第53話
今回の生徒会選挙は、生徒会の中でもとても期待値が高い。
それは、誰かさんのせいで………そう誰かさんのせいで、俺の公約がどういうものなのかを、生徒達に流したから。
………それも、全校集会でね。
本当、なんなの!!あの、生徒会長は、鬼なの?そんなにも俺のことを追いつめたいものかね?
分かる?俺の公約が、生徒会の廃止だって華撫が、言った時の生徒達の反応。それは、あれだよ。こいつやらかしたな。というか、可哀想という感じだったよ。
いや、まあ、別に、俺の立てた公約がなんと言われようが、俺は真面目に生徒会の廃止を考えているのだから。まあ言いけどね!!
………はあ、俺は、誰に対して、ツンデレをかましているしているのだろうか。
「………はぁ……本当どうしたものか………」
「ふふ、どうしたのですか。そんなため息なんかついて?」
そう俺に言ってくるのは、席替えで隣になった。俺と同じ学級委員長である麗華だ。
「………麗華。絶対お前、この状況を楽しんでいるだろ?」
「はて?なんのことでしょうか。ええ、私は、別に佑樹が立てた公約が全校生徒にばれているこの状況を楽しんでなんかいませんよ」
そういいながら、麗華は、ふふと笑うのだった。
これは、最近わかったことなのだが、この学級委員長は、どこか、生徒会長である華撫に通じるところがある気がするのさ。
………人が、窮地に立たされているところを部外者だからって楽しむところとか。そういうところが。
「で、佑樹、正直のところ生徒会選挙の勝算はあるのですか?」
麗華が、少し真剣な声音でそう俺に聞いてきた。
「それは、………正直俺には、わかんないな。勝つかもしれないし、負けるかもしれない。
………まあ、負けるわけには、いかないんだけどね、だって、ほらね…………」
「どうしたのですか?そんな、最後の方の言葉を濁したりして?」
「いや、なんでも、なにさ。ただ、まあ、負けるわけにはいかないなーて」
だって、負けたら、八兎にもの凄く怒られそうだしね。
「ふふ、負けられないということは、もしかしたら、八兎先輩に負けたらどうなるか覚えていてよ。とかそんなふうに脅されているとかですか?」
「いや、俺は、別に、八兎に脅されているわけじゃないよ。でも、ほら、八兎って負けず嫌いだからさ、たぶん俺が負けても、自分が負けた時以上に悔しがりそうだし。………それに、怒られそうだからかな」
「そうですか。でも、佑樹分かっているのですか?もし、佑樹が生徒会選挙で勝ったとしたら、佑樹は、生徒会長になるのですよ?」
「っく、それを言われると痛い」
本当その言葉は、俺の心に刺さる言葉だ。
生徒会に入らないためには、華撫に生徒会長をやらさなければいい。ここまでは、いい。至って普通の考えだから。でも、俺は、真琴ちゃんに負けたくないから、生徒会選挙に出てしまった。そこが、間違いだった。
………これじゃあどの道俺か、華撫先輩が勝ったら、俺は生徒会に入ることになるのだし。というか、もし俺が華撫先輩に勝ったら、俺が生徒会長になっちゃうし。
「ふふ、佑樹、今とても憂鬱な顔になっていますよ?」
「そうか?」
「はい。そうです。………まあ、私は、信じていますよ。佑樹は、しっかりとやってくれるということを」
「…………どうして、そう思う?」
「どうしてですか。別になにかがあってというわけではないのですが、私は、和泉佑樹という自分が、他人との約束は、しっかりと守る人だと思っているからでしょうかね」
………はは、なんか謎に信用されてるみたいだ。
「………まあ、ともかく頑張ってくださいよ。生徒会選挙か」
麗華は、そう言うと、机の上に置いてあった本を開くのだった。
………頑張らないとな。
俺は、漠然とそう思うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます