第21話 依頼


件名:能力回収依頼


本文:

お忙しいところ大変申し訳ありません。

先日、ご依頼しました通り暴走した能力者を止めて頂きたく思います。

件名にもあります通り、正式には能力回収が主な依頼になります。


まず、今回の依頼に伴って能力回収アイテムとして、山本洋一様の空間収納に使い捨ての能力回収カードを入れています。

使い方は、このカードを5秒間相手の額にくっつければ回収完了です。

相手の生き死に関わらずこのアイテムは発動します。

回収完了後に、このカードは自動的にこちらへ転送されますのでご安心下さい。


そして、今回の依頼に伴い協力者が居ますので協力して依頼を達成して下さい。

協力者とは今週末の土曜日にC県C市のC駅の噴水前に11:00集合となっております。

協力者の方は、過去にも能力回収依頼を行った事があり、今回の詳細は伝えて有りますので詳しくは現地にて確認下さい。


最後に依頼達成後には報酬として、山本洋一様の能力強化を行います。


それでは、宜しくお願い致します。



******


またもや事務的なメールが届いていた。

色々と心配な点が多いのだけど・・・。


そもそも、能力者って事はかなり危険なんじゃないか?


しかも、文章の途中に相手の生き死に関わらず・・・とか恐ろしい事も書いてある。

ただ、協力者がいるのは、ちょっとは安心だ。

経験者らしいし・・・。


それにしても、週末に勝手に予定を入れられるのも困ったが・・・何気に予定は何も無かったはず。

とりあえず、予定は大丈夫か・・・。


後は、週末までに出来るだけ用意をしておくしか無いか。

そう考えながら家に帰り着き、その日は寝た。



そして、週末。


依頼にあった通り、11:00にC駅の噴水前に着いた。

噴水前には一人しかおらず、恐らく協力者と言うのは、あの人だろう・・・しかし、異様な雰囲気の人だった。


身長は190近くあるんじゃなかろうか、角刈りで無精ひげ、何か右手で持って背中に背負っているグリーンの軍用のようなデカイダッフルバックが異様な雰囲気を出していた。

そして、ガチムチな体系である。


しかも、空いた左手を何かグニグニと動かしながら遠くを見つめている・・・。

しかも、めっちゃ真剣に遠くも見つめている・・・。

何か、声を掛けずらい。


そう躊躇しながらも近付いていくと・・・急にその男が振り向いた。

ニカッ!という効果音が出そうな表情で


「おおっ!もしかして、あんたが山本洋一くんかい!?」


声もデカイ・・・。


「あ、はい。そうですが・・・あなたが協力者の方ですか?」


「そうそうそう! 今回は宜しく頼むよ!」


「は、はい」


「あー、緊張してるねー大丈夫だから!おっと、俺は後藤明(ごとうあきら)だ。山本洋一くんだがら・・・やまもっちゃん、もしくは、よういっちゃんかな?でいいかな?」


「え・・・はぁ」


そして、この後藤明さんは近寄って肩を組んできて、バンバン背中を叩いてくる。

痛い・・・


「大丈夫大丈夫! 大船に乗ったつもりでいこうやーー」


うん、何かこのテンション高いガチムチおっさん怖い。


「まあ、とりあえず、ちょっと場所を変えて話でもしようかー」


そうして、このやたらテンションの高いおっさんと、この人に比べたら小さく細いフツメンのおっさんは駅近くの喫茶店へと入っていった。



「さて、今回の依頼だけど。どこまでよういっちゃんは聞いてる?」


「いえ、何も知りませんが・・・。ああ、しいて言えば能力者の能力を回収してとしか・・・」


「あー、やっぱ初回はそうなのかー。じゃあ、俺から説明するね」


「はい」


そして、後藤さんはぐいっとテーブルごしに近付いて話し始めた。


「今回の能力者ってのは、元は俺と能力者狩りをした事がある人物だ」


「能力者狩り?」


「ああ・・・それは俺達が勝手に言っている事だが・・・。

実際、昔はまともだったんだけどな・・・能力に飲まれるというか暴走するというか・・・そういった輩を依頼があって俺達は狩っている」



「なるほど・・・」


「それで、話は戻るが今回の相手は『人形使い』だ」


「人形使い?」


「元々は自分が望んだ相手や形の人形を作り出し、それに擬似的に動かす事が出来る能力だったんだがな・・・」


「だった・・・?」


「この俺達の能力、依頼を行っていくと報酬として能力が強化されるだが、多分そこは報酬としてと聞いてるかと思うんだが・・・」


「はい、今回の報酬で能力強化とメールに書いてありました」


「そう、それだ。 この「人形使い」は能力強化でとんでもない能力強化になった・・・何だと思う?」


「え・・・、人形を作る能力でしかも動かせるんですよね・・・何だろう?爆発させるとか?」


「いやいやいや、何で爆発になるんだよ。 まあ、何かっていうと、元々は人形を作り出す能力だったのが人間そのものを人形に変えてしまう能力に強化されたんだよ・・・」


「え・・・」


「それで、今回の依頼だが、この人形使いは自分が気に入った人を次々と人形に変えていって、自分の家にコレクションしていっているらしい。まあ、拉致監禁ってやつだな」


「え、じゃあ、それって能力回収しようにも私らも人形にされちゃうんじゃ・・・」


「それをどうにかするのが俺達の仕事だ」


予想以上にやっかいな事に巻き込まれた気がする。

これは、どうしたものか。


「ああ、そうそう。人形使いのやつ気に入らない人形が出来ると砕いてすぐ破壊する癖があったな。俺達捕まるとやばいな!はっはっは!」



・・・はっはっは!じゃねぇぇぇぇぇぇ!!

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