3 転移後編 2
それから4年が経ち、達也は執事では無くベロウズ家の養子として入る事になり、誰もが嫌う魔法学、筋トレを毎日こなし今では上級魔法ですら扱える魔法士としても優秀な者になった。
背も伸び、顔つきも凛々しくなり言葉使いもまともになった達也。
4年で変わったのは達也だけでは無い。
「達也ー? 学園に行きましょう?」
倉庫で出会ったセライラ・ベロウズも成長し女の子らしくなった。
目を隠す程の髪を切り、地味な服装も女の子らしくなり以前の彼女の姿もう無い。
「ああ、今行くよセラ」
部屋から出て2階から飛び降りて、玄関へショートカットする。
「『エアスラスト』」
着地寸前の所で上級風魔法を扱い、勢いを殺してから着地した。
「んじゃ、行こうか」
「うん! 行こう!」
そう言ってから達也の腕に豊満になった胸を押し付けながら家を出ようとした。
「達也、セラいってらっしゃい」
優しい笑みを浮かべながら我が子を見送るエレノア。
「「行ってきます」」
「はいッ」
見送られてから2人は学園に向かう。その最中、
「おーい、達也ーセラー」
茶髪の青年男子、この世界に着て数少ない達也とセラの友のロイ・ダキアヌ。
この世界に来て1ヵ月、その時にたまたまエレノア義母さんの友人が遊びに来た時に、友達となった。
出会って以来、セラとロイとの仲は……。
「げ、お邪魔虫ロイだ……」
「ほんっと相変わらず口の悪い奴だな」
「何ですってぇ!!」
「何だよ!」
と、この様に犬猿の中ではあるが、ケンカするがこれは日常茶飯事程度である。
そしてこの様に始まると、
「はいはい、やめよーな」
抑制するのは達也であった。ここでセラが気づいた。
「それよりも何でロイがここにいるの? ロイの家からならこっちまで来るより学園に行った方が早いじゃない」
「ん、達也に用があってな」
「俺に?」
「ああ、聞いて驚け? 今日実はな、学園に……新型機の発表があるらしいんだ!」
「マジか!!!!」
目を輝かせる達也の姿を見たセラが笑う。
「こうしゃ居られない! 急ごうセラ、ロイ!」
「ええ!」
「おう!」
急いで学園に向かうと既に学園の生徒達が学園の中央広場に集まっている。
遠目からでも分かる、魔装騎兵の姿が3機聳え立っていた。
「ウォオオオオオオオオ!!!! 新型だ!」
あまりにも早い達也に後から追いついた2人。
ロイは息を整えてから達也の隣に並び、
「新型なんて何百年ぶりだっけ?」
「100年ぶりだ! 今現状で使える機体が学園で訓練機として使われているグレイアが500年前の機体で、300年前に作られてもなお主流となっているのがサレルノア! 生産はされているが、主に重要な所で指揮官機としてしか配備されていないガーゼンレイ! これは100年前だ」
「なるほどなぁー……解説役が居てくれて助かるわぁー」
「授業に出てたでしょうが」
嘆息と共に言うと改めてセラは新型を見上げる。
「セレスロア……」
「え?」
呟いたセラに聞き返す達也。するとセラが微笑んでから、
「新型のなーまえ」
「ほう、いい名前だな。開発者って確か……」
「セイラム・イクシフォスター」
「そう、最近出てきた天才だ、でも王国が一切情報を公開してないんだよなぁ……会ってみたいな」
「何で?」
「ん? 実は俺の居た世界の兵器をこっちで応用できると思ってね。それにオリジナル兵器に、機体も考えたノートがあるからさ」
「え!? 何それ! 見せて!!」
流石と言える、技術者としての血が騒ぐのだろう。
しかし、セラに見せると少し恥ずかしい部分があったりする。
「んー……ごめん、今度見せるよ」
「むぅ……じゃあ今度見せてね」
両頬を膨らませながら言うセラに優しく頭を撫でる。
そんな事をしていると人混みの中から、とある人を見つける。
「カイル義兄さんだ」
「あ、ホントだ」
すると、カイルも達也達に気づき、人混みを避けながら笑顔で近づいてきた。
カイル・ベロウズ、セラの兄で最初は寡黙で取っ付き辛い人だと勘違いしていた。
だが、カイルはただ達也と話がしたいとその時思っていたが、話す内容が分からずに居ただけと言う事を後に知り、達也から声を掛ける事でその悩みが解消され、今では。
「やぁ達也にセラ、それにロイ」
「こんにちわ、兄さん」
「こんにちわ、義兄さん」
「こんにちわ、カイルさん」
うむ、と一つ頷いてから達也の肩に手を置くカイル。
「達也、いい話があるんだがどうだろう?」
「何でしょうか?」
ブロンドカラーショートの髪型で学園の貴公子と呼ばれているカイルにウインクされ、
「新型機に乗ってみないか?」
「えッ!?!?!?」
「ハハハ、ただ座るだけだけどな」
「構いません!! お願いしますッ!!」
勢いよく頭を下げてお願いをする達也に、カイルが笑う。
それを見たセラはカイルを睨み、ため息を付くロイであった。
「怖いぞーセラ」
「兄さんが達也を取っていくからです」
「まぁ、少しだけだから。来てくれ達也」
「はいッ!!」
目をキラキラ輝かせながらカイルの後に付いて行くと、新型機の周りを上級性が警備していた。
その中に知った顔が見え、
「待たせた」
「ん、カイルに達也じゃないか」
ブロンドカラーで凛々しい顔立ちでカイルの幼馴染のジーク・リネスタリ。
「突然居なくなるから驚いたじゃない」
後ろで髪をまとめた女性でこちも幼馴染のレテシア・スレント。
「すまない、乗せてやりたくてな」
カイルの発言に2人はカイルを見ると目を輝かせて新機体を見つめている達也へ、同時にため息を付かれる。
「まぁ、達也だしね」
「仕方ないか……」
「そういう事だ、て事で達也」
「はい!」
「乗り方は分かるか?」
「ええ!」
達也はこの4年間の間で学園の訓練機で基礎を知り、セラに簡易だが特訓用の操縦席作って貰い特訓してきた。
騎乗するときは操縦席の近くに設けられたワイヤーに足を掛けて上がる。
だが達也は、
「『エアスラスト』」
風の起こす魔法、風の起こす勢いの反作用を利用して飛ぶ。
朝に簡単に使っていたが実は飛ぶ為の魔法では無く、攻撃魔法として使われるのは普通。
しかし、達也の特訓でそれを飛ぶ為の魔法として改良した。
先に上がった達也は操縦席の乗り込み、
「あ、ああ……最ッ高……」
「ハハハ! それは良かった」
後から上がってきたカイルに笑われながら乗る達也。
起動はせずに、物の数分で降りる。
そして達也を待つセラとロイの元へ向かう。
「どうだった?」
「最ッ高だった……」
「そりゃよかったな」
「ああ!」
「んじゃ、授業に行こうぜ」
「そうねー行こう達也」
優越している達也を引っ張るセラ。
そんな事気にせずに共に授業へ向かうロイであった。
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