第Ⅰ章 御樹麻琴は、しっかり栗林高校に受かっていた。

第2話

瑞樹真琴が、自分と同じ学校でないと分かってから、俺は、1人悲しみにくれながら、とぼとぼ帰っていた。

「あーあぁ!せっかく、恋人ができたと思ったのになー!博之ひろしに言っちゃたじゃないか。『俺、たぶん高校入った時には、彼女いるわ』って。どうするんだよ……しかも、俺に彼女ができていたら、何でも買ってあげると言われたから、じゃあ、俺は、美少女を紹介してやろうって言っちゃじゃないかぁぁ!

約束したときは、もう、俺の勝ちは決まってんだよ!ざまぁぁ!とか思ってたあの頃俺殺したい。

「た、だいまー」

「あ、お帰りなさい!あとから、話したいことあるから。覚えてといてね!」

「あ、うん。わかった」

お母さん、俺が受かったか聞かなくてもよかったのか?まあ、いい。今からふて寝だ!

それから、俺は、制服から着替えずにベットにダイブし、深い眠りについた。


少し、意識が戻ってきたころだろうか。

『起きてよ!じゃないと私帰っちゃうよ』

そんな、声が聞こえた気がした。

それに、身体が揺れている気がする。

でも、俺は、特に気にせず、また眠りに入ろうするのだが、

『本当に帰っちゃうよ』とか、『起きてよ!』とか、『もう帰るからね!』とかいろいろなことを言われた気がした。

その声は、どこか、御樹麻琴の声に似ているような気がした。

俺、遂に、麻琴ちゃんの声を、自分で再生してしまっているのか。なんというか、俺めっちゃ麻琴ちゃんのこと好きだな。ああー、なんで、本当あんなふうになったのかなー。なんか悲しくなってきたよ。

そして、また俺は深い眠りに入ったのだった。


起きたら、カーテンも閉めずに寝たせいで、太陽の光が眩しく感じた。

………太陽の光ってこんなにも眩しかったけ?俺は、久しぶりに、寝起きに太陽の光を浴びたもんだから、そんなことを思ったのだと思う。

制服の姿のまま寝たせいで、制服が皺だらけになっていた。

………どうしたものかな。まだ、買ったばかりの制服なのに………まあ、干しとけばどうにかなるよな。

そして、俺は、皺くちゃになったブレザーををハンガーに掛け、クローゼットの中に入れ、寝汗で、びしょびしょになったシャツを脱ぎ、シャツをきて、上から長袖のジャージを着て、部屋から出るのだった。

階段を降りている途中に俺は、昨日お母さんに言われたことを思いだすのだった。

そういえば、お母さんが、なんか用があるからとか言っていたような。

そう思いながら、俺がリビングへと降りていた。

そして、リビングの扉を開けた瞬間俺は、衝撃的な光景をみたのだ。

なんということだろうか。俺の彼女になるはずだった麻琴ちゃんがリビングにいたのだ。

あれー、これって現実?そういえば、昨日も寝てる時に麻琴ちゃんの声が聞こえたような。俺幻聴だけじゃくて、幻覚まで見えるようになっちゃたの!?

やばい、たぶん、まだ睡眠が足りなかったんだろう。ってことで、もう一回寝てくるとするか

そう思って、リビングの扉を閉めようとした時だった。

麻琴ちゃんが、俺の存在に気づいたのだ。

「あ、やっと起きてきたね!」

「あ………うん」

「もう!なんでそんな、魂が抜けたような顔してるの」

「いや、だって」

「だって?」

「なんでか分かんないけど、目の前に麻琴ちゃんがいるから。これってもしかして、俺の幻覚?」

「嫌だなー、佑樹君の幻覚なわけないじゃん。だって、今佑樹くんの前にいるじゃん。それにほら」

そういうと麻琴ちゃんは、俺に触れてきた。

「触れることもできたしね。だから、今佑樹くんの前にいるのは、本物だよ」

「そ…………うだね」

俺は、もう放心状態だった。だ、だって、俺の彼女になるはずだった麻琴ちゃんが、俺にとって天使な麻琴ちゃんが、俺の家にいるんだぞ。そんなのもう放心状態になるのも仕方ない。

