第27話
食事処【イレブン】は、普通の喫茶店だった。
でも、そこで、俺は、不思議に思うのだった。
喫茶店なのに、なんで食事処なの?と。
そうだろ、ここが喫茶店であって、食事処なわけじゃないし…………ま、そんなことどうでもいいか。
「あ、いらっしゃい!」
そんな声と共に出てきたのは、お婆さんだった。
「あ、はい」
「なんだね、あ、はいって!面白い子だね!」
「はは、そうですか?」
「そうだね!」
そこで、俺は、この店は1人でやっているのだろうかという疑問を抱いた。
何故ならば、店の中にお婆さん以外の人が見当たらないのだ。
そんな、俺の様子を見たからだろうか。
「この店は、1人でやってるよ」
そう、お婆さんが言った。
「え、そうなんですか?」
麻琴ちゃんが、少し暗い表情でそう聞いた。
「そうだよ。この、老いた私1人でやってるよ」
「ずっと1人で?」
それは、聞いたら駄目だろと思って麻琴ちゃんに伝えようと、麻琴ちゃんの方へ振り向いた時にお婆さんが言った。
「別にいいよ。今は、もうそんなこときにしていないからさ」
「…………………………………………」
「私には、2年前までは、夫がいた。それも優しい夫が。そんな、ある日のことだ。夫がこんなこと言ってきたんだ
───儂と、店始めてみないか?
と。最初に聞いた時は、私は否定した。でも、夫は、私を説得し続けた。それで、結果的に私が折れて、ここ始めることになったんだけどね。それが、2年半前のことだ」
それは、半年間しか一緒のできなかったと言っているようにも聞こえた。
「そうなんですか………………………」
それから、お互いの間は沈黙した。
「俺は、おばあちゃんを5歳の時に亡くしました。俺は、おばあちゃん子だったので、相当悲しかったです。だから、俺は塞ぎ切ってしまった。誰とも接しないようにしようと。そうすれば、悲しくなることがなくなるから。
でも、おばあちゃんの遺品から手紙が出てきて
──友達いっぱいつくろうね
と。」
俺は、いつのまにかそんなことを言っていた。
「そうか。だから、今こうして彼女さんといるわけだね」
正確には彼女ではなく、兄妹なのだけど、今はそんなことどうでもいい気がして、訂正はしなかった。
「さ!暗い話しはここで終わり!なにか、食べたい物はあるか?」
「えーと、フレンチトーストです」
「俺も」
「わかった」
そして、お婆さんは厨房の方へと行った。
◇◆◇◆
「ありがとうございました」
「いいんだよ。こっちも久しぶりにスッキリできたしね」
そして、俺たちは、食事処【イレブン】を後にした。
ちなみに、なんで喫茶店なのに食事処ってついているのかというと、お爺さんが遊び心でつけたらしい。
たぶん、お爺さんは、とても陽気な人だったと思う。
「ねえ、佑樹くん」
「ん?なに?」
「またいつか、来ようね」
「そうだね。フレンチトースト美味しかったし」
「うん!じゃ、帰ろっか」
「そうだね」
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