第8話 制服能力
「変態」
と言われた。
自覚もしている。
否定もしない。
だが、今まで生きてきた中で初めて面と向かって言われた。
そう、私はこれまで制服趣味をひた隠しにしていた。
バレた事は一度も無い。
そう一生懸命自分の立場を守りつつ、趣味に生きれるようにやってきた。
そして、私は手に入れた能力の秘密を探る為、あえて初めて頑張ってみた。
少女の環境と心情に同情したという感情がプラスアルファされて、今回は突っ走ってしまった。
後悔は無いと思って行った行動の結果。
やはり「変態」と言われた。
結構、心にグサッと来る。
だがここは目的の為に耐え忍ぶ・・・だが、ここからどう挽回しよう。
ここはもう色々と設定を考えるしかない。
そして、ピコーンと一瞬で脳内設定が完了する。
私のイマジネーションの強さが発揮されたところだ。
「ふぅ・・・まあ、これを見ると普通は変態と言うだろう」
「・・・」
少女の警戒する瞳、当然だろう
「私はある組織に所属する研究者だ」
「・・・?」
「これは、ただの体操服ではない。特殊な繊維と体操服そのものに超最速コンピュータと制御機器を埋め込み、人間の力をパワーアップさせるスーツだ」
「!!」
驚愕する瞳を見せる少女。
これは・・・いける!!
「まあ、信じられないかもしれないが、私の組織は表立てない理由もあってね。こうやってこのスーツに適合出来る人を探しているのさ。おまけに、素材も貴重だからこういった体操服の布面積なら何とかなる上、一見体操服ならば、持ち歩いていて職質なんかを受けたときも趣味だと言えばいい・・・」
「そ、そうだったんですか」
おし!ちゃんと返事が返って来た!
もう一押しだ。
「ああ、サイズ的にも君は適合者だ。何、副作用や危険な事は何一つもない。もし着てみて違和感を覚えたら直ぐに脱いでもいい」
「け、けど、この体操服を着ることで私の今のこの状況に何かあるんですか??」
「うん?簡単な話だろ、このパワーアップした力で、そのママの彼氏とやらに対応すればいい。そうすれば、この子に手を出すのはマズイと思うだろう」
「た、確かに・・・」
う~ん、我ながらちょっと強引な気もするが、この子なんか信じてくれている。
逆に心配になってしまうこの少女大丈夫かと。
「じゃあ、さ、さっとく、いや、早速着てみようか」
何か体操服をいざ渡そうとすると噛んでしまった。
ちょっと緊張と興奮がまざる妙な感情に陥るおっさん。
「は、はい!じゃあ、あっちのトイレで着替えてきます」
そうして、少女は体操服の入った制服を持って行った。
おっさんの内心はワクテカワクテカ、そして少女の後姿を見送るおっさんの表情はサングラスが無かったらニヤニヤした表情が隠せなかっただろう。
そして、5分ほど経って少女が出てきたが第一声が
「何か体が凄く軽くなったんです!!!」
「ほほぅ、そうか・・・」
えっ、その程度なの?
だが、少女の体操服姿はかなり素晴らしい。
エクセレント。
それにしても、体が軽くなった程度とは・・・確かスペックは・・・
***
K県立高等学校 女子 体操服
能力
筋力:+3000
体力:+3000
耐性:+1000
敏捷:+2500
魔力:
魔耐:
技能:縮地、跳躍
***
う~ん、基準が分らないから何とも言えないが色々と試してみるか。
「じゃあ、あの木を殴ってみようか」
「はい!」
木に近づきパンチを繰出す少女。
まあ、フォームは素人が繰出すパンチというか、少女が「えいっ!」という声が聞こえてきそうな可愛いフォームのパンチだった。
ドゴォォォォォォォン!!バキィィィ!!!メキキキ!!
「えっ・・・?」
木に少女の手が当たった瞬間木霊する爆音と破裂音。
木の真ん中に裂けるような大穴が開いており、衝撃のせいか大穴の両サイドはグワッと広がり、当初の木の幹のサイズを越えてる。
えっと、なんなのこれ?
