第57話 後藤とM
「後藤一尉入ります!」
ドアをノックしてから俺が所属する陸上自衛隊特殊作戦群の作戦群長の居る部屋へと入る。
中には厳つい顔をした男・・・これが俺の上司になる作戦群長だ。
その隣は・・・制服をきっちりと着こなしているが・・・誰だ?どこかで見たことあるような。
「後藤も覚えているかと思うが、榊幕僚長だ」
げっ、幕僚長だったか!
だが珍しいな・・・こんなところまで何しに来たんだ。
慌てて敬礼をする。
「ああ、後藤一尉。楽にしてくれたまえ」
そう言ってにこやかな笑顔で返してくれた。
そして、作戦群長が語りだした。
「さて、呼び出したのは他でもない。
君が動いている「能力者」に関してだ」
「はっ」
「あまり状況として実に芳しくないようだね。我々が求めるような能力者には出会えてないのか?」
「はっ、現状では特戦に関わらず使えそうな能力者は存在しません。どれも利用が困難な物でした」
まあ、実際はよういっちゃんのようなのも居るんだが。
「ふぅ・・・それこそ君のような胸だったかそういうくだらない能力しかないのかね」
「はっ」
「我々は税金で国家の為に働いているのだよ。君をいつまでも遊ばせているわけにはいかないんだが・・・まあ良い。今日は幕僚長自ら来られたのは紹介したい人物がいるからだ。 入ってくれ」
ん?今日は小言を言われるだけだと思っていたが・・・人物だと?
扉を開けて入って来たのは・・・若いな。
顔もえらく整っているが、何やら雰囲気的にカタギの人間じゃねぇな。
「この方は我々の協力者だ・・・名前はMという事にして置いてくれ。本人もそう了承している」
Mねぇ・・・。
「Mはまず警察にマークされている。だから君の友人である警察の人間にも他言無用で頼むよ」
「はっ」
「まあ、そもそも警察と我々防衛省の考え方が根本的に違うからなぁ・・・我々は能力は有効活用すべきだと考えているのに、警察の連中は治安維持だなんだと体裁ばかり気にする」
はぁ・・・実際俺もこの点に関しては警察に賛成なんだがね。
制御できるか分らない能力者を軍事利用なんてするもんじゃないと思うけども。
「まあ、それはともかく。このMの能力は今後我々で研究活用して行く」
「はっ」
「だが、その前にだ。 このMが是非とも君と話をしたいらしい・・・」
話だと?
どういう事だ?
「ええ、初めまして後藤一尉。聞きましたよ~特殊作戦群でも随一の兵士!世界各地を点々とした猛者だとか・・・素晴らしいですね」
「いえ、それほどでは」
「いやぁ・・・是非とも私の側近になってもらいたい・・・」
そう言った瞬間瞳が紫に光った。
これはヤバイ!!
そう思った瞬間、目を剃らした。
「チッ・・・」
舌打ちが聞こえたが・・・やはり目を見ると駄目なタイプの能力か。
「一体どういうつもりでしょうか?」
「いやぁ、流石は歴戦の兵!! 一瞬の判断が素晴らしい!」
「流石に危険を察知する能力には自信がありますので」
だが正直今のはヤバかった。
これは早々に退散した方が良さそうだ。
「作戦群長! まだ私は予定がありましたのでこれで失礼します!」
そして、クルっと身を返して出て行く。
「待ちたまえ! 後藤一尉!!」
聞こえない聞こえない。
即座に去ることにした。
「う~ん、行ってしまいましたねー」
「申し訳ありません。M様」
「あー、いいよいいよ。どうせ基地の中なら直ぐに捕まえられるでしょ?」
「はい。直ぐに手配致します」
「いや、まずは僕の兵士が欲しいからそっちからにしてよ。僕にとっての飛車?角?それともクィーンかな優秀な駒は最後に揃えたいな。
僕は好物は最後に取っておくタイプなんだ」
「はい、承知しました」
廊下を猛スピード走り抜けていく。
ヤバイヤバイヤバイ。
あれは絶対にヤバイやつだった。
可能性としては、作戦群長も幕僚長もあのMってやつの能力で催眠状態か何かで操られている可能性が高い!
それに、あいつは俺にもその能力を使おうとしていた。
とりあえず、捕まらないように出来ることをしないと・・・
そして、自分のデスクに辿り着いた。
「あれ? 後藤一尉早かったですね」
「おお!山城!! お前はもう帰りか!!」
「は、はい。どうしたんですか?なんか焦ってません?」
さっき届いていた荷物・・・うん。
これで何とかなれば・・・。
「山城!いいか? この荷物を妹に届けてくれ!!」
「えっ?自分で行かれないのですか?」
「すまん、今急いでいるんだ。俺の家は分るだろう?頼む」
「わ、分りました!」
部下の山城が丁度居て助かった。
多分、アレは妹経由でようっちゃんに届くはず。
後は・・・妹に・・・さやかに繋がれば。
だが、まだ授業中か。
基地外まで逃げるか・・・いやあいつの目的がまだ分らない。
とりあえず基地内で逃げるのと情報収集しかないか。
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