　忠志とホシが研究室こと史料分析室に戻ると、アカネがセキュリティトークンの仕様書に目を通しているところだった。

　部屋に入るなり、アカネは忠志に尋ねた。

「このセキュリティトークンはＮＦＣを使っているようですね」

　突然のことに忠志は面食らう。

「ああ、はい」

　ＮＦＣとは近距離無線通信（Near Field Communication）の略で、二十一世紀の世界では、鉄道のＩＣ乗車券や電子マネーなどに用いられていた技術である。NebulAIには手のひらの内部（厳密には手根骨）にその読み取り・書込み装置が搭載されている。

「接続インターフェースは？」

「シリアル通信です、ＵＳＢ経由の。えっと、確か/dev/ttyUSB0を使っているはず――」

「ならば話は簡単です、これで多くの命を救えるはずです！」

　そう言うアカネの目は輝いていた。

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