第65話 治療


「まずは、山本君の知人・・・でいいのか?」


「いえ、正確には部下ですね・・・」


「そうか、坂田雄太君・・・だが・・・既にMの能力で征服の支配下にある。

 これが何を意味するか・・・。

 簡単に言うと、現状ならば影響は無い。


 そもそも征服の支配下に置かれると、その対象の能力・位置を全て把握し、場合によってはその能力を奪い取る事も出来るらしい。


 そして、その上で命令を与え思うように行動させる事が出来る。

 ただ命令も征服下にある状態で視界内に居ないとダメなようだがな。

 つまり、現状は坂田君は我々の保護下に居る限り、Mと接触はまず出来ない。

 だからこそ、Mも今は何も出来ないってわけだ。

 だから安心すると良い。」


そうゴールドさんから説明を受けた。

Mの能力そのものにも驚愕したが、坂田君に今の所は影響は何も無いと聞いて安心した。


待てよ・・・という事は、能力・位置を全て把握しているという事は・・・Mは私らと会う前にどこかで既に征服の支配下に置かれていたという事なのか?


だから、突然現われた?

でも、それだったら最初から連れ去れば良いのに・・・何故なんだろう?


色々と新しい疑問も出てきた。


だが、まずは坂田君に会わないと。


「ゴールドさん・・・坂田君に会わせて下さい」


「それは構わないが・・・一応言って置くが、征服の支配下から逃れない限りは解放する事は出来ないぞ」


「っ・・・そうですか・・・」


「まあ、後は前々から言っていた「封印」のスキルさえあればなぁ・・・未だに手がかりは無しだが」


封印か・・・どこかにあれば良いんだけど。

今の所、コレクションにも無かったし、以前ゴールドさんが持ってきたような超レアな制服じゃないとなぁ・・・しかも、封印というだけあって神職絡みのようだし。


こっちもこっちで考えないとなぁ・・・。


「まあ、とりあえず山本君。まずは自分の肩を治療したらどうだ?」


そう言われて思い出した。

応急処置だけで実際今も凄く痛い。


「この前みたいに看護師なんかの制服能力で治せるんじゃないか?」


「ええ、そうですね・・・」


「今は楓も居るし、この前の看護師の制服で良いんじゃないか?」


「ちょっとまってぇ!! あたしがやる!!」


そういきなり元気よくさやかちゃんが言い出した。

う~ん、さやかちゃんのナース姿か・・・悪くは無いが・・・サイズ的に合うのがあるかな?


「後藤の妹か・・・まあ、俺的には誰でも良いから好きにすればいい・・・」


後ろでは楓さんがニコニコと何か微笑ましい物を見る目で見ている。


「さあ!よういっちゃん!何か出して!」


と言うが、何かあったか・・・。

あっ、そうだ。


これにしよう。


*****


E県中央高等学校 看護科 中間服


能力

筋力:+2000

体力:+2000

耐性:+1500

敏捷:+1000

魔力:+3500

魔耐:+2000

技能:*回復魔法(中) *水魔法 *浄化魔法(小)


状態:正常

所有者:山本洋一(残り期間なし)


*****


うん、これなら回復魔法も付いているし回復出来るはず。

後はサイズ的にもさやかちゃんでも着れる。


そして、空間収納より呼び出してさやかちゃんに渡した。


「あれ?これ普通の制服?」


「いや、これはある学校の看護科の制服で回復も付いているよ」


「へー、やっぱよういっちゃんはマニアなんだねー」


そう言って、さやかちゃんは服を持っていって着替えに行った。


「ところで、山本君。もう一つあまり良くない知らせだ」


「良くないですか・・・」


「ああ・・・実はな、Mがどうも防衛省関係者と繋がっているようだ」


「ええっ!? 防衛省!? ・・・これまた話が大きくなりましたねぇ・・・」


何だろう・・・軍が絡むとかって・・・何かめんどうな話になりそうだ。


「この間のMと一緒に居た黒い連中・・・あれは全部自衛官だった。」


「えっ!? それって・・・私撃っちゃったりしてたけど大丈夫だったんですか?」


「ああ、それに関してはこっちで内々に処理したから問題ない。それに全員生きてはいたからな」


「そ、そうだったんですか・・・」


唯でさえ人を撃ったというのに、しかもそれが自衛官?

かなり衝撃的だ・・・正直かなり動揺している。


「そんなわけだから、これから面倒な事になるかもしれない・・・まあ、後は後藤だな」


「後藤さん?後藤さんがどうかしたんですか?」


「ん?山本くんはまだ知らなかったかのか?」


「えっ?」


一体何の話ですか?後藤さんが何か?


「後藤は・・・あいつは自衛官・・・まあ、正確には自衛官の肩書きは抹消されているが・・・聞いたことあるだろう?Sとか特殊作戦群とか・・・あそこの人間だぞ」


「えっ!?えええええっ!? 後藤さんが特殊作戦群!?」


「ああ、そうだ。あいつの能力は正直使えないが、元からの身体能力やら色々とデタラメだぞ」


「・・・確かに言われてみれば何故か銃持ってたり、妙に動きが良かったような・・・」


「あいつ、これだけ付き合いあったのに言ってなかったのか・・・」


呆れたように言うゴールドさん。


「え、ええ・・・さやかちゃんは知ってるんですよね・・・?」


「ああ、それに関してだが後藤の妹は知らない。前も今の仕事は黙っていると言ってたからな。

だから、黙ってた方がいいかもな。元自衛官ってのは知っているはずだが・・・」


「そうなんですか・・・」


「とりあえず、後藤は味方だとは思うんだが・・・あいつは防衛省・・・というか特戦の上官と何か揉めている感じだったようだしな」


「おっと、そろそろ後藤の妹が戻ってきたな」


するとドアが開いて、さやかちゃんが入って来た・・・こ、これはっ!!


見ると、暗めの緑のチェック柄に、白いカッターシャツに緑のチェックベスト、胸元には赤のネクタイ。

制服らしい制服姿のさやかちゃんが居た。

黒百合の制服も素晴らしいが・・・このチェック柄のブレザー制服も良いな。


そして、ギャル子では無いノーマルさやかちゃん・・・。

もうなんて言うのかクラスの中でも上位に入りそうな美少女っぷりで思わず見入ってしまう。

一緒に机を並べて勉強をしたかった・・・という自分の黒い学生時代を思い出し感情が溢れ返り思わず涙が出そうになるのをぐっと我慢した。


「よういっちゃん・・・着替えてきたよ」


「うん、似合っているよ」


「ありがと」


何故かお互いに照れ照れな雰囲気なってしまっている。

さっきから何か調子が狂ってしまう・・・。


「はやくっ!!はやく見せるのじゃ!!」


するといつの間にか来ていたドクトルAことゴブリン爺が騒いでいた。


「えーっ、何ですか爺さん」


「爺さんじゃないわい!!ドクトルAじゃ!! さあ!回復魔法なるものを見せるのじゃ!!」


「まあなんだ、山本君・・・いちお医療に携わる人間としてやはり興味があるそうだ」


「いちおじゃないのじゃ!れっきとした医者じゃ!!」


うん、本当にやかましいなこの爺は・・・。

まあ、ゴールドさんの仲間だそうだし見せても問題は無いか。


「じゃあ、さやかちゃんいつもの魔法を使う感じで私の肩が直るように念じて魔法を発動して」


「うん、わかった」


そうして、手を私の肩にかざす。

すると肩が濃い緑色の光に包まれて発光し、それが収まったと思うと既に肩は完治していた。


「おおおおおっ!すごいのじゃ!!これは革命なのじゃ!!」


ゴブリン爺が大興奮している。

だが医者にこれを見せるってある意味失敗だっただろうか・・・。

何か色々と利用されたりしないだろうか。


「これなら無理なプレイをしても安心なのじゃ!!」


うん、心配なさそうだった。


「では、怪我も治ったようだし行くか・・・」


そうゴールドさんに言われ私は頷いた。

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