一週間の恋人たち

一 思い出は甘く苦く

 ……愛の話をしよう。

 あるいは、恋の話をしよう。

 私にとって最愛とは雁金空也のことである。

 では最恋とは?

 そんな言葉がこの世にあるかは置いておいて、恐らく世界で最も恋した相手も雁金空也だ。

 私の恋や愛のあらゆる初めてを彼女に捧げた。

 ノロケけたい訳では無いが、どうしても空也の名前が出てくるのは仕方の無いことだ。

 これはちょっとした練習のようなものだ。

 記録するという事の練習。

 だから、これから私の行う話はいい加減に聞いてもらって構わない。

 斜め読みでもいい。

 私にとって今回する話はあまり記録したくないことである。

 振り返ればそれなりにいい思い出と悪い思い出が蘇る。

 しかしそれは一人で楽しむ、あるいは苦しむべきものだと思うのは私だけなのだろうか。

 他人の恋路や愛の物語に諸君は興味があるだろうか。

 飲み屋で聞かされる他人の恋人の話にうんざりしたことはないか?

 モテる男の自慢話に唾を吐きたくなったことはないか?

 私はある。

 ただ空也と関係が結んだ結果、なんとはなしに空也を話題に出していることがあるので、あの時の彼らの気持ちが分からないでもない。

 分かりたくはなかったが、分からされてしまった。

 恋わずらい、恋の病、色々な言い方があるが、結局人の頭にこべりつくという事実は変わらない。

 油汚れほど汚くはなく、しかしシミのようにしつこく残る。

 愛と恋。

 似た存在に思いながらも、どこか紙一重の違いがある気がしてしまう。

 そんな愛か恋の話をしよう。

 私の一週間の愛か恋の話だ。

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