第32話 すっぴん

日曜日になった。


能力回収依頼の期限も今日までだったが、これって期限が切れたらどうなるんだろう?

今度、後藤さんにでも聞いてみるか。


それはさておき、今日は直接繁華街での現地集合だった。

時間は午前10時。


もう既に人は沢山居る。

繁華街にあるゲームセンターの前で集合との事だったので待っているのだが、中々後藤さん達は現れない。


たまにはゲーセンで遊んで待っていようかと思っていたところ。


「よういっちゃん!すまんすまん!遅れた。さやかが中々準備してくれなくてなぁ・・・」


「あー、そういえば今日はすっぴんのさやかちゃんが見れるんでしたよね。ははは。」


と笑いながら言う私。

あれ、でも肝心のさやかちゃんが居ない・・・。


「まあ、そう言ってやるな」


「あれ?でも、さやかちゃんは?」


「いや、いるけども」


周りを見るが居ない・・・。


「えっ?どこですか?」


「こ・・・ここだよ」


と後藤さんの後ろから声がした。


「何隠れてるんだ」


後藤さんが横に避ける。

すると・・・





超美少女がそこに居た。




「えっ・・・誰?」



「もうっ!!さやかだよ!!」


「何・・・このかわいい生き物は」


「ちょ・・・かわいいとか無いしぃ・・・」


そう、そこには身長が低めで、髪は綺麗な艶々な黒色。

髪はやや短めなボブカットで、前髪は眉を隠すように垂らしている。

目はギャルメイクの時のパッチリとは違い、一重だがそれが逆にクールなスッキリ目元で、これはこれでいい!


メイクも一切無いが、肌めっちゃ綺麗で白いじゃないか。


しかも、メガネは細めの黒縁で勉強が出来そうなイメージだ。


なんだろうJK1~2くらいに見える。

JCでも通用するかもしれない。


そして、地味な制服が急に価値観を高めている。


これは素晴らしい。

これだけで、ご飯を食べられるくらいに。


今回の能力者じゃないが普通に写真を撮りたくなる。

いや、抑えきれない。


「ごめん、スマホで写真撮っていい?」


「いやだーーー!!」


「こらこら、よういっちゃんいじめるな」


「いや、いじめてないですよ!凄く可愛いじゃないですか!」


「うん、そこは俺も同意だ。だが、さやかはこの姿が一番嫌いなんだそうだ・・・分らんもんだよなぁ・・・」


腕を組んで遠い目をする後藤さん。

確かに、それぞれの求める形とは違うかもしれないけども、これはもったいない改悪だ。


「もう、早くメガネフェチを捕まえようよぉーー」


「まあ、そうだな」


「ええ、もうちょっとイジりたかったですが・・・」


そして、当ても無くとりあえず、さやかちゃんを囮に使って能力者を捕まえに出ようとした時。


カシャっとシャッター音が鳴る。


「あっ!・・・あいつか!!」


まさかいきりなり釣れるとは!

清純はさやかちゃん(眼鏡バージョン)すげぇ。


そして、さやかちゃんのメガネが消えた瞬間、さやかちゃんが正面を見据えて手をかざす。


瞬間


バチッ!と音が鳴ると同時に


「うわっ!! 痛っ!!」


と正面の男がカメラから手を話す。


「兄貴!よういっちゃん!あいつ!!」


「OK!」


「了解!!」


二人で走り出して確保に向かう。


「おし!これまでだな」


ガチムチなおっさんにガッシリと捕まえられた能力者。

これは逃げるのは不可能だろう。

そして、私の出番はほぼ無し。。。


「くそっ! 俺じゃねぇぇ!!」


「いや、俺じゃねぇぇ!ってまだ何も聞いてないでしょ」


捕まえながらも笑いながらツッコミを入れる後藤さん。

カメラバックを落としていたので拾い上げる。

何かえらくガチャガチャ言うが・・・もしかして。


「すまないけど、見せてもらうよ」


「あっ、こら!やめろ!!」


中から大量のメガネが・・・。

こりゃ間違いないな。


「んー、これ見られちゃ何も否定できないよね。ちょっとあっちに行こうか」


流石に捕り物劇を周りから見られまくり。

周りがザワザワガヤガヤと騒がしくなる。

目立たないように場所を変える事にする。


「ちょっとー、兄貴―。見えにくいんだけど・・・私のメガネーーー」


とゆっくり歩いてくるさやかちゃん。

ああ、意外と目悪いんだ。


探してみると能力者のポケットからさやかちゃんのメガネが出てきたので返した。

さて、これからどうするか。



人気の少ない路地裏に連れ込んだ。


「くそっ、何だお前ら警察じゃないのか?」


「う~ん、どうしましょうね」


「メガネの返却とかどうするか・・・」


「無視すんじゃねぇぇぇぇ!!あとおい!おっさん重いんだよ!!」


能力者を無視して話を進めていた。

ガチムチ後藤さんに抑えられた能力者は結構重いらしい。

さやかちゃんは既に任務完了とばかりに地面に座ってケータイをいじっている。


「あー、よういっちゃん。とりあえず、知り合いに頼むわ」


「了解です。 じゃあ、私はこいつを見ていますね」


「おいお前。逃げられると思うよなよ」


凄む後藤さん。


「ひっ!」


と驚き萎縮する能力者。

とりあえずはこれで逃げないだろう。


そして、さやかちゃんはいるものの実質能力者と二人きり。

さて、どうしたものか。


「おい、お前ら俺をどうするんだ?」


「うん? う~ん・・・まあ、ストレートに言うと君はやりすぎたんだよ」


「はっ、折角貰った能力を使って何が悪い!!あの女だってそうなんだろう?俺を捕まえた時の変な攻撃といい。」


「いや最初に言われたでしょ?秩序に反する事をするなと」


「は? むしろ欲望を満たせと言われたぞ。そして、そのおかげで俺は素晴らしい物に出会えたんだ!!」


ん?欲望を満たせ??

どういう事だ?


「おい、欲望を満たせってどういう事だ?」


「どういう事も何も、メールで送って来ただろうが!あの目の前に現れた謎の能力で!!」


何か私の時と明らかに勝手が違うような・・・。

何これ?別口で能力付与とかあるの?


「あー、うん。何かあれだね。私らと違うみたいだね」


「私らって・・・お前ら全員何か持ってるのか!?」


「あー、余計な事だったね。忘れて」


「あ!? ふざけんな!!」


あー、余計にめんどくさくなったな。

余計な話しすぎたか。


「おー、よういっちゃん。またせたなってどうしたの?」


「いや、後藤さん実は・・・」


今の眼鏡フェチの能力者の言った事を後藤さんにも伝えた。

考え込む後藤さん。


「それは・・・確かに妙だな」


「これって私らの知らないところで能力者増えまくってるんじゃないですか?」


「う~ん、今の段階では何とも言えないが・・・ちょっと気をつけておいた方がいいかもな」


気をつけた方がいいか・・・。

非常に気になりつつも、今はまず目の前の問題を解決するしかない。


「あ、それで後藤さん。どうなったんですか?」


「ああ、知り合いが直ぐ近くに来ているそうだから直ぐに来るそうだ。まあ、よういっちゃんも名前は聞いたことあると思うけど、この前も世話になったミスターゴールドさんだ」


「えーっ、ゴールドさんくるの!?」


突然声を上げるさやかちゃん。

何だ?何かマズイのか?


「私あの人苦手―」

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