Sections[2] = Revenge.GetResult(); //そのリベンジの結末は
Episodes[0] // Pacxjo! Vekigxu!
その日が地獄のような日々の始まりと知っていたなら、一体何ができただろうか。
春の日差しに、冬の風がまだ居座る。そんな日だった。
少年は教室で窓の外を眺めていた。今日は週に一度の対面授業である。教壇に立つ老齢の教師は、有益であろう何らかの情報を、抑揚の乏しい口調で朗読していた。しかし、それは学習器を用いた授業に比べ、あまりにも非効率である。学校という形骸化した組織を維持するためだけの、退屈な儀式といっても過言ではない。言葉のひとつひとつが、少年の耳に届くと同時に意味を失い、睡魔の餌食となっていった。数世紀前、ヒトの学生はこんな無意味な時間を過ごしていたのだろうか。ならば、滅びたのも理解できる。少年は大きな欠伸をした後、机に突っ伏した。
ドンという大きな音に、少年は目を覚ました。
ざわつく教室。目をこすり、あたりを見回す。クラスメートの視線の先には、床に倒れた教師の姿があった。
眠っていた時間はたったの五分である。何が起きたというのだろう。すぐさま、少年は教師のもとに駆け寄った。基本的な救命措置の方法は知っている。脈拍、呼吸に問題はない。ただ、額に熱が感じられる。それ以上できることは何もなかった。
やがて、事態の全貌が徐々に明らかになった。
結論からいえば、生徒は全員無事であった。しかし教師の大半が、その場で意識を失っていた。しばらくして、これはコンピューターウィルスによる伝染病らしいという知らせがもたらされた。発症しなかった僅かな教師が休校を宣言した。
退屈な授業に罰が当たったのだ。そんな冗談を誰かが発し、同級生の顔には不謹慎な笑みが浮かんだが、それも長くは続かなかった。
下校の道のりには、多くの人が倒れていた。最初の何人かには救護措置を施した。しかし、事態の深刻さを理解するにつれて、足は速まっていった。
自宅に到着すると、母が血相を変えて家を飛び出すところだった。父が職場で倒れたと知らされた。
国家公務員だった父は、幸いにも国立首都総合病院に運ばれた。しかし、ベッドも医師も足りず、ロビーに敷かれたブルーシートの上に放置されただけだった。これが、医療の最先端である。父は時々目を覚ますが、一方的に何かを話すだけで会話は成立しない。そんな状態が続いた。それから一週間が経過し、いよいよ脳内温度が致命的な水準に近づいても、医師を捕まえることすら困難を極めた。適切な治療を受けることもできず、時間だけが経過してゆく。それがもどかしかった。
そして二週間が経過したある日、医師が父の脳死を宣告した。
信じられなかった。
「Pacxjo! Vekigxu!」
少年は父の身体を揺すった。
まだ、身体は温かく、心音だって聞こえる。しかし、反応は何もなかった。
医師は何もできなかったと母に説明する。手術室は満杯で、血液冷却にも限界があったと。
少年は納得できなかった。父の命が失われたということにも、そして、適切な治療を受けられなかったということにも。
だが、父が再び目を開くことはなかった。
その時、少年は信じられない物を目にした。
黒スーツの女に引き連れられた、NebulAIに似た何かである。肌の色が暗く黄みを帯びている。瞳の色は地味な茶色――あれはヒトに違いない。ヒトは忌々しい種族である。それは、学校で繰り返し聞かされてきたことだ。生物兵器で自滅した愚かな種族が、なぜ現在に存在しているのだろうか。しかも、白衣を着ているのはなぜなのか。少年は混乱した。
ヒトと目が合う。
しかし、その瞬間、ヒトは意図的に目を逸らした。黒スーツの女と言い合いをした後、何もせず、ただその場を去って行った。
さすがは冷酷な種族だ、と少年は思った。
数日後、少年はニュースを見て驚いた。この世界に二名のヒトが存在している。少なくとも、その一人が、ハリマ熱病の拡散に加担したのだと。少年の手は怒りに震えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます