第58話 追跡


さあ、今日は土曜日だっ!

というわけで、後藤さんと約束していた土曜日になったのだけど、待ち合わせ場所の歓楽街にある公園にはまだ来てないようだった。


とりあえず、ケータイでもいじりながら待っていると。


「だーれだっ!!!」


といきなり、目を隠される。

この下から無理やり手を伸ばしている感じと背中に当たる大きな柔らかい塊。

何よりこの声は・・・


「さやかちゃんでしょ」


「せーかーい! 何で分るのーーー!」


と振り向くと。


ノーマルさやかちゃんだった。

だが一番驚いたのは。


黒百合女学園大学付属高校の制服!?


あの超超レアな制服でしかも、超お嬢様学校じゃないか!!


「さ、さやかちゃんその制服は・・・」


「あー、これねー」


「どこで盗んできたの?」


「こらーーー!! 私は立派な黒百合の生徒ですぅ!!!」


頬を膨らませて怒るさやかちゃん。

だがしかし、ギャルでは無いノーマル仕様のさやかちゃんで、しかもこの制服を着ていると強烈なまでに可愛い。


「しかし・・・まさか黒百合のお嬢様だったとは・・・」


「ふふん!よういっちゃん驚いたでしょ!」


「うん、これは正直驚いた。その制服卒業したら下さい。」


「嫌!! この変態! 制服オタク!!」


チッ、かなり勇気を出して言ったのに酷い返しだった。

変体は心にズブリと刺さる。

制服オタクは否定しない。


「まあ、それはそうと・・・後藤さんは? それに、何で制服&普通のさやかちゃん?」


「あー、何かね。アニキ急に来れなくなったって。それで代わりにねー、しかも私今日は学校だったしさ」


「なるほど、土曜日なのに大変ねー」


「いちおこれでも受験生なんだけど」


「ああ、そう言えばそうだったね」


「まあ、余裕だけどねー」


う~ん、普段のギャル子からは想像出来ないが・・・。

それにしても、この飲み屋街でもある歓楽街で黒百合の制服でこの時間から出歩くのはヤバくないか。


「さやかちゃん、その制服のままでここだと流石にヤバくない?」


「やっぱ、そうだよねぇ・・・」


「う~ん、どうしたものか・・・あっ!」


「何?」


「あそこのお店で服買っちゃおうか!もちろん私のオゴリで!」


「えっ!? いいの? でも、何か悪いよぉー」


「いや、いいよいいよ。今回は協力して貰う訳だしバイト代みたいなもんだよ」


「そう?じゃあ、やったーー」


うん、今のさやかちゃんになら湯水の様にお金を使えるわ。

清楚仕様のコーディネイトをしよう。うん。


そうして、お店に入り服を選んだ。

何かデートみたいだなぁ・・・。


色々と悩んで幾つか候補が決まり、さやかちゃんが試着室へと向かった。


「よういっちゃんも一緒に来て! 折角だからよういっちゃんが決めてよー」


という何か思わず顔がニヤニヤしてしまうようなシチュエーションに戸惑いつつも付いて行った。

バサッバサッと服の脱げる音が聞こえる。

そして、試着室の下の方に落ちる制服のスカート。


これだけで、何か凄くドキドキして来た。

黒百合の制服が落ちていく・・・もう大興奮です。

下から見える落ちた黒百合のスカートこれ触ったら怒られるかな。


しばらくして、シャーッとカーテンを開けて出てきたのは下は白のロングスカート、上は淡いブルー系の服。

うん、何か爽やかでいい感じだわ。


「どうかな?」


「うん、凄く良いと思うよ!」


「惚れた?」


「惚れた惚れた!!」


「もう、よいっちゃん褒めすぎー、照れるじゃないかー」


うん、これはマジで惚れてしまうわ。

ギャルじゃないさやかちゃんは本当に可愛い。

なのに何故ギャルになるんだろう。


「じゃあ、よういっちゃん。これに決めちゃうね」


「うん、いいよ」


そうして、会計を済ませる。

カード一回払いで。


さやかちゃんからは、「おお、大人だー」と言われてちょっと嬉しかった。


何かもう、このまま食事に一緒に行って帰りたい気分だ。

もう今日はデートでいい・・・そう思っていたところ。


「あれ?坂田君?」


「ひいろちゃんのお母さん?」


「「え?」」


二人揃って声が出る。

そう私らのちょっと先に坂田君が女性と二人で歩いていた。

しかも、さやかちゃんも知っている人も居たようだ。


「あれ?さやかちゃんの知り合いの人居たの?」


「うん、よういっちゃんも知り合いの人居たの?」


「あの前を歩いている細身のスーツ姿のイケメンの男は私の部下の坂田くんって言うんだけど・・・」


「えっ!? 隣に居る人は私の同じクラスの友達でひいろちゃんのお母さんだよ」


んー、どういう関係なのだろうか。

というか、あの距離感は明らかに怪しい・・・。

それにしても、そのひいろちゃんのお母さんってのは赤ちゃんを抱えているようだけど。


「実は親戚とか?」


「う~ん、そうかもしれないよねぇ・・・」


そう見ていると二人はある建物の前で立ち止まり入っていった。


「よういっちゃん・・・あそこって・・・ら、ラブホテルってやつ?」


「まあ、そうだね」


坂田君・・・まさか不倫とかしているのか・・・イケメンで爽やかないい男なのに。

何か凄くショックだわ。


「ねえ・・・どうすればいいの・・・」


とさやかちゃんの顔を見ると目が真っ赤になっている。


「ちょ、さ、さやかちゃん!?」


「ひいろちゃんのお母さんがあんなことするなんて・・・」


「うーん、私も正直なところ坂田君がこんな事するなんて思えないんだけど」


「ひいろちゃんのお母さんって、先月妹が生まれたばっかりなんだよ!!なんでこんな事するの!?」


さやかちゃんが何かパニックになっている。

でも、確かに人妻に手を出すなんて・・・しかも赤子連れて不倫って・・・坂田君・・・。


「よういっちゃん!追いかけよう!!」


「えっ!? でも、ラブホだよ!!」


「大丈夫!よういっちゃんとなら大丈夫!」


何が大丈夫なんだ!?

でも、確かに私も気になるし心配だ。

行くか。


「じゃあ、行こうか」


「うん」


そうして、さやかちゃんと二人でラブホテルに突入した。

あ、でも、見た目でさやかちゃん引っかからないだろうか・・・。


そう思って入ってみると、中は各部屋のパネルが有り。

そこのボタンを押すと部屋を決められるタイプだった。

良かったフロントが無くて・・・これなら大丈夫だろう。


「よういっちゃん。私こういうところ初めてだから・・・どうすればいいの?」


ありゃ、ギャル子なのに意外とこういうところは知らなかったのか。


「あー、この好きな部屋のボタンを押せばその部屋に入れるんだけどね・・・でも、多分今点滅している部屋は先に入った人だろうから・・・多分この部屋に坂田君は居るね。

だから、丁度空いているこの隣の部屋に行くか」


ポチっとボタンを押す。

そして、通路の上にある誘導灯が光る。


「この光に沿って行けば良いんだよ」


「何か・・・よういっちゃん慣れてるね・・・」


凄いジト目で見られる。


「ま、まあ、これでもおっさんだからな。人生経験豊富なのだよ。ははは」


「何かよういっちゃんの癖になまいきだーー!」


さやかちゃんにわき腹を軽くポカポカ叩かれた。


「ふふふ、お子様には刺激が強かったかな?」


ニヤニヤ笑いながら言ったら、結構本気のパンチが来て痛かった。

そんな感じで部屋に到着。


「うわーーー!! ひろーーーい! ベットも大きいし! うわっ!!お風呂スケスケじゃん!!えろーい!!」


何か楽しんでいるさやかちゃんが居た。

しかし、冷静に考えると現役JKとラブホか・・・犯罪だな。


まあ、とりあえずベットに腰掛ける。

これが普通に付き合っているのなら、先にシャワー浴びてきなよと言いたいところだがそうは行かない。

というか、これ後藤さんにバレたらかなり怒られるんじゃ・・・。


「さてっ!よういっちゃん!今からどうしよう」


うん、黒百合の制服に着替えて写真を撮らせて欲しいなと言いたいが・・・そんなわけにはいかない。

さて、勢いで入ったもののどうしよう。


部屋にあるコップを壁に付けて聞き耳でも立てるか?

あ、そういえば・・・。


空間収納に入っていたのがある。


聴診器。


うん、ナース装備の必需品だと思ってちゃんとした本物だったりする。

これで聞こえないだろうか・・・。


「これでどうかな?」


空間収納より取り出して、さやかちゃんに見せる。


「おおっ!よういっちゃん!これはいけるよ!!」


早速、2個取り出して二人して聴診器を装着し壁に当ててみる。


「よういっちゃん・・・何かスパイみたいだね~」


「そうだねぇ・・・」


本来の目的を忘れていないか?

でも、聞こえてきた会話は・・・

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