第67話 後藤家
「終わりました」
「そうか・・・ご苦労さんだったな」
坂田君の能力回収が終わり、部屋を出て外にいたゴールドさんに伝えた。
後は警察でしばらく保護するらしい。
もしかしたら、能力が消えているからMの征服も意味が無いから大丈夫かもしれないと言っていたが・・・どうなるか分らない。
とりあえず、坂田君の仕事にも影響が出ないように上手く会社には連絡してくれるそうだ。
色々とあって本当に疲れた。
帰ろうかと思ったが、この場で解散するのもあれだし・・・折角手伝ってくれたさやかちゃんだ。
家まで送っていくか。
うん、下心は無いよ?多分・・・。
「さやかちゃん帰ろうか」
「うん。送ってくれるよね?」
おおっ、まさかの向こうからのお誘い!!
これはもう喜んでだな。
「もちろんだよ。折角色々と助けてくれたし、それくらいさせてくれ」
うん、イケメンだったら完璧なセリフだが・・・残念ながらフツメンのおっさんだったりする・・・。
それにしても、さやかちゃんは今は黒百合の制服にまた着替え直している。
う~ん、こんなお嬢様学校のお嬢さんを連れて歩くのか・・・。
まあ、傍から見たら若い親にしか見えなくも無い・・・か。
そうして、二人で歩いて警察署を後にした。
心なしかさやかちゃんの距離が近い気がする。
「ねえ、よういっちゃん」
「どうしたの?」
「家には今誰も居ないの」
な・・・なんだと!?
これはどう言う意味だ・・・・あれか!家に上がってあんな事やこんな事が始まってもOKですよ的なアレか!!!!
しかし・・・後で後藤さんにバレたらヤバイよなぁ・・・。
しかも特殊作戦群の人って言ってたな下手な事したら逃げられないよな。
後は年齢的にもヤバイよな。
いや、あと1年経たずに卒業だから大丈夫かもしれないが・・・。
でも、年齢差的にも・・・ああっ、私、山本洋一始まったかもしれない!!
「あのね。あたしの両親って居ないの」
「えっ?」
どういう事?
「あたしがまだ小さい時に事故で死んじゃってね・・・それで、兄貴は給料が出るからって自衛隊の学校にも行って、自衛隊に行って・・・今では何か防衛省関連の会社で働いているって言ってるけど、昔は殆ど家にも居なかったの」
あれ?何だ・・・予想以上に重たい話・・・?
「そうだったのか・・・」
「まあ、そんなわけで、あたしもいい年になると反抗期を迎えるわけで・・・でも、相手が居なかったの」
そりゃあ、一人だとなぁ・・・。
「だから、たまに帰ってくる兄貴には当たりまくり。・・・今思えば、それを黙って受け止めてくれた兄貴は偉かったなぁ・・・」
凄いな・・・後藤さん。
一人でさやかちゃんを支えていたのか。
「それでね。家には誰も居ないから夜な夜な外に出るわけ。家出少女ってやつだよね。
そしたらさ、悪いやつらに絡まれるんだけど・・・その時に助けてくれたお姉さんが居たの。
その人が・・・もうすっごいギャルでね。
黒ギャルって言うのかな・・・でも、助けてくれた上に優しくて暖かくて・・・。
それから、そのお姉さんみたいになりたいっ!って思って普段はあんな感じなんだー」
ほぉ・・・そうだったのか。
だから、ギャルさやかちゃんが出来上がったのか。
私はうんうんと頷いて聞いている。
「最初は始めてアニキに切れられたよ。何だそれは!って・・・そして、そのまま家出して、お姉さんの家に駆け込んだの。
すると何故か家出先がバレてね。」
ああ・・・、多分国家権力使ったな。
「でも、お姉さんが説得してくれて、最初は怪訝そうなアニキだったけど最後はアニキも納得してくれたの」
へぇ・・・どんなお姉さんなんだろう?
何か凄く気になるな。
でも、すごいギャルってどんな何だろう?
