第29話

華撫から送られてきた地図をもとに、華撫の家に向かっているんだけど…………………道に迷いました!

あ、これは俺が方向音痴とかそういうんじゃなくてね、地図に悪意があるんだよ!

と誰に対してなのかわからない言い訳を3回程脳内で繰り返した時だった。

「ねえ、もしかして、佑樹くん道に迷った?」

そう聞いてきた。

「そうみたい………………すいません」

俺は、正直に麻琴ちゃんに道に迷ったことを言った。

「そう。ねえ、佑樹くんその地図貸してくれない?」

「いいけど」

「ふーん、わかった。佑樹くんって方向音痴なんだね」

麻琴ちゃんが笑顔でそう言ってきた。

ねえ、方向音痴だねとか笑顔で言わないでくれます!なんか泣きたくなっちゃうから!

「どうやって、行くかわかったところだし、行こっか」

「うん」

あれー、なんかおかしい気がするな。

普通ここは、きちんと麻琴ちゃん華撫の家に連れていくはずだったのに、逆になってるし。


麻琴ちゃんに、地図を渡してからというもの一度も迷うことなく、華撫の家に着いてしまった。

なんというか、情けない。

「家綺麗だね」

「そうだね」

華撫の家は、閑静な住宅って言葉が一番当てはまりそうな家だった。

「じゃあ、押すよ?」

「うん」

そして、俺はインターホンを押した。

『あ、和泉君たちね。入って』

「あ、はい」

そして、俺たちは、華撫に入った。

家の中は、すごく落ち着く雰囲気感じ俺としてはいいなーと思った。

程なくして、スリッパを履いた華撫が、パタパタと音と共にきた。

「今日は、来てくれてありがとうね」

「はい………………あのーところで、俺はなにをすればいいんですか?」

「ん?ああ、そっか。和泉君なにも勉強用具持ってきてないもんね」

「はい、勉強するつもりなかったからですからね」

「うーん、どうしよう。じゃあ、ひとまず生徒会の書類を終わらせてもらおうかな」

「生徒会の書類ですか?それって量多いですか?」

「ん、いいや、少ない方だよ」

「よかったー」

知ってる?生徒会関係の書類ってやたらと時間が取られるんだぜ?

だから、少ないと聞いて今回は早く終わるーと思った俺だった。

「じゃ、和泉君のは、リビングに置いてあるから、そこでやってもらうとして、麻琴さんは私と私の部屋に行こうか」

「はい」

俺は、華撫の部屋に行けるなんていいなーと少しだけ思った。

ま、いつか機会があった時に部屋に入れてもらおう。ともかく、今は、生徒会の書類を終わらせることに集中するとするか。

そして、俺は、リビングに入って、絶望するのだった。

…………なにが、だ。普通に多いじゃないか。


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