「もーう、どうしたのさ!そんな、放心状態になって」

「ま、ままままず、きいいいてえお?」

「ふふ、いきなり、話したと思ったら、動揺しすぎだよ佑樹くん。『えお?』ってなに」

麻琴ちゃんは、おかしそう笑った。

数分後。俺は、やっと落ち着きを取り戻した。

「なんで、俺の家にいるの?」

「あれ?聞いてないの?」

「うん」

「あ!そっか。そういえば、昨日寝てたんだね。そういえば、そうだった。せっかく私が起こしに言って上げたのに、起きなかったもんね」

「え?じゃあ、昨日『もう帰るからね』とか言ってたのって、まさか麻琴ちゃんだったの!?」

「そうだよ。っていうか、私が起こしに行った時起きてたんだ。なら、返事ぐらいしてくれてもよかったのにな」

「いや、だって、俺の幻聴だと思ってたし………」

「あはは!!さっきから佑樹くん、私のこと幻覚とか幻聴とか言い過ぎだよ。なに、佑樹くんは、私のこと幽霊にでもしたの?」

「いや、別にそうわけじゃ……唯、麻琴ちゃんが、落ちちゃったからさ。もう会えないと思ってたからさ」

「?落ちちゃったってなにに?」

「え?栗林高校に」

「私落ちてないけど?」

「……は?」

いやいや、俺は、しっかりこの目で見てきたんだぞ。そこに御樹麻琴なんて名前なかったよ。つまり、麻琴ちゃんが嘘をついているのだ。

「1-1組和泉麻琴って名前みなかった?」

「…見たけど……それが?」

「それが、私なの」

は、はあぁぁっぁぁぁぁあぁ!なにその、冗談は!って言いたいけど、言えない。名前だけ言うならまだしも、組まで言っちゃてるし!わ、わかったぞ!

あの和泉麻琴っていうのは、麻琴ちゃんの名字が変わったからであって、俺の彼女になるはずだった御樹麻琴と同一人物なのだ。

ってちょっと待てよ。和泉って、俺の名字だ。でだ、今御樹麻琴ちゃん改めて、和泉麻琴ちゃんがいる。つまり……

「俺と麻琴ちゃんって兄妹になるわけ?」

「そういうこと。ていうか、昨日あんたに私言ったはずなんだけど、話しがあるって」

お母さんが、ため息をつきながらそう言ってきた。

「すいません」

「まあ、別にいいけどさ。じゃあ、私はこれから仕事にがあるから、2人の時間を精々楽しむんだよ。佑樹、それに真琴ちゃんもね」

「………おう」

「はい!」

真琴ちゃんは、とても満面の笑みでそう答えるのだった。

でも、これで、やっと麻琴ちゃんがリビングにいたのかがわかった。その理由は、麻琴ちゃんが俺の家族になったからか。

そうなると気になることがある。

俺と麻琴ちゃんは、誕生日が一緒なのである。

俺がお姉ちゃんって言えばいいのか。それとも俺がお兄ちゃんって呼ばれるのか。

俺としては、お兄ちゃんって呼ばれたいけど。

「で、私的には、お兄ちゃんって呼びたいんだけどいいかな?」

「……はい。是非喜んで」

こうして、俺に妹ができたのだ。

◆◇◆◇

これで、今日学校があればよかったのだが、運が悪いのか、それとも良いのかわからないけど、今日は、休日だ。

つまり、麻琴ちゃんと今日一日中一緒にいることになる。

それは……なんというか、気まずいな。

ってことで、朝ご飯食べたら、部屋に引きこもるか。

そんなこと考えていたら、麻琴ちゃんがある提案をしてきた。

「ねえ、佑樹君、今日デートしない?」

と。

俺は、すぐには、返事ができなかった。

「…いや、今日は」

「デートしないかな?」

「だから」

「デート」

「……」

「佑樹くん?」

麻琴ちゃんが、こっちを笑顔で見てくる。

でも、その笑顔は、目が笑ってなかった。

っく、こ、こんなところで怖づいてどうする。

ここは、びっしりっと言うだ。俺だって男だ。

「だからね!今日は、部屋で引きこもるから、デートはできないかな」

よし!言ってやったぞ。これで、もう、俺が今日麻琴ちゃんとデートに行くことはなくなったのだ。

いやー、危なかった。あのまま麻琴ちゃんに流されるところだったよ。

「っす、佑樹君は、私よりか、部屋が好きなんだね」

「え、ちょ、泣かないでよ!な、なんか俺が悪い見たいじゃないか!」

俺なにも、悪いことしてないよ。唯断っただけだし。

「女の子泣かせたんだから、責任とってよね」

「…おう」

俺は、一足気づくのが遅かった。

もう、麻琴ちゃんの目には、涙がなかったのだ。

むしろ、笑顔だった。

これって、まさか、俺嵌められた系?

「今言質とったからね。ってことで、女の子の泣かせた責任として今から私とデートしましょう」

「さっきの嘘泣きだろ!」

「そうだけど、なにか問題でもある?」

「大有りだよ!」

「なに、佑樹くんは、彼女とデートしたくないわけ?」

「それは、したいけども」

「ならしよ」

「でも、今日は、部屋に引きこもたいっていうか。せっかく2人きりなわけだし……あと、もう麻琴ちゃんは、彼女じゃなくて妹なわけだし。だから、妹とデートって言うのが、なんか抵抗があってね」

「え?私って、佑樹くんの彼女じゃないの!?」

「え?逆に、妹じゃないの!?」

「だ、だって、私言ったよね。一緒の学校に受けるんだね。って。それで、私達恋人になったはずだよね?そのこと覚えてるよね?」

「うん。勿論覚えているよ。というか、そんなこと忘れる鴨がどこにいるわけ?」

「じゃ、じゃあ、私恋人ってことでいいよね?」

「それは、違うぞ。だってさっき自分でも言ってじゃないか。お兄ちゃんって呼びたいって。つまりだよ。今は、俺と麻琴ちゃんは、恋人じゃなくて、兄妹なの」

麻琴ちゃんは、顔を真っ赤にすると。

「ゆ、佑樹くんの馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

そして、俺は殴られた。

そして、俺は意識が失う前にこう思うのだった。

……まだ、麻琴ちゃんにお兄ちゃんって呼んでもらってないな

と。

◆◇◆◇

そして今俺達は、今机を挟んで向かいあって座っている。

「あのなー、人を殴るのはよくないと思うぞ」

「むー、全面的に佑樹くんが悪い」

「いやいや、俺のどこが悪いって言うのさ!俺至って普通のこと言っただけだよ」

「…………知らない!」

「知らないって言われてもなー、確かに、うちのお母さんと真琴ちゃんのお父さんが再婚するまでは、恋人だったけどさ、でも、よく考えてみて。今の俺と麻琴ちゃんの関係って、兄妹なんだよ?だから、兄妹で、デートなんておかしいと思う」

俺は、至って普通のことを言ったと思う。

全国の男子高校生に聞いても、9割以上は、俺と一緒の答えだと思う。

「むう、なに、佑樹くんは、やっぱり私が彼女なのは嫌なの?」

「いや、だからそんなこと俺言ってないよ」

「いーや、言った!絶対に言った!」

はあ、なんなの?これが、あの麻琴ちゃんなの?

なんか、俺が中学校の時に思い描いていた麻琴ちゃんと違うぞ。

「もう、知らない!じゃあ、買い物行こうだったらいいの!!」

「それって、お願いじゃないよね!?」

「で、いいの!悪いの!」

「わ、わかったよ!行くよ」

「やった!じゃあ早速着替えてくるね!ジャージ姿とか嫌だから佑樹くんも着替えてきてね!!」

麻琴ちゃんは、真っ直ぐリビングの扉に向かって走っていった。

「あ、そうだ。これデートじゃないからな!」

麻琴ちゃんは、振りかえってとてもいい笑顔で

「わかってるよ。!」

と言った。

「え?」

やばい!お兄ちゃんって呼ばれるのがこんなに嬉しいなんて知らなかった!

◇◆◇◆

俺は、さっさとお出掛け着に着替えて、麻琴ちゃんが、着替えるのを待っていると、俺のスマホが鳴った。

「もしもし、なんだ?」

『やあ、単刀直入ですまんが、金貸してくれ!』

「いや、だね!」

『そこんところをどうにか!お願いだ!』

「無理だ!どうせ、ゲームに課金して金がなくなったとかだろ!だから、嫌だ!」

「この!貧乏人が!」

「それは、お前だろ!」

『っく、わかってしまったか……わかった今日のところは、諦めてあげるぞ!』

そこで、通話は終わった。

「まったく、あいつは、しょうがないやつだ」

それから、10分ぐらい待っただろうか。

やっと麻琴ちゃんが着替えてきた。

「待った?」

「うん。待ったね。20分ぐらい」

俺は少し皮肉ぎみに言った。

「むー、なになんか文句でもあるの!」

「いや、ないよ」

「そう、なら行こう!」

「わかった」

そして、俺と麻琴ちゃんは、家を出た。

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