第47話

朝早く、華撫先輩から

──ちょっと、玄関まできてくれる。

という連絡がきた。

私は、ちょうどもうすぐ学校に着くころだったから、少しだけ歩くペースを早めた。

そして、私は、華撫先輩からあることを聞いたのだった。

****

「え?なに、真琴ちゃんって生徒会選挙に出るの!?」

「いや………まあ、そうなんだけど………推薦人なんだけどね……」

「なーんだ。推薦人か。で、誰の推薦人をやるの?もしかして、真琴ちゃんのお兄さんの佑樹君の?」

確か、佑樹君って生徒会選挙出るって噂されてるんだっけ。

「違うよ。私は、佑樹君の推薦人じゃないよ」

「え?違うの?じゃあ、もしかして佑樹君は出ないの?」

私が佑樹君の推薦人をやらない=佑樹君が生徒会選挙に出ない。ということには繋がらないと思うけど。

「佑樹君は、出るよ。しかも、八兎先輩が推薦人でね。それで、私はね、華撫先輩の推薦人をやるんだ」

美紗ちゃんは、とても驚いていた。

……ふふ、それもそうだよね。だって、八兎先輩と言えば、怖いってイメージがあるし、私が華撫先輩の推薦人やるっていうのもびっくりすることだからね。

「…………その、なんか、とても面白そうな生徒会選挙になりそうだね」

「うん、そうだね。…………早く、生徒会選挙の日になって欲しいなぁー」

「そうなの?なんか意外だな。私の中の真琴ちゃんのイメージってさ、内気な感じで、大衆の前に出ることが苦手な子だと思っていたから」

美紗ちゃんが言ったことは当たっていた。

私は、とても内気で、誰かの前に出てなにかをやることが得意ではない。

でも、中学校の時から生徒会にはとても興味があったし、やってみたいと思っていた。

そして、この学校の生徒会の制度を佑樹君から聞いた時は、私も生徒会に入れるかもという可能性に胸を膨らませもしたし、生徒会に、それも生徒会副会長になっている佑樹君のことを羨ましくも思った。

でも、私が今回生徒会選挙に出たいと思ったのは、佑樹君と勝負をしてみたいという気持ちからだった。………あと、少しだけ自分を変えたいって言うのもあったけど。

「美紗ちゃんが言っていることは、あってるよ。私は、誰かの前でなにかすることは恥ずかしいからしたくないから。でも、私はね、佑樹君と真剣勝負がしたいと思ったんだ」

「佑樹君と真剣勝負がしたい?でも、それって、どうやって、だって佑樹君は、生徒会に興味がないんでしょ?………ん?っていうことはなんで今回生徒会選挙に立候補してるんだろう?」

「それはね、佑樹君が私を生徒会に入れたくないからだよ」

「真琴ちゃんを生徒会に入れたくないだけで、生徒会選挙に出るかな?普通」

「ああ、そのことなんだけどね。美紗ちゃんも知っているだろうけどさ、生徒会長が、生徒会役員を決めれるっていうのを」

「うん、それは、知ってるよ。だって、佑樹君は、だから、生徒会副会長になったんだよね………?あ!そういうこと。華撫先輩が当選してしまったら、生徒会に入れられると。でも、それだと、自分で生徒会選挙に出ちゃ本末転倒もいいところなのじゃないの?」

「ふふ、そうだね。佑樹君も馬鹿だよね。八兎先輩の推薦人でもしていればよかったものを。自分で出てちゃうなんてね」

「ふふ、そうだね。それにしても、兄妹対決か………楽しみだね」

「うん。………あ、それにね。佑樹君が立てた公約がまた面白いの」

「へー、そうなの?なんか、ありきたりなやつじゃなくて?」

「うん、全然ありきたりなんかじゃないよ。むしろ、聞いて驚くほどのものだよ」

「聞いて驚く?たかが、生徒会選挙のための公約で?」

美紗ちゃん。私は、絶対に驚かないよ。とでも言いたそうな顔してるけど、たぶん、佑樹君の公約を聞いたら、絶対驚くから。

「えーと、佑樹君が、立てた公約なんだけどね。生徒会の廃止なんだ」

「え?」

ふふ、ほら驚くでしょ。というか、言葉もでないと言った感じでしょ。

「…………そ、それって本当?」

「本当だよ。というか、美紗ちゃん驚いてるね。さっきまで、私は驚きませんとでも言いたげな顔だったのに」

「私も絶対に驚くことはないだろうと思っていたよ。でも、生徒会の廃止が公約だなんて言われて驚かないわけにはいかないよ」

「ふふ、そうでしょ?」

「真琴ちゃんが、なんでそんな誇らしそうにするかはわからないけど………それにしても、佑樹君もなかなか凄い公約を立てるもんだね。生徒会選挙に出るのに、その公約が生徒会の廃止だなんてね」

「うん、私もね。初めて聞いた時もの凄くびっくりしたんだ。佑樹君が生徒会選挙に出るって言ってくれた時ぐらいに」

「そう。………やっぱり、生徒会選挙は楽しいものになるかもね」

「うん。だからね。早く生徒会選挙の日になって欲しいんだ」





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