第66話 面会


ゴールドさんに連れられて警察署に到着した。

そうして、私達は部屋に案内された。


部屋は普通の部屋だが、長机とパイプ椅子が6脚。

普通に面談や打ち合わせで使うような部屋だった。


私とさやかちゃん、楓さんとで座って待っていた。

しばらくするとドアが開き・・・。


坂田君が入って来た。


「山本係長・・・」


「坂田君・・・」


そうお互いに呟いた。

いや、今はそれしか言葉が出なかった。


「とりあえず、坂田君も座ってくれ」


「はい・・・」


ゴールドさんに促され座った坂田君。

さて、何から話せば良いのか。

そう思っていると坂田君が口を開いた。


「山本係長・・・あなたは一体何者なんですか?」


そう来たか。

だが、あの戦いを見られていたなら・・・そう疑問にも思うだろう。


「何者か・・・か。一言で言うならば私も能力者だよ」


「能力者・・・山本係長も・・・」


「ああ・・・」


そこで会話が止まってしまう。


私は何しに来たんだ。

坂田君と話す為だろう。


よし・・・ここは。


「すみません、ゴールドさん、さやかちゃん、あと楓さんも・・・席を外してもらって良いですか?」


「ん? ああ、そうだな。構わないよ。皆も良いだろう?」


「えっ、よういっちゃん・・・」


さやかちゃんは嫌そうだったが。


「さやかちゃん。ごめん、坂田君と二人で話をしたいんだ。頼む」


そう頼み込んだ。

ここは男同士二人でちゃんと話したい。


「うん、分った」


そうして、3人は外に出てくれた。


「ふぅ・・・坂田君。窮屈な思いはしてないかい?」


「いえ大丈夫です・・・けど仕事が気になります」


「まあ、そうだよなぁ・・・」


確かにこれから仕事どうしよう。

引継ぎも無くいきなりこれだもんなぁ・・・どうしたものか。

まあ、それは置いておいて本題に入るか。


「さてと、能力者・・・と言ったよね。

 最初にハッキリ言おう、私の能力は制服だ。

 着る制服。

 制服に力が宿る能力とでも言うべきかな・・・あの時の迷彩服がそうだったりするんだ。


 私はね。女性の着ている制服が凄く好きだ。

 だから、その強い思いが能力になったみたいでね。

 制服という能力だ。


 可笑しいだろ?」


「・・・可笑しいですね」


ふふっと坂田君が笑った。


「坂田君は・・・母乳フェチってやつなのか」


「恥ずかしいですけど・・・そうです。」


「まあ、人はそれぞれ好きなものがあると思う。この能力者になって色んなやつと会った。

 おっぱい、おしりが好きなやつ。

 眼鏡フェチ。

 ああ、腋毛フェチも居たな。

 アナル好きやら後スカトロも・・・。

 本当に人間ってやつは業が深いよなぁ・・・。

 でも、好きになっちまったもんはしょうがないよな。


これって本能で・・・止められないもんなぁ・・・。

 今更生き方を変えるわけにはいかないよな」


「ええ、そうですね。僕も・・・それが生きがいでした」


生きがいか・・・。


「だが、この能力を手に入れて暴走した人間も見てきた。

 他人に迷惑掛ける、巻き込む・・・そういった人間を私らは狩って来た」


「山本係長・・・じゃあ、僕も狩られるんですか?」


「狩る・・・と言っても能力を消させてもらう。記憶ごと・・・だから能力を手にしてからの記憶は消える」


「それは・・・嫌ですね。けど、拒否権は無いんですよね?」


凄く悲しい目をして言われた。

もう憎しみではない・・・諦めが混じった目だ。


「ああ・・・ただ元に戻るだけだ」


「そうですか・・・楽しかったな」


そう言って、椅子に深く座り空を見つめる坂田君。


「そうか、だがやっぱり何も知らない関係ない人を巻き込むのは頂けないな」


「そうですよね。でも、僕は多分人生の中で一番満たされた気持ちになりましたよ」


「・・・そうか」


「でも、一番の収穫は山本係長と本音でお互いの性癖が知れた事ですかね」


そう言って、坂田君は笑顔だったが目には涙が溜まっていた。


「坂田君・・・私もだ」


「山本係長・・・僕は自分の性癖を言った人は今まで誰も居ません。

 恥ずかしいのもあった。

 人に知られたらバカにされるんじゃないかと、引かれるんじゃないかと」


何だろうイケメンの坂田君でさえそう思うのか・・・。

彼なら受け入れられそうだけども。

でも、気持ちは分る・・・私もそうだった・・・いや、今でもそうだ。

ただ、同じ能力者仲間で理解があったから気が楽になっているだけかもしれないが。


「坂田君、私も同じだよ。

 私はたまたま似たような能力者に出合って、それで上手く行っただけかもしれない」


「山本係長・・・もっと早く知りたかったです・・・あなたの能力の事・・・そしたらもっと違った結末もあったかもですね」


「そう・・・だな。

 だが、Mに目を付けられなければ・・・また違ったかもな」


「M?」


「坂田君を連れて行こうとした男だよ」


「あの人ですか・・・何か無意識に引き込まれるような人でした・・・何者なんですか?って聞いても記憶消されるなら意味ないですね」


そう言って、はははっと笑った坂田君。


「そうだね。けど、私らと会う前に坂田君は会っているはずだよ」


「えっ? あの人とですか? そんな事・・・ない・・・は・・・ず? あれ?」


そう言って、坂田君が頭を急に抱えた。


「おい!? どうした坂田君?」


「あれ?あった事・・・無いはずなのに・・・会ったことあるような?」


「どうしたんだ!? これは・・・記憶が混濁しているのか?」


「そうだ! あの時・・・駅で落した財布を拾った時に・・・」


坂田君が顔を抑えてびっしょりと冷や汗をかいていた。


「思い出したのか??坂田君!」


「はい・・・何となくですが・・・。

 あれは、あの日・・・駅で財布を拾ったんです。

 目の前の人が落して、そして渡した時に・・・何か記憶が一瞬飛んだような感じになっ・・・て?」


あれか・・・その時に目が合って征服能力が発動したのか。


「確か・・・そうだ! その時に言われたんです。

 君の能力は強化されれば僕に近づける。

 まずは様子を見せて貰おうって・・・意味が分らなかったですが・・・確かにあの時の人でした!!」


色々と気になる事も言っているが・・・やはり事前に合っていたのか。

そして、征服されている状態になったのか。


「そうだったのか・・・とりあえず坂田君。君は今、やつの能力の掛かっている状態だ。

 征服という・・・まあ、やつに合うと支配下に置かれる。

 つまり操られるというわけだ。

 だから、しばらくは保護されたままだろう」


「そうなんですか・・・」


「ああ・・・だから、しばらくはここから出られない」


「山本係長・・・すみません」


「いや、いいんだよ。仕事は・・・まあ、何とかするよ・・・さて後は・・・」


カードを取り出す。

坂田君の能力を消させてもらう。

何だろう・・・ようやく腹を割って話せたし、何かこういった趣味趣向でももっと意外と仲良くなれたのかなと思ったのになぁ・・・。


手の掛かる弟みたいで・・・ってこんなおっさんが兄だと嫌か。


「山本係長・・・能力と記憶消去なんでしたね」


「ああ、すまない」


「何言っているんですか、謝るのは僕の方ですよ。

 僕はこの間の記憶無くなるんですよね。

 じゃあ、会社の飲み会の時にでも、上手く誘導して僕の性癖ひっぱりだして下さいよ!」


そう笑顔で言われると・・・辛い。


「分った・・・分ってるよ」


「係長何泣いてるんですか・・・。

 係長は僕にとっての理想の上司で、あと兄みたいな感じなんですよ。

 もっとしっかりとして下さいよ!」


「ああ・・・私にとっても坂田君は出来る部下で弟みたいなもんだ」


そう言って坂田君に近付き額にカードを当てた。

発光するカード。


「これで終わりなんですね・・・係長・・・ありがとうございました」


「気にするな。だって私は坂田君の上司だし兄だからな」


最後に坂田君はニコっと笑顔で返してくれた。

そして、バタっと倒れ込んだ。


これで・・・終わったのか。

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