ガングロギャル的な?それとも昔流行ったヤマンバ系?
何にしても、後藤さん説得しちゃうんだな。
「ただ、あたしの学校の関係もあって、普段はちゃんとした校則に従って、休みの日は自由にして良いよって兄貴も許してくれたんだよね」
「そうだったのか・・・そのお姉さんが私的には凄く気になるなぁ・・・」
「面白いお姉さんだよ。でも・・・う~ん、今は会えないかなぁ・・・」
えっ、会えないって・・・まさか。
「外国に行ってるから会えないんだよねぇ・・・」
外国か・・・死んだかと思ったよ。
でも、ギャルで外国って・・・何だろう服飾とかデザイン関係とかか?
「でも、いつか会って見たいな」
「うん、よういっちゃんにも是非会って貰いたいよ!」
そう笑顔で返してくれたさやかちゃんだった。
そうして、しばらく色々と話して電車にも乗り、歩いてさやかちゃんの家に着いた。
普通の2階建ての綺麗なお家だった。
「ほお、ここがさやかちゃんのお家かー」
「うん、まあ、殆ど一人で住んでるような感じだけど」
そう言って、鍵を取り出してドアを開けようとする。
すると、私が玄関の横にあるデカイ袋に気が付いた。
「あれ?さやかちゃん・・・何かお届け物?」
「ん?」
そう言って、袋を私が取りさやかちゃんに渡す。
袋を持ってじろじろと見るさやかちゃん。
「んーー、何だろう? 何も書いて無いし怪しいなぁ・・・アニキ宛かな?」
そう言って、玄関の中に入れて入り口にポイっと置いていた。
「じゃあ、よういっちゃん。何も無いけどお茶くらい出すよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて・・・お邪魔します」
「はーい」
そうして、居間に通された。
中は掃除も行き届いていて綺麗な部屋だった。
「じゃあ、よういっちゃん適当に掛けといて」
「ああ、そうするよ」
ソファに掛けて部屋を見渡す。
何か家族写真見たいなのが見えるな。
微笑ましい・・・。
そう思いながら見渡していると・・・。
こんな時に視界にメールアイコンが。
あれか、依頼達成のメールだろうな。
*****
件名:能力回収依頼完了
本文:いつもお世話になっております。
能力回収が完了しました事を確認しましたので、依頼達成のお礼として能力強化を行いました。
尚、過去の分の回収依頼協力分も合わせて付与しています。
制服能力:対象に触れるだけで任意に能力付与が出来るようになりました。(対象が着衣状態でも可能)
制服能力:制服能力の付与期間を任意で設定出来るようになりました。(但し、対象に触れる必要があります)
以上。
それでは、またご依頼の際には宜しくお願い致します。
*****
えっ・・・?
これ無茶苦茶強化されているんじゃないか?
触れるだけで能力付与って、例えば今さやかちゃんの着ている黒百合の制服だって、触るだけで能力付与出来るのか・・・。
しかも、期間を任意で設定って事は無期限にする事も出来るって事だよなぁ・・・。
それって、人間兵器レベルの制服が世に出回る危険だってあるわけで。
何だろう・・・何気に恐ろしい強化な気がする。
とは言っても、今の私じゃそんな事しても何のメリットも無いんだけどねぇ。
国家転覆とか狙っているテロリストとかだったら、凄く欲しがりそうな能力だ。
ああ、でも基本的に女性制服が強力だからなぁ・・・女性だけのテロリストならともかく、女装集団のテロリストとかになったら違う意味で恐ろしいな。
とまあ、どうでも良いことを考えていると。
さやかちゃんが飲み物を持ってきてくれた。
制服を着たさやかちゃんが淹れたお茶・・・そして、配膳までしてくれる。
しかも、自宅!
なんだろう・・・私今リア充してるっ!!
「紅茶だけどいいかな?」
「ううん、全然大丈夫だよ!」
飲んでみると・・・美味い!
これは良い茶葉を使っている・・・詳しくは無いけど。
「美味しいよ!さやかちゃん!」
「よかったぁー」
うん、何か和むわー。
そう思っていると、突然さやかちゃんのスマホが鳴った。
「あれ?アニキからだ」
「後藤さんか」
自宅に上がりこんで、さやかちゃんと二人っきり・・・これってヤバイのじゃなかろうか。
「昨日のピンチの時には出なかった癖に・・・何なの? もしもし、アニキ今頃・・・」
「えっ!?ちょ、ちょっとどうしたの? うん、置いてあったけど・・・居るよ?待ってね」
スマホを私に渡してくるさやかちゃん。
「アニキが代わってって言ってるけど・・・なんか・・・どうしたんだろう・・・」
そう言って心配そうにスマホを渡してくる。
「もしもし、山本ですが」
「おおっ・・・よういっちゃんか・・・すまん。しくじっちまった」
そう息も絶え絶えに言う後藤さん。
何があったんだ?
「どうしたんですか!?何があったんですか?」
「いやぁ・・・、Mってやつはやべぇや。ゴールドさんから聞いてたけど反則」
「えっ?後藤さんMと何かあったんですか・・・あっ、そういえばゴールドさんが・・・」
「ああ、大体は聞いていたようだな。 まあ、つまり俺なりに何とかしようとしたけどダメだったわ・・・。
とりあえず、さやか宛に使えるかと思って渡していたのがあるから、よういっちゃん使ってくれ。
後は・・・あー、さやかと一緒に自宅に居る件は俺が無事だったら詳しく聞かせてもらうからな・・・よういっちゃんなら余計な虫にならないと思ってたけど、こっちもこっちで甘かったな」
ちょっと、何最後に恐い事言っているんだ!!
それはともかく、後藤さんは非常にまずそうな状態だな。
「ちょっと、さやかちゃんとの件は勘違いですよ!! それよりも大丈夫なんですか!?」
「あー、生かしてくれるなら大丈夫だと思う。もう包囲されているからなぁ・・・とりあえず、さやかを頼んだぞ。後はゴールドさんを頼ってくれ・・・後、俺に何かあったら構わず撃てよ」
「ちょっと、何言ってるんですか!諦めないで下さいよ!」
そう言った直後に通話は切れてしまった。
「よういっちゃん・・・兄貴は・・・どうしたの?」
「後藤さんは・・・Mに追い詰められているらしい・・・、けど後藤さんだから大丈夫だよ!」
確信も何も無い。
さやかちゃんを安心させる為に出た嘘?
いや、後藤さんなら・・・という思いもある。
「本当に・・・本当に大丈夫なの?」
「・・・分らない。けど、後藤さんに言われた通り、さやかちゃんを私は守るよ」
そう言ったところで、突然家のチャイムが鳴った。
「こんな時に・・・けど、うちに珍しいなぁ・・・」
嫌な予感がする。
「待ってさやかちゃん、私が出よう」
そう言って、玄関に行くが・・・ドアの磨りガラスから見えるシルエットと色合いはどう見ても複数の黒一色の格好をした集団だ。
これは・・・既にMの手が回っているって事か?
急いでさやかちゃんの元に戻る。
「多分Mの関係者だ」
「えっ!?うちにまで・・・」
「逃げよう」
「でも、うちが・・・」
「ここで暴れるとそれこそマズイ」
「うん、分った。あっ、そうだ。玄関に兄貴からの荷物が・・・」
そうだった。
何か後藤さんが渡そうとしていた物があるって言ってたな。
それを回収して、裏口からこっそりと出る事に成功した。
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数少ない「せいふくしたい!」を読んで下さる皆様。
いつもありがとうございます。
ここでおしらせです。
書き溜めていたのがついに尽きました・・・。
毎日更新は、しばらく難しいです。
なるべく可能な限り更新してしっかりと一旦は完結したいと考えています。
ネタ不足&表現力不足&変態度不足で上手く行きません(泣
才能が欲しい・・・。
せいふくしたい! 平坂 @norihirasaka
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