都市にいる全騎士へ! 魔獣が都市近くまで近づいている! 早急に魔装騎兵フレーム・ストライカーへ騎乗せよ!』


 早急に機体へ騎乗し、門を開けて魔獣討伐の為出撃する。

 その頃、カイル達は他の駐屯騎士達と合流して魔獣達と対峙していた。


「ハァアア!!」


 雄たけびを上げながら盾を魔獣達にぶつけて吹き飛ばし、5m程の長剣を振り魔獣達を薙ぎ払っていく。


「数が揃えばこの程度、中級魔獣など有象無象だな!」


 余裕を見せていくジーク。


「油断するなジーク! 相手は魔獣と言っても魔装騎兵フレーム・ストライカーの鎧に傷は付けられるんだ! 下手をすれば死ぬぞ!」

「あいあい……ッ! 分かりましたよ、隊長」


 中型魔獣、主にゴリラやリザード、ウルフ形をした物が多い。

 小型は大きくて3m程でウルフ、パンサー、リザードなど様々な種類が存在している。

 その小型と中型が群れを成して突如出現、こんな事今までに無かった為、戸惑う者も多かった。


「数が多い!!」


 レティもこの数の魔獣を相手した事が無く、


「しまッ――抜かれた!!」


 ウルフ型の中型魔獣がレティを抜いて都市へ走っていく。


「クソ!」


 急いで振り返り、杖を構えて魔撃を放つ。しかし、それを軽々と避けられる。


「レティ! 追うな! 今ここで抜ければここは維持できない!」

「でも!」

「後続に任せるしかない!」

「……了解!」


 言った瞬間だろうか、カイルが横にいるレティの方へ視線を向けると、先ほど逃したウルフだろうか、レティの機体へ噛みつこうと口を開いていた。


「――レティッ!!」

「え?」


 レティの横から現れたウルフを見た瞬間、思わず目を閉じる。

 だが、到達する前にウルフの横顔に魔撃は命中した。


「待たせた! 学生に騎士達よ!」


 都市の騎士団がギリギリの所で間に合い、レティを救った。

 魔装騎兵フレーム・ストライカー達が進み、地面を揺るがしていく。


「全機! 突撃ィ!! 魔獣どもを駆逐せよ!!」

「「「了解!!」」」


 増援に来た騎士達の中から指揮官機のガーゼンレイがカイル達へ近づく。

 そしてカイルの魔装騎兵フレーム・ストライカー肩に手を置き、


「よく頑張った学生諸君! 後は我々に任せて後ろに下がるといい」

「いえ! 私達も参加させて下さい!」

「なら、都市の防衛だ。これも重要な任務だ」

「了解! 行くぞ! ジーク、レティ!」

「……了解」


 少し嫌そうに言うジークへ、


「ホラ、いくよ」


 レティが尻を叩き、向かわせる。


「はいはい、行きますよ。隊長」


 文句を言おうとするがそれでも付いてきてくれるジークに感謝しながら、前線の後続へ向かう3人であった。


―――――――――


 都市の騎士団を出すことに成功したが、未だ都市に残る魔装騎兵フレーム・ストライカー数が多く手こずっていた。


「……あれを呼べ」

「大丈夫でしょうか?」

「何だ? この国の心配でもしてるのか?」

「いえ、そんな事は……!」

「安心しろ、現れて混乱している所を突破すれば良いだけだ」

「了解、直ぐに指示を送ります」


 部下の1人が姿を消して指示を出しに行く。

 薄暗い部屋内で思わず笑いが込み上げてくる。


「もうすぐだ……!」

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