Episodes[14] // ご理解に感謝します
『何だって!?』
画面の向こう側で、白髪の医師は不機嫌そうにそう言った。
「それしか方法がありません」
と、忠志は毅然と答えた。
忠志は仮眠室の小さなデスクで、事の顛末をハカリに報告していた。ホシのタブレット端末には眉間に皺を寄せ目を閉じるハカリの姿が映っていた。
『……チームに容疑者なんて。ホシ、君が加担するとはね』
二段ベッドのポールに寄りかかっていたホシは、姿勢を正して応じた。
「あなたも元は警察にいたのですから、実情はご存じでしょう。彼女は恐らく真犯人ではありません」
『都合良く仕立て上げられたのだろうとは思うが、さすがに邪道だろう』
忠志は割って入った。
「正攻法で解決しないなら、邪道もまた正道です。もし仮に犯人だとしても、治療法を知っているならそれで良い」
『嵯峨さん、犯人が治療法を知っているとは限らないでしょう。既存のウィルスの改造ぐらいなら誰だってできる。そのままばらまく事だってね』
「……そうか。かもしれません」
もし犯人がウィルスを一から設計したのであれば、既に治療法をひっさげて名乗り出ていてもおかしくない。既にアカネが逮捕されているのだから、犯人であることを悟られることもなく、英雄扱いを受けることだって可能かもしれない。だが、現実にはどうだ。誰も治療法を見つけていない。となると、ハカリの言うとおり、犯人はウィルスそのものについては詳しくないのかもしれない。
ハカリは大きなため息をついた。
『良かろう。それよりも、祝園アカネが関与していることは対外的には隠しなさい。祝園アカネは東ハリマ自治区から外に出さないこと。私は聞かなかったことにしよう』
「ご理解に感謝します」
忠志は小さく礼をし、通信を終了した。
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