第33話

俺は近々生徒会長選挙があると言う噂を聞いた。

…………でもあと3ヶ月後なんだけどね。

最初その噂聞いた時は、もうそれは嬉しかったよ。勝手にやることになった生徒会副会長をやらなくて済むからね。でも、あと3ヶ月はやらないといけない、それが分かった時の気持ちってわかる?

もの凄く絶望するよ。例えるなら今月発売だと思ってた本が1年延期されるぐらいには。

「佑樹なんでそんなにげっそりした顔なんだ?」

隣を歩いていた博之が聞いてくる。

「なあ、博之。生徒会選挙ってどんなんだと思う?」

「俺の質問には答えないのね…………それにしても唐突だな、生徒会選挙ねえ、中学校とあんま変わんないじゃないか。どうせ、生徒会選挙なんて人気投票なわけだし。それにしてもお前がそんなこと聞いてくるなんて珍しいな」

博之は、俺と同じように生徒会選挙を人気投票などとしか思っていない。

「そうだな。博之も知ってるだろ俺が生徒会副会長になったこと」

「ああ、それは勿論。というかそのこと知らない奴とかいるのか?」

「それはわかんないな」

「で、それがさっきのお前が言ったこととどうやって繋がるんだ?」

「博之も知っての通り俺って生徒会に対して悪感情しかないんだ。だから成り行きで生徒会副会長になったけどさ、やっぱりやりたくないんだよね。だから、生徒会選挙であの人を華撫に勝てる人がいるのなら俺は生徒会副会長じゃなくなるからさ。だから、気になったんだ。生徒会選挙がどんなふうにやるのかってね」

「へー、そう。でも、それ聞くなら俺じゃなくて2年生に聞いた方がいいんじゃないのか?」

「あ、確かに」

「はは、そんなことも忘れていたのか?まあ、そんなことは、どうでもいいとして佑樹、実は俺今月も金欠なんだ、だから金」

「知らん!」

「最後まで聞いてもいいと思うんだけど!」

「っは、どうせいつもと一緒のこと言うんだろ?」

「ち、違うし!だからきん取ろうぜ!って言おうとしたんだし」

「はいはい、その言い訳は苦し紛れに言うにはよく出来たんじゃないか?」

俺はすこしからかい気味に言う。

「もう、知らんわ!俺は帰るじゃあな!」

博之は、走っていってしまった。

……なんか久しぶりに博之とこんなに話したな。

最近なにかと忙しいからな。

それにやっぱり博之と話すのって楽しいな。

◇◆◇◆

次の日。

俺は、生徒会室の副会長の席で死んでいた。

生徒会副会長の仕事が多すぎて、もしかしてこれって生徒会長よりも多いじゃないかって思ってしまうぐらいに。

ま、本当は、生徒会長の華撫の3分の1くらいなんだけどね。

でも、華撫仕事するのが凄い早いから俺の方がって思っちゃうわけ。

っていうかさ、華撫勉強は出来ないのに仕事が出来るってなんなさ…………

「本当なんでこんなに仕事多いわけ?」

俺は独り言のつもりだったけど、思わぬところから返答があった。

「だって、あなたは生徒会副会長でしょ。私の書記よりも3倍あるからね」

八兎が皮肉気味にそう言ってきた。

「いや、まあそうだけど。でも、八兎だって書記以外の仕事もしてるだろ、例えば生徒会室の掃除とかさ」

「なにそれ、私は雑用とでも言いたいの?」

「いや、そんなこと言ってないぞ俺は。唯さ、自分の仕事以外にも自ら仕事を見つけて行動が出来るって言うのは、凄いと思うから、もし言うならば雑用じゃなくて優用だな」

「っふ、なにそれ、優用って。なんか他に言い方なかったわけ?」

「笑わなくてもいいだろ!こっちだって真剣に考えたんだぞ!じゃ、じゃあ他にどんな言い方があるって言うんだよ」

「優秀でいいじゃない?」

「確かに…………」

「で、こんなことしていていいの?」

「あ、そうだった」

それから俺は必死に仕事に励んだ。そのおかげで、3分の2が終わった。

…………これ本当あと2日で終わるのか?

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