Episodes[21] // 廃墟
忠志は廃墟の街を見渡した。
姫路城跡には、もはや崩れかけた石垣が残るだけである。白鷺城の威厳と優美さはもはやそこにない。
忠志が知る姫路市街がそのまま廃墟化したわけではない。それから百年以上経過した後に廃墟と化したこともあり、忠志が知る建造物は多くはなかった。だが、中には京姫鉄道の大将軍駅ビルなど、見慣れた建物の廃墟も残っている。それを見ると、人類は本当に滅びたのだと嫌でも実感することになる。
「ホシさん、人類は生物兵器で自滅したと仰いましたね」
「……はい」
「NebulAIはヒトの良い部分も悪い部分も承継した人工生命です。もし、ウィルスの作者が誰かNebulAIだったとすれば――」
「……皮肉だと思います。ヒトという種族を悪者扱いするので精一杯で、自らの暗部を直視してこなかった。考えてみれば、もし我々が本当にヒトより優れているのなら、私のような警護官……いや、警察なんてものは必要ないのです。あの少年もあなたを襲うようなことをしなかったでしょう」
「まあ、あれは……彼なりの正義だったのだと思いますが……」
「しかし、我々が絶滅し、こんな廃墟だけが残るのも、時間の問題なのかもしれません」
ホシは、忠志の肩に顔を埋めた。
「忠志、私は無力です。どうすれば良いのでしょう」
忠志には何も答えることができなかった。
答えは恐らくとても簡単で、誰もが知っていることで、しかし、その実現はとても困難なのだろう。
風が潮の香りを運んでくる。
ホシの美しいセミロングの髪が、風に靡いていた。
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