第9話 特訓の終わりに


「さて、これで力の制御は概ね大丈夫なようだね」


「はい!ドクターYさんのおかげで、もう誰にも負けないと思うくらい強くなった気がします!」


 深夜の何時間にも及ぶ訓練の賜物か、木をどの程度殴れば貫通して、へこむ程度かなど実験をした結果上手い具合に制御が可能となった。

 だが、公園の木は色んなへこみや破壊された後があり、これは明日は色々とヤバイかもしれない。


「今日の夜の出来事は、まるで夢見たいです」


「そうだな。だが、これは現実だ。その力はキミの物だ」


 とカッコつけて言うものの、私自身も夢であって欲しいと思う能力の結果。

 これ正直色々とヤバすぎるだろう。


 私の能力は色々と考えなければならない。


 簡単に人に与えては、それこそ国を滅ぼせるレベルになるかもしれない。

 特に今回は体操服という格闘能力特化だったものの、学生服系の魔法付与された物はどうなるのだろうか。


 魔法ということもあり、遠距離攻撃が可能なはず。

 それこそ、アニメやマンガであるような大規模魔法的な物を使えるとすると非常にまずい。


 もっとも、制服を着るという問題はあるものの、こんな能力が付与されると分れば躊躇せずに着る人間はいるだろう。


 でも、それがバレると私の日常は間違いなく変わってしまうはず。

 今のままでは過ごせなくなるはず。


 それは嫌だ。


 私はただ普通に日々を生活し、そして制服を愛でる事が出来れば・・・それだけでいい。


 そして、今回のこの佐伯鈴・・・鈴ちゃんの今後の扱いも難しいところだ。

 この能力を使って暴走することは無いと思いたいが。


「どうしたんですか?」


「あっ? ああ、いやちょっと考え事をね」


「はぁ」


「とりあえず、今日はもう遅い家に帰りなさい」


「はい!」


「あ、そうだ。 その後の様子も聞かないといけないから、明日の夜にまた会えるかな?」


「もちろんです!」


「場所は・・・うん、ここだとまずいね・・・」


 辺りはさっきも言った通り、破壊した木だらけ。


「・・・確かにですね・・・」


 鈴ちゃんも苦笑い。

 ふむ、ちょっと離れた場所が良いか。


「じゃあ、町の中央にある神社はどうかな?」


「いいですね。私の家はそこから近いんですよ」


「うん、それならそこにしようか」


 さて、ではそろそろ帰るとするか。

 おっと、そういえば。


「流石に体操服のまま帰るのは不味いよね」


「そうですね。上から来ていた服を着てみます」


 そして、上に服を着る鈴ちゃん。

 うん、体操服を着ているからと言っても、そのまま上に着替える少女の風景って何かエロいよね。

 こういう着衣の風景にもフェチズムを感じるおっさんであった。


「あ、あれ??? あれれれ????」


 突然、声を上げる鈴ちゃん。


「どうかしたのかい?」


「何か・・・能力が消えた気がします・・・」


「えっ?」


「服を上から来た瞬間に・・・」


 マジか・・・

 これは、私の能力の制限では・・・


「ちょっと、そこの木殴ってみて」


「はい」


 ぺチン!


「痛いっ!!」


 あー、思いっきり能力解除されてますわ。

 制服単体で着ないとダメなのか・・・。


「じゃあ、もう一回服を脱いで体操服だけになってみて」


「は、はい・・・」


 そして、再度脱いで木に向かってパンチする鈴ちゃん。


 ドグアァァン!


 綺麗に木に穴が空きました。


 うん、やはり能力の制限があるのか・・・何とも面倒な話だ。


「あー、佐伯鈴さん」


「はい」


「つまりこういうことだ」


「はい、何となく分りました」


「う~ん、とりあえず家までは普通に服を来て、家に入る前にでも脱いでから体操服装備で行けばいいと思う」


「そうですね。そうしたいと思います」


 そうして、微妙な終わりで少女とおっさんの会合は解散した。


 私の思いを能力にした「制服」・・・私の強い思いは非常にめんどくさい能力を与えてくれたものだと痛感した夜だった。


 それにしても、既に夜の2時・・・明日も普通に8時出勤なんだったと思い現実に引き戻されるおっさんであった。

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