「わあああぁ!すごいです!!おじさん!すごい!!」
きゃっきゃと喜ぶ少女。
いや、これ普通にヤバイレベルでしょ。
すると周りもこの爆発音のせいかざわざわしだす。
微妙にこっちか?とチラチラと見られ始めている。
これはまずい。
「あー、キミ。ちょっと目立ち始めているから場所を替えようか」
「あっ!はい、そうですね」
そうして、林の奥の方に移動をした。
こっちなら人も少ないだろう。
だが、この能力は過剰すぎないか・・・木の丸太が軽く貫通。
人なら一瞬でピチュンしてしまう。
ちょっと色々と話をしないと不味そうだ。
「さて、これが私の・・・いや、我が組織の能力だ。如何だったかな?」
「ええ、凄いです。何か今でも信じられないというか」
「ははは、そうだろう!そうだろう!」
私も信じられないのだけど。
そういえば、技能で縮地、跳躍があったが、その辺も試し見てるか。
「あー、その体操服には他にも能力があってだな」
「はい!」
うわっ、めっちゃ目が輝かせて見てくる。
まあ、突然の力だし何ていうかヒーローだったり、女の子だったらプ○キュア的な感じなのだろうか・・・。
昔憧れたヒーロー、ヒロインになれた的な。
でも、まあ、最初のあの死んだような瞳が消えている。
それは嬉しいかな。
さて、では能力の確認か・・・
「跳躍という能力があってだな。名前の通りジャンプ能力だ。例えばそこの木の上まで・・・」
「行けましたーー!!すごーい!!たかーい!!」
ああ、木の上まで余裕なんですね。
これ、もっと高く行けるのかな。
でも、ここはこれ以上試す場所が無いし。
とりあえず、もう一つの能力「縮地」か。
マンガやゲームだと高速移動だったり、一瞬で距離を詰めたりする能力か。
まあ、これもそのまんま何だろうな。
「じゃあ、キミ!降りておいで」
「は~い!」
「じゃあ、次の能力の前に・・・いつまでもキミだとあれだね。名前何ていうの?」
「ああっ!すみません。名乗るの忘れていました。私は佐伯鈴(さえき・りん)って言います」
「ほほう、佐伯鈴さんね」
「あの、おじさんの名前は・・・」
「ああ、私は・・・」
何にしよう・・・本名じゃ不味いし、さっき研究者と名乗ったしここは
「とりあえず、ドクターYと呼んでくれればいい」
「ドクターY・・・ですか」
「ああ、組織の中での名前だ本名は名乗れない」
「そっか、うん、そうですよね!!」
あ、何か納得したようだけど、設定上の話で「組織」とか諸々含めて厨二感丸出しだけど、この鈴ちゃんその設定に酔っている感出てきてるな。
これはこれで、私罪深いわ。
「さて、じゃあ能力の話に戻ろう」
「はい!」
「次は縮地だ」
「あ、私知ってます!従兄弟のお兄ちゃんの見ていたアニメでサッと敵の前に移動したり、避けたりする技ですよね!えーっとこんな感じかな??」
と一瞬で私の目の前に現れる鈴ちゃん。
びびっておしっこチビりそうになるおっさん。
おっさん、まだ若いのに前立腺弱いんですよ。
「おおぅ・・・ちゃんと使えるようだね」
そして、鈴ちゃん遠くの木や外灯の近くにシュ!シュ!と移動しまくる。
だが、私の前にもう一度来たときに・・・
「はぁ・・・はぁ・・・」
とかなり疲労が見える。
「能力は使いすぎは良くない」
やっぱ、HPやMP的な物があるのか?
「あはは、やっぱりそうなんですね」
「ああ、何事も限度はある」
多分。
「分りました」
う~ん、そこら辺の技能形の限界値はイマイチ分らないな。
さて、後は・・・
「さて、問題が一つ」
「何でしょうか」
「さっきのパンチを見ての通り、あれでは人を殺してしまう。それはダメだ。」
「・・・でも」
「殺人はダメだ。だから、力の制御が出来るように今日は試してから終わりにしよう」
「はい!」
そうして、あやしいおっさんと体操服姿の少女の特訓が深夜まで続いたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます