第54話 鑑定依頼


今日もいつものようにカタカタとキーボードを入力しつつ事務仕事を行っていた。

するとスマホから音が鳴る。

見てみるとメールだった。


相手はゴールドさん。


今日時間を取ってもらえないか?との事だった。

とりあえず、仕事終わってからなら良いですよと返事をしておいたけど・・・。


急に何だろうか?

また妙な依頼だろうかと思いながらも溜まっている仕事を坦々と処理していた。


そして、夕方。

業務も無事終わり、いつもの喫茶店へと向かう。


喫茶店の扉を開けて中に入ると既にゴールドさんは来ていた。

隣には女性が・・・ああ、あれは楓さんだな。


「すみません、待ちました?」


「ああ、大丈夫だよ」


「ええ、そんなに待ってませんよ」


二人とも相変わらずのダンディな感じと優しげで綺麗な女性で絵になる。

でも、アレな人達なのだが。


「来たばかりなのにごめんなさい。ちょっとトイレへ・・・」


いきなり席を立つ楓さん。

思わず。


「え?」


と言ってしまった。


「ふふふ、ちょっとコーヒーに利尿剤入れすぎちゃって・・・」


「え・・・」


「ははは、ちょっと入れすぎだったなぁー」


「もう、これじゃあ、我慢とか無理ですって、ふふふ」



そう言って、トイレに駆けて行った。

もう何か隠す気も無いらしい。


いきなり帰りたくなって来た。


「さてっ、それはそうと山本くんいきなりすまなかったな」


いや、何普通の会話に戻そうとしているんだ。

このスカトロおっさんは・・・。


「いえ、大丈夫ですよ。 いきなりどうしたんですか?」


「うん、実はね。山本くんの鑑定能力で見て欲しいものがあってね」


「見て欲しいものですか・・・という事は制服ですか?」


「ああ、まあ、制服と言って良い物か分らないんだが」


そう言って、机の上にケースを出して中を開けてみせる。

中に入っていたのは・・・


白と赤の服・・・これは



「巫女服ですか・・・。」


「ああ、これの能力を見てみて欲しい」


「そうですか、分りました」


巫女服か・・・これは何気に私はこういうのも大好きだったりする。

巫女服を見たいばかりに、正月は何社も神社を巡るほどだ。


しかし、正月は学生バイトの量産型巫女さんが増え、中には生地が安っぽい巫女服も多々見られる。

これは正直頂けないが、今回の巫女服は相当良い生地に見える。


一体何なのだろう・・・とりあえず手に取って、鑑定!


******


I大社 巫女装束(限定)


能力

筋力:+1000

体力:+2000

耐性:+9999

敏捷:+1000

魔力:+9999

魔耐:+9999

技能:光魔法(極)、浄化魔法(極)、回復魔法(大)、封印(限定)


******


なんか超凄いのキターー!!!??


うん、体力と筋力と敏捷が低いのは何となく理解出来るが、ほかが凄すぎる。

9999がカンストなのか?

始めて見る数値だ。


それよりも技能が凄い。

まあ、巫女さんってだけあって、それらしい能力だけども魔法の(極)ってのも初めて見る。

とりあえずはどうするか・・・。


「山本くん。どうだった?」


「いや・・・何ていうか凄まじいですねこれ。I大社ってあの有名な神社ですよね?」


「ふふふっ、流石の能力だな。その通りだ。

 あるツテで入手した。

 正直かなり苦労したよ・・・それで、その服の能力に『封印』はあるかい?」


えっ、確かにあるけども・・・どういう事だ?


「ええ、ありますけど・・・けど、限定って書いてありますよ」


「なっ!?限定?? ちょっと山本くん!!詳細を見れないかい?」


「ええ、大丈夫ですけど、その前に制服の名称の横にも限定ってあるんですよ・・・」


「はぁ!? ・・・失礼。 一体どういう事だ・・・」


「とりあえず、詳細の前に能力値を書き出しましょうか」


「ああ、それもそうだな」


いや、私が知りたいが・・・とりあえず先に能力値を書き出してみる。

そして、紙に書き出して見せてみた。


「ほぉ・・・これは確かに凄まじい能力の一言だな。」


「それにしても、ゴールドさん・・・封印を知っていたみたいですが何かあるんですか?」


「ん? ああ、ちょっと封印の能力が必要でね。だが、この限定ってのが気になるな・・・ちょっとそこを見てもらえないか?」


「おお、そうでしたね。ではっ」


鑑定の詳細を発動!

まずは、名前のところを・・・(限定)をジーッと見つめる。

詳細出ろでろでろ。


******


I大社 巫女装束(限定)について


・この制服は神職の資格のある方のみ着用可能です。

 それ以外の方では能力・技能が発動しません。


******


「・・・ええっ!? 」


「ど、どうしたんだ!? 山本くん」


「いや、私も初めて見たんですが・・・これ神職の資格無いと着れないってか能力発動しないそうです・・・」


「な・・・なんだって・・・」


まるでヘナヘナという効果音が出そうなくらいゴールドさんが椅子に深く座り込んでしまった。


「流石に・・・そんなツテは無いし・・・う~ん・・・」


うん、何かボソボソと言い出してしまった。

かなりショックだったらしい。


「えーっと、後は封印ですね」


封印の詳細!!


******


封印(限定)について


・処女もしくは童貞の方がこの制服を着用した場合のみ、この技能が発動します。


******


「あー、ゴールドさん? 封印の限定に関してですが・・・」


「あー、山本くん・・・言ってくれ」


「処女か童貞が着用しないと発動しないそうです・・・」


「そーかーー」


バタンと音が鳴り、前に倒れこみテーブルの机に頭をぶつけていた。

何なんだ今日のゴールドさんは・・・ダンディ感が全然無くなってしまった。


「あらあら、どうしたんですか?」


そこへトイレから戻ってきた楓さん。


「これはお前には着れなかったよ」


「あらそうでしたか・・・何か条件でも?」


「神職の資格と処女だそうだ」


「あ~、神職は無理して時間さえあれば取れるかもですが、処女は無理ですね。ふふふっ」


「困ったなー」


二人して困っている。

一体何があったんだろう?


「一体どうしたんですか?」


「ん? いや・・・まあ、山本くんは関係無くは無いけども・・・すまん、いずれ話す」


「はぁ?」


「だが・・・封印の能力がどうしても欲しい」


「封印ですか」


「ああ」


封印か・・・何を封印するんだろう?


「だから、また鑑定を頼むかもしれない・・・ちなみに何か山本くんで思い当たる物は無いか?」


「ええっ?封印・・・う~ん、巫女から出るならシスターとか?」


「おおっ!可能性あるな!今度取り寄せてみよう!」


でも、シスター服に興味は・・・そこまで無いと思うから能力値が低い気がする。

だって、地味だし華やかさが無いから。

いや、好きな人は好きみたいだけど私はちょっと違う感がある。


まあ、地元に教会があるせいかシスター=おばあちゃんのイメージが強いからかもしれない。

アニメやエロゲのように若い巨乳シスターなんて現実に居ないと思っているせいかもしれないが。


そんなわけで、突然のゴールドさんのお願いで鑑定をしたものの、また鑑定を頼まれるようだった。

でも、こういった珍しい制服を見れて触れて鑑定出来るは役得だったりして嬉しかったりした。


また次回が楽しみだなぁ~。

そう思いながら、喫茶店を後にした。



*********


「金子さん・・・残念でしたね」


「ああ、折角可能性が高い物を見つけたのに・・・ダメだったとは」


「いっそ、着れる人を探してみては?」


「いや・・・今回はばっかりは危険を伴うし・・・巻き込みたくない。もちろん山本くんもな」


「金子さん・・・」


「だが・・・あの能力は危険すぎる・・・何とか鑑定で封印で封じる方法を見つけたが・・・やはりレアスキルってやつだったか」


「そうみたいですね」


「だが何とかしないとヤバイ・・・あの『征服』の能力を封じない事には」

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