第46話

「八ちゃん、そこにいるんでしょ?」

「……さすがは、華撫だね」

「ふふ、そりゃ幼馴染ですから。それに、八ちゃんが、私に隠し事をするとは思えないからね」

私は、八ちゃんとは、もう長い付き合いだ。

だから、八ちゃんが負けず嫌いなのも知っているし、全て自分の手を見せて戦うことが好きなのも知っている。

「八ちゃん、いいのかな?和泉君は、公約を隠したそうだったけど?」

「そうだね。佑樹は、そうかもしれない。けど、そんなことで、自分のポリシーを曲げるようなことはしたくないから」

「そう。八ちゃんらしね」

「それで、私達の公約なんだけど──生徒会の廃止だから」

……ふふ、凄い公約だね。和泉君。

「八ちゃんは、その公約に賛成したの?」

「してないよ。だって、この公約は、確実に叶うものではないことぐらい誰でも分かることでしょ。だから、賛成していない」

「そう。賛成はしてないか。それなら、なんで和泉君の推薦人をやることになったのかな?八ちゃんって、人の下につくこと嫌いだったよね?」

八ちゃんは、小学校の時から、負けず嫌いだった。それに、誰かの下になることを嫌っていた。だから、知っている。八ちゃんが、私の下にいることが嫌だったことぐらい。

「私は、今でも人の下につくことは嫌いだよ。………でも、じゃんけんに負けたからね」

………ふふ、八ちゃんも変わってきているのかな。絶対昔だったら、なにがなんでも譲ることなんてしなかったのに、それをじゃんけんで決めるだなんて。

「そっか。……ちなみに、和泉君は、なんでそんな実現不可能な公約を立てたの?」

「それは───

八ちゃんが、私に話してくれた。和泉君が生徒会の廃止という公約を立てた理由について。

和泉君が言いたいことは、なんとなく分かった。

「和泉君は、意外と学校について考えていたんだ」

「そうかもね。でも、それよりも、華撫を生徒会長にしたくない思いの方が強いじゃない?」

「ふふ、そうだね。でも、和泉君もバカだとは思わない?だって、推薦人なら生徒会に入ることはないかもしれないけどさ、生徒会長に立候補しちゃったらさ、生徒会に入ることは確定事項なのにね。あ、もしかして、和泉君は実は、生徒会に興味があったとか」

「はは、華撫そんなことは絶対ないよ。これは、私の予想だけど今頃生徒会室で自分がしたことに悶えているだろうからさ。たぶん、佑樹は私と同じで負けず嫌いなんだと思う」

「ふふ、そうかもね。………じゃあ、私はいくね」

そして、私は自分の教室へ向かった。

八ちゃんについてもう1つだけ言うことがあった。

八ちゃんは、勝負事において、自分が劣勢にあることが好きだと言うこと。

…………八ちゃんも私と同じでゲーム好きだもんね。

****

そして、俺が教室に入るや否や

「ねえ、佑樹君が生徒会選挙に出る本当なの?それもあの八兎先輩が、推薦人で」

「へ?」

「どうした、そんな顔して?」

「いや、どうしたもなにも、どうしてそのことを知っているんだ?」

「あー、そういうことね。それはね、さっき華撫先輩が来て、『和泉君、生徒会選挙出るから宜しくね!!しかも、八ちゃんが推薦人で!!』とね。」

如何にも言いそうなことだった。

………というかなんなの。そんな情報俺のクラスメイトにリークしてもなにもないと思うだけどな。

「ああ、それとね。佑樹君は、生徒会の廃止だなんて、なかなか過激な公約を立てるんだね」

「なんでそれを?」

「これも、華撫先輩が教えてくれたよ」

どういうことだ?俺は、華撫には言っていないはずだぞ。俺の公約は。なのになんで知っているんだ?

「まあ、ともかく頑張ってよ。私達としても華撫先輩が、負けるところを見てみたいしさ。だから、頑張ってね」

「………うん」

そして、他のクラスメイトからも温かい目を俺に向けてくるのだった。


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