第43話 超接近戦


「ゴールドさんっ!?」


そのまま衝撃で倒れこむゴールドさん。

見た感じの外傷は無いようだが気を失っている程度ならいいんだが・・・。


「ぐははは!!次はお前だぁ!!」


今度は近くにあったイスを投げつけようとする。


「やらせるかっ!」


手元を狙い打ち込む。


ダダダダッ!!


「ぐあっ!!ちくしょーー!」


上手い具合に右手に当たった。

そのおかげで、手に持っていたイスは落下した。


だが、Sが左手に持っていた銃を構え直しこちらを狙う。


バンッ!!


ぐっ・・・あっ。


弾が左肩の上をえぐる。

一瞬、スッとした感覚の後にじわじわと熱くなる。

それから続く痛み。


やられた。


「ぐっぐふぅ・・・これまでのようだなぁ・・・」


見ると丁度、相手の銃のスライドも解放されている。

丁度弾切れのようだった。

助かった。


だが、肩が超絶痛い。

意識が飛びそうなくらい。


「どうしたもう終わりかぁ?」


ニヤニヤしながら近付いてくるSの能力者。


「中々元気があってよろしかった!! 褒めてつかわそうゲヒャヒャヒャ!!」


くそぉ・・・何か気持ち悪いやつだ・・・。

しかも、じわじわと近寄ってくる。


「お前のような元気のあるやつは男女問わず大好きだ。だから・・・お前を俺のおもちゃにしてやろうグハハ!!」


そして、近付いてきた能力者。

すると目が赤く光る。


あれ?もしかして、これが言っていた能力か?

Sは確か能力を使うとマゾになり言う事を聞くんだったけ?


だけど、私の制服能力で無効になるはず・・・。


「さあ、これでお前は俺のおもちゃだ!! こっちに来い!」


うん、全然効いてない・・・。

ここは乗らせて貰おう。


「は・・・い」


「ぐふふふふふ!!! おいおい!!さっきまでの元気はどうしたぁ!! さあ、俺の前で全裸になって尻でも振って貰おうか!!

 いや、その前に肩の怪我のおかえしか? 

 う~ん、こういう殺し合いの後にプレイに持っていくのも新鮮でいいな!!実に興奮するっ!! ぐへぇぇぇぎゃははは!!」


うわぁ・・・勘弁してくれ。

そして、私はSにどんどん近付く。

アレを使う!


「ぐへへ、ん? おい、そんなに近付かなくてもいいぞ。 おい!おいっ!!」


そう、もう目の前まで来た。

この距離なら効果も出るだろう。


そして、私はSの目の前に手をかざす。


「死ね!」


私の着れる迷彩服の制服能力に唯一ある魔法。

手からガスバーナー程度の火しか出ないショボイ魔法だと思っていたが、この距離なら行けるはず。


火魔法発動!


手からガスバーナーのような火が強くゴオォォォォ!と放出される。

そして、Sの顔面が焼かれる。


「ぐあぁぁ!!熱い!!やめろっ!」


「もっと喰らえっ!!」


更に近付いて喰らわせる。

相手が暴れ、私をどんどん殴ろうと蹴ろうと逃げようとするものの離れない。


喋れなくなるまで焼き続ける。


そして・・・



・・・物言わなくなった。


顔面を焼いたおかげか、酸欠になったのか、喉、灰まで焼いたのか分らないが、これは流石に死んだだろう。


相手が能力で油断してくれたおかげか助かった。


だが、臭いが酷い。


焼いた際に出た油が私の顔や体にまで付いている。

人体の焼けるくさい臭い。

早く風呂に入りたい・・・。

人を殺したことよりも不快感が勝る・・・。


そして、肩も痛い。

血が止まらない。


これでもう一人まだ能力者が居ると思うとやってられないな。


それよりも、まずはゴールドさんだ。

ゴールドさんの近くに寄る。


「ゴールドさん! ゴールドさん!!」


近付き頬を叩く。


「ん・・・んん~、山本くんか・・・すまない。気を失っていたか」


「ゴールドさんこそ大丈夫ですか?」


「全身が痛いな・・・すまない、ちょっと動けそうにない」


そして、ナイスミドルなおじ様はハハハっと笑う。

負傷してても様になるな。


「ははは、私もちょっと厳しいです」


「山本くん!肩やられているじゃないか!」


「大丈夫と言いたいですが・・・痛いです」


「マズイな・・・ああ、Sは・・・・」


とチラリと部屋を見て、Sのぶっ倒れている体を見つける。


「山本くんがやったのか・・・?」


「ええ、ギリギリでしたが」


「凄いな・・・」


「大変でした」


「ははは、だろうな」


さて、色々と話すものの何とかしないと。

ここは、私の制服能力で・・・


白衣に変身!


「おおっ! ビックリしたぞ」


「この制服の能力で治療します」


「・・・なるほど、治療と浄化か」


「ええ、やっぱ鑑定で見えているんですね」


「ああ」


そして、ゴールドさんに手をかざす。

ボワッ、と青い光に包まれる


「おお、何か心地よいな」


そして、自分の肩にも治療を掛ける。


うん、ちょっと楽になったか。

止血程度だな。


「ゴールドさんどうですか?治療の能力だとこの程度みたいなんですか」


「うん、ちょっと・・・痛っ。動けはするようになったが完全回復には遠いな・・・」


「そうですか・・・」


「だが、もう一人いる・・・さっさと片付けないとな」


「M・・・ですか」


「そうだ。ヤツは攻撃無効なだけだ。もっている武器さえ何とかなれば大丈夫だ」


「なるほど・・・確かに」


そうして、二人で更に奥の部屋へと向かった。

正直、既に満身創痍だが気持ちは能力者を何とかしようという気持ちで持っている。


さっきのSの能力者と言い、能力者で暴走している連中は危険だ。


そして、それを止められるのは自分しか居ないと思っている。

疲れと痛みに耐えながら前へ進んだ。

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