第7話 その少女は
私、山本洋一は困惑していた。
下心アリアリで声を掛けた少女は暴力を受けていた。
こういった話に弱いおっさんは困惑しつつも、下心抜きで何か力になれないか、助けられないかという気持ちになってしまう。
すると少女から声を掛けられた。
「それよりも、おじさん声掛けてきて、どうせアレが目的でしょ? エッチは出来ないけど体触るくらいならいいよ・・・その代わり、今日泊まる場所かお金ちょうだい」
そう少女は私の方を向いて、私の顔の方を見ているが目の焦点は定まっていない。
口で言葉を話すものの、心はここにあらず。
こういうのを、心が死んでいるというのだろうか・・・。
私の中で嫌な気持ちが増大した。
こんな若い子がこんな表情をしちゃダメだ。
こういった年の子達は、もっと明るく爽やかな方がいい。
そうじゃなきゃ、居た堪れない。
そして、制服も似合わない。
「ねえ、キミ名前は何ていうのかな?」
「なに?おじさん?もしかして・・・警察?」
「いや、警察じゃないよ。う~ん、ただのおせっかいなおじさんさ」
「ふ~ん・・・」
「ねえ、その殴られたのがお母さんの彼氏からで、そしてさっき泊まる場所やらお金がって・・・やっぱそういう諸々が理由で家出してきたとか?」
「・・・うん、家に居てもママの彼氏から殴られるか、襲われそうになるかだし、それだったら自分で稼ぐしかないし、そうなるとこういう方法しかないし・・・」
少女は遠くを見ながらたどたどしく答える。
その声は、色んな葛藤があるように思える。
「そうかぁ、それは大変だねぇ・・・」
「・・・」
「でも、きみはこのままじゃ良くないと思っているでしょ?」
「はぁ!? ・・・そんなの当たり前じゃない!!」
うん、私も考えなしにストレートに言ったら、凄いキレられた。
だが、その瞬間の少女の瞳には生気が見えた。
まだこの子は完全に堕ちてはいない。
だが、私の一言がいけなかったのか少女は続けざまに喋りだす。
「あんたに何が分るのよ!! いきなり家に現れたママの彼氏とか名乗るおじさんが最初は普通だったのに段々と体を触ってきたり、お風呂を覗いてきたり!」
「それに、この前はいきなり押し倒して来て脱がそうとして、ママが帰ってこなかったら私は何をされていたか・・・」
「けど、ママも言っても全然信じてくれない・・・最近では、こんな事言う私を見る目も段々と・・・」
少女はボロボロと泣きながら語った。
ドラマやマンガか何かでありがちな、ママの彼氏が娘に手を出すパターンだ。
そして、深く傷つく少女。
だが、リアルに遭遇すると居た堪れない気持ちになってしまう。
何とかしてあげたいが・・・
「だからおじさん・・・お金を下さい・・・家に帰りたくないんです・・・」
そして、少女は泣き顔を私に向けて言う。
こんな少女がこんな顔でお金をくれか・・・。
そんな表情を向けられたおっさんは言ってしまった。
「キミにお金は渡せない。けど、力をあげよう」
「力?」
「そう力だ」
そして、私は手に持っていたアタッシュケースを取り出し、横に向けロックしていた金具を解除する。
すると、ガチャンガチャンと二つの止め金具が上がり、私はゆっくりとケースの上ブタを上げていく。
「これは・・・」
唖然とした声を上げる少女
サングラス越しだが自分の中で最高にクールな声で私は言った。
「これが、キミに私から与えられる最高の力だ」
「え・・・おじさん、これ体操服・・・」
「そうだ」
「え?は?・・・何??」
当然の反応だろう。
黒尽くめの怪しい格好したおじさんが『最高の力だ』と言って、アタッシュケースをオープンし中から体操服。
私も正直意味が分らない。
だが、私の能力を使えば・・・
だからこそ、あえてここは強気で行こう
「さあ、着てみるがいい」
「えっ?」
「大丈夫だ。これは変なプレイとかではない」
「いや、体操服ですよね?」
「そうだ」
「着るんですか?」
「そうだ。だって体操服だろう?」
「私が?」
「そうだ」
目に生気を失い悲しみにくれていた少女。
泣きはらした瞳が今では・・・
変 質 者 を見つめる瞳に変わっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます