第6話

「はあー、いっぱい食べたね」

「そうだね。でも、おいしいかった。どっちとも」

「うん」

「じゃあ、帰ろうっか」

「え?なに言ってるの?」

「?」

あれ?俺なんかおかしなこといったかな?

「今からは、運動するためにジムに行くんだよ」

真琴ちゃんが、さも当然のことのようにそう言った。

「はあ?……いやいや、嘘だよね?」

「嘘じゃないよ。だって、さっき佑樹君が私に聞いてきたじゃん」

「あ!」

そこで、俺は、自分で麻琴ちゃんにカロリー大丈夫?とかそんなことを言って、麻琴ちゃんが、食べた分は、運動するとか言っていたことを思い出した。

「気づいた?じゃあ、運動しよ」

「運動しよじゃないよ!別に俺カロリーとか気にしてないし!」

「運動するの!」

「嫌だ!」

「運動するの!」

「いや、だか」

「する!」

「………はい」

「やったー、じゃあ、私がよく通っているジムに行こう!」

「うん、そうだね」

俺は、遠い目をして言った。

……はあ、俺運動苦手なんだけどな。


そして、ジムにて。

そこには、地面に寝転がっている男がいた。

「はあー、な、なんのこれ、きつすぎなんだけど。もう、やだ。僕お家に帰る!」

「なに言ってるの。さあ、次のメニュー行くよ!」

「なんで、そんなに麻琴ちゃんは余裕わけ?」

「別に余裕ってわけじゃないよ」

嘘つけー、なにが別に余裕じゃないよだ。

そんな、特に疲れた様子もないのに!

「さあ、ほら立って。お兄ちゃん!」

「わ、わかったよ。ここは、お兄ちゃんって呼んでくれたことに免じて立ってあげる」

「ありがとう、お兄ちゃん!」

笑顔でお兄ちゃんって呼ばれただけで、動いてしまう俺って本当チョロいな。


そして、数分後。

「や、やっと、終わったー!」

「うん、終わったね」

「うん、でも絶対これ、カロリー過ぎた分よりも、多く運動したよね?」

「そうかなー?」

やだ、この子確信犯だわ。

腹筋100回、背筋100回、ランニングマシーンを使っての、1500メートル程度走り、そのあとに、スクワット30回、そして、ダウンと称してランニング3分間。

どう思う?これ絶対カロリー分越した気がするでしょ?

うん、絶対に越した。

というか、なんなの麻琴ちゃんって。

中学校3年生の時は、ゲームを一緒にやるだけだったけど、それでも、俺の中のイメージでは、清楚系だったんだよ。

率直に言うならば、こんなアグレッシブな子だと思ってなかった。

家族になると、わかないことがいっぱいわかるなー。

「じゃあ、帰ろうか」

「……うん。でも、もう少し休ませて」

「わかった。でも、佑樹くんって貧弱だね。じゃ、先に会計済ませておくね」

「うん、よろしく」

女の子に貧弱だね。って言われる男って情けないなけすぎる。

あ、いつのまにか、お兄ちゃんから佑樹くんに戻ってるし。というか、麻琴ちゃん自分でお兄ちゃんって呼びたいんだけどいいかな?とか言っておきながら、なかなかお兄ちゃんって呼んでくれないな。


会計を済ませてた麻琴ちゃんが、戻ってきたので、一緒に帰ることにした。

ジムから出てすぐ、麻琴ちゃんが、なんかカードみたいなのを俺に渡してきた。

「んーと、会員登録カード?って、会員登録カード!?」

「うん、そうだよ。だって、佑樹くん貧弱だもん。だから、これからも、私がカロリー取り過ぎた時には、一緒に頑張ろう!」

「一緒に頑張ろう!じゃないから。っていうか、会員登録とか聞いてないし!」

「まあまあ、いいでしょ。だって、体力も尽くし、運動不足でもなくなる。そう!言うならば、一石二鳥だよ!」

「はは、そうだね……」

この時俺は決めた、もう絶対に麻琴ちゃんと一緒にご飯食べる時は、カロリー高いものは食べさせないと。

だが、そんなことが無理だったと気づくのは、もう少し後のことである。

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